スペシャルインタビュー
俳優 松山ケンイチさん
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profile
まつやまけんいち1985年3月5日生まれ、青森県出身。2002年ドラマ「ごくせん」で俳優デビュー。2003年「アカルイミライ」で映画初出演。その後「デスノート」「デトロイト・メタル・シティ」「ノルウェイの森」など枠にとらわれず様々な役を演じている。2012年NHK大河ドラマ「平清盛」の主演が決定している。
『うさぎドロップ』
8月20日から全国公開
うさぎドロップ
©うさぎドロップ製作委員会
あらすじ
独身のサラリーマン、ダイキチ(松山ケンイチ)は祖父の葬式で隠し子である6歳の少女、りん(芦田愛菜)に出会う。子育て経験が一切ないダイキチがりんを引き取り、慣れないイクメン生活がスタートするが…。SABU監督による初のほのぼのハートウォーミングストーリーに注目。
【公式サイト】http://www.usagi-drop.com/
純朴な青年からエキセントリックな役まで、幅の広さに驚かされる役者、松山ケンイチさん。この夏、公開される「うさぎドロップ」では子育てに奮闘するサラリーマンを演じています。その、さまざまな役の下に隠れている素顔を少し覗かせてもらいました。

今まで多くの役を演じてきている松山さんですが、今回演じたダイキチは、独身、27歳、サラリーマンという、いわゆる普通の男性。だからこその難しさはありましたか?

松山さん 「ダイキチが勤めている会社の専門用語を覚えるのは難しかったですけど、小さい子供と生活をしたことがない、というところに関しては僕自身も同じなので、役を作りこむこともなく新鮮な気持ちでできましたね」

役作りをしなかった、ということですか?

松山さん 「今回、監督が共演した芦田愛菜ちゃんに“自然な演技をしてほしい”と、あえて台本を渡していなかったんですよ。その時点で、この映画ではフレッシュな芝居ができるなと思っていました。だから、僕が芝居を作りこんでしまうと、そこに差が出てしまって、うまくいかないなと考えたんです。自分も愛菜ちゃんのようにフレッシュに演じたい、今回はそれを強く意識しました」

子役の芦田さんと共演して、印象的だった事はありましたか?

松山さん 「子役って感じではなく、やっぱり女優さんだと思いましたね。監督が何を求めているかを1回説明しただけでちゃんと表現できるし。役者に年齢は関係ないなと」

逆に芦田さんから、言われて印象的だったことは?

松山さん 「言われてというか、やたら僕のヒゲのことを気にするんですよね。ヒゲをそると、すぐに“あ!ヒゲが薄くなった” とか言いますし。一緒にインタビューを受けているときも、横から僕のひげばっかり見ている。“なんで見てるの?”って聞いても、教えてくれない(笑)」

ダイキチはりん(芦田さん)を引き取ったことで仕事環境も生活も一変しますよね。松山さんは、環境の変化で仕事観が変わられたことなどありましたか?

松山さん 「ダイキチと同じように誰かと生活をすることサブカットで、自分のことだけ考えていればいい、という生活からまったく変わりました。仕事だけが人生じゃないってこともわかりましたし。プライベートで得られることって、実は仕事よりも、もっともっと大事だったりするんですよね。でも、それが仕事にもいい影響を与えてくれることも知った」

具体的に仕事にどう影響したのでしょう。

松山さん 「今まで、ひとりの時は役のことばっかり考えて毎日過ごしていましたけど、役者って自分で自分のことを考えて休みや気持ちを静める時間をとらないと、ルーティンワーク化しちゃうんですよ。だけど、ひとりではなくなってからは次の役が決まったら、それに向けて準備期間を作るようにしたり、自分の時間をとれるようスケジュールを管理するようになりましたね」

改めて伺いますが、松山さんにとって役者とは仕事ですか?

松山さん 「もちろん仕事です。楽しいという気持ちはありますが、仕事でなければ勉強しないし、興味もない、なんてこともたくさんありますし。その分、仕事だからこそ、できることもたくさんありましたけどね」

とらばーゆ読者が転職をする際、面接や初出社など気合いをいれなければいけない日があります。松山さんにも、大事なシーンの撮影など、気合いをいれる日があると思いますが、そんな時はどんな心構えで向かうのか教えてください。

松山さん 「大事なシーンのときは、もちろん緊張するし、気合いを入れて臨んでも自分が思っているものができなかったり、なんてこともたくさんあります。僕の場合、役をとりにいくときは芝居がどうのこうのじゃなくて、この人が役に合うかどうかを見られているわけですから、結局は人間性なんですよね。そこで役をとれなくて、口先や表面的に改善したとしても中身が伴っていないと、きっと次回もダメだと思う。だから、採用されたり必要とされるには、ちゃんと理由を持ってやりたいことに向かって進んでサブカットいることじゃないですかね。エネルギーの向け方を定めるというか。やりたいことが分からないで向かうより、分かって向かっている人のほうが魅力的だし必要とされる。だからこそ、自分が何が好きで、何にならエネルギーを向けられるかを知るために、いろいろ試してみて経験を重ねることが大事だと思いますね」

インタビュー・文/中屋麻依子、撮影/八木虎造