主人公のサヨコはマイペースに自分の好きな仕事だけをしている女性ですよね。市川さん自身もそんなタイプに見えるのですが…。
市川さん 「自分から"これがやりたい!"と思って飛び込むことはないんですよ。とても慎重派で石橋を割れるぐらい叩くタイプなんです。でも、一旦、飛び込んでしまえば一生懸命やるしかない、という感じですね。ただ、そこにいくまでは本当に怖い」
女優という仕事を10年以上も続けているのに、いまだに新しい仕事は怖いですか?
市川さん 「怖いです。でも、怖いで逃げていたら続いていませんから、立ち向かいはしますけど。逃げたいけど逃げずに向かうと、いつも何か発見や知ることがあるし、出会いも、喜びも見つかる。いつも怖くて、緊張して、でも何かを知って続けていく…そんな繰り返しです」
10年間ずっと?
市川さん 「でも、ここ数年で考え方は変わってきたかな。自分の物差しみたいなものができてきたというか。20代のころは周りの人に何か言われて、わからなかったり、おぼろげに違うと思っても"あぁ、わからないや"で終わっていたけれど、今は自分の思いを前よりも伝えられるようになった。わからなければ質問するし、やりたいことを伝えます。もちろん、私が思っていることが毎回正解ではないですけど、昔はおぼろげだった"こうしたい"という思いが、自分の中でだんだんはっきりしてきた。そうすると相手からも"どうしますか?"って聞かれるんですよね。その度に"私が意見を言っていいのかしら?"なんて思いますけど(笑)」
市川さんの仕事選びの基準って何でしょうか?
市川さん 「勘(即答)。やっぱり勘って働きます(笑)。例えば2人の人が、同じような仕事をやりませんか?と言ってきたとしても、直感的に、この人と仕事をしたほうがいいんじゃないかと思う時があるんですよ。事務所の人に「○○さんから仕事のお話がきたよ」と言われて、○○さんのことをよく知らないのに、ピンときて"これはやったほうが良さそうだ"なんて思うこともありますね。もう、理屈じゃないんです。ただ、事務所の人に相談もしますよ。自分で自分のすべてを客観視することはできないですから、周りの声を聞くことも大切だと思っています。それに、幸いにも同業の姉もいるので話したり。お互い、今、何の仕事をしているかは知らないんですけど、ちょっと困ったときや考えたいときに自分の気持ちを言える人がいるのはありがたいですね」
「レンタネコ」では心に寂しい穴ぼこが空いた人に、ネコを通してその穴を埋めてあげますよね。市川さんが心に穴ぼこが空いたときは、どうやって埋めますか?
市川さん 「空いたままだと思います。20代は埋めるために何かしたこともありましたけど、今は空いたままでいいんじゃないかなって。穴が埋まっている日もあれば、空いてしまうこともある。人ってそういうものなんじゃないかと思うんですよ。それに、空いている人のほうが私は惹かれますね」
サヨコが男選びの格言で「焦りは禁物、顔で選ぶな」と言っていましたが、市川さんは何で選ぶか教えてください!
市川さん 「その人が発しているものかなぁ。それは男性だけでなく、女性も動物も物もなんですけど、パッと見て惹かれるものを備えていること。男性だったら、そこにかわいらしさと誠実さがあれば無敵ですね(笑)」