今回演じた七緒はフラワーデザイナーを目指す30歳の女の子。まさに、麻生さんと同世代ですよね。
麻生さん「そうなんですよ。だから自分と重なる部分がわりと多くて。七緒は花屋でアルバイトをしながら、フラワーデザイナーになろうと資格を取ったり、留学しようと仕事で前向きに頑張っている女の子。私も10代から仕事を頑張ってきたので、悩む部分とかすごくわかりますね。20代ってけっこう、頑張るじゃないですか。ここで走らないと、いつ走るんだって感じで。でも、30歳を迎えて、ふと走ってきた速度をゆるめる瞬間があるんですよ。その瞬間が、この映画には描かれていると思いますね」
20代で走ってきて、つまずいたこともありますか?
麻生さん「えぇ、何度も(笑)。もう、自分の演技を見たくないって思う程、落ち込んだときもありました。それも誰かに怒られたとか、大きな失敗をしたとか、そんな決定的なきっかけがあってドーンと落ち込むんじゃなくて、じわりじわりと落ちていくんです。でも、それってすごくリアルな感情ですよね」
どうやって克服したんですか?
麻生さん「落ちている原因が仕事なので、結局、仕事に救われたんです。それ以外のことで解決なんてできないと思うし。仕事をしている自分が嫌で落ち込んでいたわけですから、仕事をしている自分を好きにならないと解決はできないんですよ。そこを無視したら、ずーっと落ちたままだから、なぜ今、仕事が嫌なのかを一回直視して乗り越えたほうがいいんですよね。ちなみに、私が克服したきっかけは、いい作品に出会えて、きちんと向きあえたこと。これで克服しました」
パンフレットの中で麻生さんが七緒の事を「恋愛に逃げ込まず夢に向かっている人」と言っていますが、恋愛を逃げと考えたことも?
麻生さん「あります。だって楽じゃないですか(笑)。仕事がうまくいかなかったときに、これで結婚して子どもができたら、仕事をやらなくたっていいんだ!なんて思ってしまったことがあって。辛い状況の中だと恋愛という選択肢を増やすことで、逃げ道を作ろうとしていたんだと思います。本当に恋愛の道1本で行くならいいんですけど、本心は仕事をしたいのに、辛い状況から逃れるために言い訳で恋愛を出すのは逃げだなって。でも、七緒みたいに夢のために恋愛は後回し、というのも、それはそれでもったいないなと。今の歳の今の自分は二度とやってこないじゃないですか。それなら、仕事も恋愛も、両方欲張って生きていくのがイイんじゃないかなって」
麻生さんも、七緒も好きな仕事を長く続けている女性ですが、見つけるコツって何でしょう?
麻生さん「見つけるコツは案外、思い込み? “これ向いているかも”って少しでも思ったら“絶対向いている”って自分に言い聞かせてみる(笑)。まぁ、私が思い込みが激しい性格というのもあるんですけど、それぐらい自分で自分を持っていく力や、勢いがあるほうがうまくいくんじゃないかと思います。なんて、今はこんなふうに前向きな考えができるんですけど、昔はネガティブですぐ後ろ向きな事を考えていました。でも、仕事をするうちに、多くの人と出会って徐々に考え方が変わりました。自分自身がオトナになってきたんだと思います」
この映画は「音」がテーマになっていますが、好きな音はありますか?
麻生さん「そうですね、家の中で誰かがいるってわかる音ですね。人がいる気配の音。例えば、本をめくる音だったり、扉が開く音だったり。安心感と幸せを運んでくれる音だと思いますね」