震災を機に、夢だった洋裁サロンをオープン/ミシンカフェ&ラウンジnico 中嶌有希さん
震災を機に、定年退職した母と夢だった洋裁サロンをオープン/ミシンカフェ&ラウンジnico 中嶌有希さん【私の仕事Lifeの転機】
洋服を手作りする楽しさと温かみを多くの人に伝えたい
小さい頃から洋裁アドバイザーの母親が洋服を作ってくれていたという中嶌さん。「妹とお揃いのかわいいワンピースなど、母が作ってくれるオリジナルの洋服は自慢でした。そんな環境で育ったので、私も洋服やモノ作りが大好きになり、ファッションの仕事につきましたが、相変わらず母に好みの洋服を作ってもらっていました。けれど、家で洋服を作るといつも布や道具で部屋がいっぱいになり、足の踏み場もないほどに。だから自宅以外の場所で“母と一緒に心置きなく洋裁ができるサロンを作りたい”というのが夢でした。そして手作りの楽しさと温かみを多くの人に伝えたいと思いながらも、開業する資金も勇気もなく、10年ほど思いを温めている状態でした」
そんな中嶌さんを後押ししたのが、東日本大震災だった。
「被害はありませんでしたが、『人生はいつ何が起こるかわからない』と実感し、やりたいことは早く実現しなくてはという気持ちが大きくなりました。ちょうどその頃、カフェでバイトをしていたこともあり、“ミシンが使えるカフェ”を思いついたんです母が定年退職したので、技術を持つ母にサポートしてもらいながら一緒にお店をオープンすることを決意しました」
資金がなくてもお店がやりたい!家族と友人のサポートでオープン
とはいえ中嶌さんには開業資金がなく、経営計画もノープランだった。
「やりたいという思いだけしかない私に最初は母もあきれていましたが、“1年間やってみて、うまくいかなかったらやめよう”ということで同意してくれました。家賃が安い物件が見つかりましたが、お金はかけられないので内装はほとんど手作り。照明周りは電気工事士の父に頼み、母が壁を塗って、床は知人が開店祝いに格安でやってくれました。ミシンは母のコレクションを持ってきて、椅子や照明は中古品、ソファは私物……といった状態です。料理のレシピはシェフの友人が提供してくれ、周囲の人たちに応援してもらって、なんとか私の夢を実現させることができました」
「ミシンカフェ」を思いついてから3カ月でオープンしたが、最初は集客に苦労したという。
「1週間、お客様が来ないというときがあって、さすがにこれはまずいと思いました。待っているだけじゃダメだと、半年後に教室を立ち上げたところ、お客様が増え始め、なんとか続けていける目処が立ちました。大きな利益を挙げることはできませんが、好きなことをしながら食べていける幸せを感じています」
手作りのものには物語が生まれる。そのお手伝いができるのが何よりも楽しい
仕事中は母親に対してスタッフとして接するよう気を付けている。
「慣れ合いな感じだと不快に思うお客様もいると思うので、仕事中は母ということを忘れるようにしています。でも仕事が終わってからは、一緒にお酒を飲みながら反省したり、今後の展望を話したりして、仲のいい母娘です」
お店に来るお客様からは感謝されることも多いという。
「たとえば、子どもが学校に持っていくグッズを手作りしなくてはいけない、ミシン初心者のママ。最初は不安そうでしたが、完成すると、『できた!』ととてもうれしそうな笑顔を見せてくださって、こちらも感動しました。祖母にもらった反物をリメイクしたいという男性は、ご自身のハーフパンツを製作。思い出の品を活かされました。このように手作りのものにはそれぞれ物語が生まれます。そのお手伝いができるのが楽しいですね。お客様が『いいものが作れました。ありがとう』と言ってくださると、お店をオープンして本当に良かったという気持ちになります。最近は安くてかわいいファストファッションの洋服もありますが、自分の体形に合わせて作る、自分だけのデザインの洋服の心地よさ、洋裁の楽しさを多く人に知っていただければと思います」
ミシンカフェ&ラウンジ nico
東京都世田谷区上祖師谷7-19-16 荒井第一マンション103
http://nico2525.exblog.jp/
TEL:03-6279-6987
定休日:月曜日
営業時間:10:00~18:00(木曜日は20:00まで、日・祝は17:00まで)
※教室やワークショップのスケジュールはHPをご確認ください
※ タウンワークマガジンより