北野映画の中でも名作と呼び声が高い『キッズ・リターン』のその後を描いた今作のオファーは、率直にどう感じましたか?
三浦さん 「シンジとマサルという同じキャラクターの10年後を演じるのは難しいだろうな、というのが正直な気持ち。前作のファンの方がいるので、その方たちの期待に応えたいと思いましたし、ヤクザ役を演じることも初めてでしたから、不安ばかりですよね」
その不安をどう払拭したのですか?
三浦さん 「撮影に入る前にあきらめたんです(笑)。前作のことを気にしてもしょうがないし、気にしたところで急に芝居は上手にならない。他のことに気をとられていると、ますますうまくいかないから、できることだけをやる。これだけですね」
三浦さんというと好青年役のイメージが強いですが、今回、初めてのヤクザ役でしたね。
三浦さん 「いわゆる仁侠映画に出てくるようなヤクザ像のイメージは持たないようにしましたね。マサルという"ひとりの男"のキャラクターを演じたかったので、ヤクザであることはあえて意識しないようにしました」
親友のシンジに「いつか見返してやろうぜ」と言う印象的な台詞がありますが、いままで三浦さん自身がそう思ったことはありますか?
三浦さん 「う〜ん、ないですね。"見返してやる"ってネガティブな目線を向けられていることで生まれる気持ちですよね。まぁ、僕は両親のこともあって常にそんな目線は向けられていますけど、それに対して見返してやろうとは思わないですからね」
自分の性格はネガティブではないと。
三浦さん 「ネガティブですよ(笑)。でも、ネガティブであることも必要だと思うんです。デメリットや危険性もすぐに察知できるし、それに気が付いたらあとはひとつひとつ潰していけばいいわけですから」
映画のラストではシンジとマサル共に、デメリットやリスクを追ってでも人生の勝負に出ますよね。三浦さんがリスクを追ってでもやりたいことってありますか?
三浦さん 「役者になることはリスクだらけでしたよ。何を始めるにしろ、リスクは抱えるものかもしれませんが」
精神面でのリスクに怯えることはないですか? 傷つくことが怖いとか。
三浦さん 「他人からの評価で傷つくことは確かにありますけど、出来上がった作品を観られてから言われてもどうしようもないですし。監督からの言葉は傷つくのとは違いますね。自分の力量がないだけであって…それはいつでも感じますけど」
その力量のなさを補う方法は?
三浦さん 「芝居ってどうしたらうまくなるかわからないんですよ。映画を観たり、本を読んだりして知識を積んでも突然うまくはなりませんからね。ホント、何をすればいいかさっぱりわからない」
じゃあ、なぜ役者を続けているのでしょうか?
三浦さん 「わからないからですね。あまりゴールがはっきり見えているものは好きじゃないんですよ。わからないし、答えもない、ゴールがまったく見えないからこそ役者は面白いと思っています」
話を映画に戻しますが、シンジとマサルは10年間会っていなくても、固い絆で結ばれていますよね。男の友情って、そんなものなのでしょうか?
三浦さん 「今年の正月に小学校からの親友に2年ぶりに会ったんですよ。そいつ、いい意味ですごくばかで、まっすぐな性格なんです。周りの友達からも「ばかだなぁ」なんて言われるけど、他のヤツが彼をばかにしようが僕は一切なにも思わない。普通なら怒るだろうし、それでも友達か、なんて意見もあるかもしれないけど、僕が認めているから周りの評価はどうでもいいんです。何かあったときに"あいつがそう行動したなら、それなりの理由があるだろ"って思えるんですよね。それって理屈じゃなくて、お互いを認め合っているから。あんまりうまく言葉にできないですけど、男同士ってそういうところがあるんですよね」