20代からのコツコツ貯金が老後を救う! 今から始めれば楽々貯まる、その額とは?

2017年04月14日

老後への「なんとなく不安」を、早めの貯金スタートで解消!

結婚や出産を経験しても仕事を続けたり、結婚せずに自立した生活を送ったりと、女性が長く働き続けることが珍しくなくなった今。では、働きながらいくら貯金すれば65歳になって定年した後も安心して暮らせるのか、考えたことはありますか? 漠然とした不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、現行の制度で年金受給のはじまる65歳をゴールに設定し、目標にしたい貯金額について、ファイナンシャル・プランナーの横川由理さんにうかがいました。

ちょっと先のことですが、20代の今から意識しておくと、月々の負担が少なく着実に準備ができますよ!

 

65歳以上が1か月の生活に必要な金額は「約16万円」

現在、定年の年齢を60歳から65歳に引き上げる企業が増えてきています。65歳から年金が支給されるのだから、特に貯金がなくてもなんとか生活できるのでは、と考える方もいらっしゃるかもしれません。でも、現実的には年金だけで生活することが難しく、ほとんどの高齢者たちは、定年までに貯めたお金を切り崩しながら暮らしています。

実際に、現在の高齢者の家計を見てみましょう。
2016年の統計によれば、一人暮らしの65歳以上の世帯において、1か月あたりの社会保険給付、つまり年金の支給額の平均が11万1375円、株や不動産などその他の収入と合わせた1か月の平均収入は12万93円です。そして、1か月の平均支出は15万6404円。

つまり、毎月3万6311円不足していることになります。この不足分を、働いている間に貯めたお金で補っているわけです。

単身世帯グラフ

仮に、90歳まで生きるとして、貯金がいくらあれば足りるかというと、

65歳で定年退職し、90歳までの25年間の不足分
3万6311円 × 12か月 × 25年 = 1089万3300円

約1100万円の貯金がないと、90歳になる前に底をついてしまうということです。

 

夫婦2人暮らしの世帯のケースも見てみましょう。

夫婦世帯グラフ

1か月の平均収入が21万2835円、支出が26万7546円で、不足額は5万4711円です。

90歳までの不足分の総額は
5万4711円 × 12か月 × 25年 = 1641万3300円

2人合わせて約1700万円の貯金が必要です。

上記は、あくまでも現在の統計。
U29女子のみなさんが65歳になる頃には、物価が上がるなど多少の金額の変化はあるでしょうが、まずはこの金額を意識して貯金を考えましょう。
また、一人暮らしのための金額を備えておけば、結婚して夫婦で老後を過ごすとしても余裕ができるので、一人暮らしで不足する1100万円を目指すとよいでしょう。

 

20代から貯金するなら月3万円が目安

では、具体的には、「いつから」「どうやって」貯金を始めたらよいでしょうか。その答えは、「できるだけ早い時期から」「毎月決まった額を自動積立で」貯金する、です。

目標とする金額と必要な時期が決まっているので、貯金を始める時期が早ければ早いほど、月々の貯金額は少なくなります。

また、貯金の方法は、銀行の自動積立や会社の財形貯蓄など、毎月一定額を自動的に貯められるシステムを利用するのがおすすめ。もし毎月自分で別の口座にお金を移すなどの手続きをしなければならないとすると、「面倒だな」「今月は買い物したいから貯金はお休み」と貯金が続かなくなる可能性があるからです。積立や財形は、普通預金と違って「引き出しにくい」ことも、貯めやすいポイントですね。

では、具体的な金額を考えていきましょう。
一人暮らしの金額を基準に考えると、目標額は1100万円。
 

例)29歳 手取り約22万円、年収約280万円のA子の場合
  1か月あたりの貯金額は、

  1100万円 ÷(65歳-29歳)÷ 12か月 ≒ 2万5462円

毎月3万円を貯蓄し続ければ、60歳の頃には目標額の1100万円を達成することができるのです。

 

もし、今の手取りの月給で3万円を貯蓄に回すことが難しいなら、最初は2万円から始めて、収入が増えたら増額するという方法もよいでしょう。
 

例)29歳 手取り約18万円、年収約210万円のB子の場合
  5年後の33歳までは2万円、以降は3万円を貯金してみると…

 2万円 × 12か月 × 5年 = 120万円
 3万円 × 12か月 × (65歳-33歳) = 1152万円
 120万円 + 1152万円 = 1272万円

65歳を前に軽く1100万円の貯金が可能です。

 

結婚、子育て、家…老後資金以外の費用は?

U29世代が65歳を迎えるまでの間、結婚、出産、子育てと人生の大きなイベントを経験したり、家の購入など大きな買い物を検討したりすることもあるでしょう。
そんなときの出費に向けて、毎月の貯蓄はどうしたらよいのでしょうか?

結婚
それまで毎月3万円ずつ貯蓄した分を活用してもいいでしょう。結婚することで、将来必要な金額を夫と分担できるからです。

最初にお伝えした通り、2人世帯で用意しておきたい老後資金は1700万円。夫婦で折半するとして850万円が目標金額です。1100万円との差額は250万円あるので、結婚の際にその分使ったとしても、結婚後も働いて貯蓄を続ければ安心です。

子育て
子どもが生まれる場合、出産により産休や育児休暇で、収入が一時的に減ることも考えられます。とはいっても、1年間は雇用保険から育児休業給付金が支払われるので、そんな点を見越して月々の貯金額を増額する、ボーナスを貯金に回すなど、余裕があるとき貯金を増やしておきたいですね。

そして子育てに月々かかる費用には、食費などの生活費や学費があります。これらは毎月決まって必要なお金として、そのときの月々の家計の中でやりくりするようにしましょう。

大きな金額がかかるのは、進学のとき。特に大学進学時は、予備校や受験費用、そして入学金など、実際に入学する前からお金がかかります。目安としては、子どもが高校3年生になるまでに600万円程度を準備しておくといいでしょう。これは、老後への資金とは分けて、子どもの教育費として貯蓄することをお勧めします。

子どもが生まれたときから17歳までに600万円貯める場合、月々の貯金額の目安は3万円です。もちろん夫と折半と考えてもOKです。

 600万円 ÷ 17年 ÷ 12か月 = 2万9411円

⇒ここまでをまとめると……

現在29歳、32歳で子どもが生まれるC子の場合

出産まで(29歳~32歳)/1か月3万円   
 4年 × 12か月 × 3万円 = 144万円

子どもが17歳になるまで(32歳~49歳)/1か月6万円(老後用に3万円+教育費に3万円)   
 18年 × 12か月 × 6万円 = 1296万円

子どもが成長した後(49歳~65歳)/1か月3万円   
 17年 × 12か月 × 3万円 = 612万円  

食費や住居費などなど、毎日、毎月の出費は除き、
計 2052万円 をコツコツ貯金していけば、
結婚、出産を経た場合でも、老後の心配は少ないでしょう。

住宅
さらに、大きな支出として考えられるのが住宅です。一戸建て、マンション、どちらにしても、家を買うとなると生涯で一番大きな買い物になるでしょう。

「家を買って一人前」と考えられていた時代もありますが、今は価値観もそれぞれ。購入した場合、固定資産税やマンションの管理費などがかかりますし、また、古くなってくるとリフォームだけで数百万円かかることもあります。

一方、賃貸の場合は、月々の家賃などに加え、数年に一度の更新料や引っ越し費用もかかりますね。ただし人口が減っていることから、賃貸の価格は今後下がる可能性があります。

「結婚したら家は買うもの」「購入したほうがお得」といったイメージにとらわれずに、具体的な数字を算出して、自分のライフスタイルに合うかどうか、しっかり比較して検討をするのが賢い方法です。

 

長く働くことで収入を増やす手も

ここまで、65歳までに貯蓄するプランを考えてきましたが、65歳以降の収入を増やすというのも、老後の生活を安定させる一つの手です。会社員としては65歳で定年退職したとしても、その後も月に数万円の収入があれば、不足分が減ったり、逆に貯金を増やしたりすることもできます。

例えば、独立できる仕事や長く働けるような仕事へのキャリアアップ。興味がある仕事があれば、勉強したり資格を取得したりしておくと、将来役に立つ場合も。結婚して子どもが生まれると時間もお金も制限されるので、始めるなら、今がチャンス!かもしれません。

 

将来のお金のことは、必要以上に不安を感じたり神経質になったりする必要はありません。

ですが、ただ「大丈夫かな?」と漠然と考えていても、何も変わりません。具体的な数字を算出することが、安心に繋がります。今のうちから貯金をしておくことで結婚の際など役に立つことも。

定期的な貯金はしていないという方、少ない額からでもいいので、この機会に始めてみませんか。


記事監修:横川由理(よこかわ・ゆり)
FPエージェンシー代表。ファイナンシャル・プランナー。大手旅行会社、生命保険会社に勤務したのち、ファイナンシャル・プランナーに。マネーセミナーやFP資格試験対策の講師、保険やライフプランのカウンセリングなどを行っている。著書に『老後にいくら必要か?』『よい保険・悪い保険 徹底見直し編』(いずれも宝島社)、『保険 こう選ぶのが正解!』(実務教育出版)など多数。