スペシャルインタビュー
俳優 浅野忠信さん
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あさのただのぶ1973年11月27日生まれ、神奈川県出身。2003年『地球で最後のふたり』でベネチア国際映画祭コントロ・コレンテ部門主演男優賞を受賞。2010年には『劔岳 点の記』と共に『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』にて第33回日本アカデミー賞優秀主演男優賞をダブル受賞。海外からのオファーも多く、近年では『マイティ・ソー』『47RONIN』などハリウッド進出も目覚ましい。
『バトルシップ』
4月13日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国公開
『バトルシップ』photo
太平洋上に突如出現したエイリアンの侵略部隊と世界連合艦隊の戦いを迫力の映像で描く。新人将校アレックス(テイラー・キッチュ)と自衛艦の指揮官ナガタ(浅野忠信)とのライバル交戦など人間模様にも注目。映画史に残るヒット作を送り出してきたユニバーサル映画100周年を記念したアニバーサリー大作。
多くの日本人俳優がハリウッド進出を果たす中『バトルシップ』で準主役という大きな役柄に抜擢された浅野忠信さん。しかし、ここまでの道のりには「バーゲンセール」の10年間があったからと言う。さて、その真意とは…。

今回、『バトルシップ』ではナガタという自衛艦の指揮官を演じられましたが、ハリウッド映画で"日本人"を演じることに思い入れはありましたか?

浅野さん 「こんな大きな映画で日本人がフィーチャーされ、きちんとした役を与えてもらったことは貴重なことだと思いますね。これは、今までの役者人生においてとても意味のあることですし、これからの自分にとっても重要な作品になることは間違いないです」

全編英語ですが、日本語での台詞もありますね。

浅野さん 「あれは監督のアイデアで。ナガタの考えた戦略でエイリアンを打ち倒す、というシーンなのですが、その喜びを表現するときに監督から"日本語でなんか言ってみろ"と言われまして。すごく勢いのある監督でしたから、いろいろなことに役者を挑戦させようとするんですよ。役者にとってはホント、ありがたいですよね」

ナガタの役柄もそうですが、アメリカ圏で仕事をするということは、ある意味アウェイだと思いますが、そういう環境に対して不安を感じたりはしませんでしたか?

浅野さん 「僕の場合、アウェイのところへ行くことが仕事ですから、それは慣れているんですよね。特に映画の撮影は1カ月や2カ月、役者やスタッフが毎日顔を合わせるので自然と溶け込んでいくのがわかっているし」

それはご自身の性格も大きかったり…。

浅野さん 「そうですね。昔からその日に会っサブカットたばっかりの人でも、すぐ仲良くなって家に泊まったりするようなタイプだったんで(笑)。だから、新しい環境でも期待も不安もなく、けっこうフラットな状態で飛び込んでいきますね。不安って自分が招いている感情だから、たとえ心配なことがあったとしても"いやいや、大丈夫"とあえて感情を不安に持っていかないようにしている、というのはあります」

90年代の浅野さんは、いわゆるマニアックな映画の中で驚くほど自然な演技をする俳優、というイメージがありましたが、ここ数年、そのイメージを覆す作品選びをしているような気がするのですが。

浅野さん 「役者をはじめたころ、自分のやり方だけを信じてやっていて、それが先程おっしゃった"自然な演技"を貫くことです。でも、このままじゃ10年後、自分はどうなるんだろうと疑問に思い始めたんですよ。『あのやり方は自分に向いていない』と言いながら10年過ぎていくより『あれは散々やってみたけどダメだった』と言えたほうが自分の力になるんじゃないかと。自分が今まで信じられないことをやったときにどんなことが起きるんだろうか、真逆のことにチャレンジしてみようと心を開いていきました」

真逆のこととは?

浅野さん 「いわゆる、芝居らしい芝居をするようにしたんです。僕が"わざとらしい"とか"おおげさな"と思っていた演技。極端に言えば、お酒を飲むシーンで今までは黙って飲んでいたものを『ウィ〜ッ』と言いながら飲んだり(笑)。そうすると、そのおおげさな演技がハマることもあれば、ハマらないこともある。それと同様に全部がリアルで自然な演技でも映画にとってプラスにならないこともあるんだなと。そこで初めて、作品というものは一本一本違うしサブカット、作品によって演技も変わってくるんだと理解できたんです。それに気が付くまでの10年は本当に何でもやりました。聞こえは悪いかもしれないですが、僕にとってはバーゲンセールをしたつもりです。だから、もうバーゲンセールは終わり。これからはワガママを言わせてもらいます(笑)」

浅野さんにとって演じることは仕事だと思っていますか?

浅野さん 「仕事ではありますが、与えられた何かだと思っていますね。僕は父親にチャンスをもらって役者を始めましたけど、本当はバンドマンでいたかった。でも、周りは『お前は役者が合う』と言う。僕は赤い服が着たいけど、周りがみんな青い服が似合うと言うならば青を着るべきなんです。赤い服は部屋で着ておけばよくて。確かに、最初はその周りの声にジレンマはありましたが、それを受け入れたときすごく楽になったし、自分を客観的に見られるようになった。僕は役者であるべきなんだなと。でも、それは今となってはありがたいことだと思っています」

最後に『バトルシップ』の話に戻りますが、この作品のようにエイリアンが攻めてきて、明日地球が終わる!となったら、最後の日は何をしますか?

浅野さん 「そりゃ、大切な人といますよ。それ以外、何もないですよ(笑)」

インタビュー・文/中屋麻依子、撮影/八木虎造

【スペシャルインタビュー】浅野忠信さん

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