お客さまがあなたから買いたくなる、販売スキル3つの法則

2018年07月06日

販売員をしていてぶつかる壁があるとしたら「売り上げが伸びない」「顧客が増えない」という問題でしょう。一生懸命接客をしているのに、お客さまに煙たがられる、嫌な顔をされる、など悩んでいる人は多いかもしれません。実は、お客さまが「あなたから買いたくなる」上手な接客には、販売員ならぜひ知っておきたいコツがあったのです。そこで今回は『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣』の著者である内藤加奈子さんに、「売れる販売員」になるための秘訣をうかがいました。

<第1のコツ> お客さまを観察する!

最初の取り組みとして考えるべきは、お客さまを「どう観察しているか?」ということです。商品を売るお店であれば、自分のお店に入ってくる前、道路や通路を歩いているところから、お客さまを観察してみましょう。

(1)入店前のお客さまの動きをチェック
たとえば、路面店であれば、外を歩いているお客さまが、どんなショーウィンドウで足を止めているか、ショッピングモールや商業ビル内のお店であれば、向かい側の店舗では何を見て、何を手にとって、どんな商品について接客を受けていたかなど。まだ自分のお店に入ってくる前から、お客さまが何に興味をもっているのかを観察します。

(2)入店時や入店後の動きもチェック
お客さまが自分のお店に入ってくるときに、何をきっかけにして入店したか、店内ではどのような商品に目を留めたか、手にとったかなど、さらに観察しましょう。どんなものを勧めたらより興味をもってもらえるか?を予測します。お客さまが身につけているものから好みを探ることもできます。

(3)観察データをしっかり分析する
そして、これまで観察してきたお客さまのデータを分析し、接客時に生かすことが最大のポイントです。

「ダメな販売員」は、お客さまを一切観察せず、とりあえずお客さまが手にしている商品の説明をいきなりはじめてしまいます。お客さまからすると、さほど興味のないものの説明を延々とされる、不要な接客になってしまう確率が高いのです。

「売れる販売員」は、あらかじめお客さまを観察して得た「データ」をもって接客に入るので、お客さまからすると「わかってくれているな、この人」という信頼感につながります。

<第2のコツ> 絶妙な距離感

(1)「売り込まれる恐怖」を与えない
「ダメな販売員」は、「接客=商品説明」であると捉えているため、お客さまとのトークが商品のことのみに偏りがちです。これではお客さまに「売り込まれる恐怖」を感じさせるばかりで、お客さまとの距離は一向に縮まりません。「売り込まれる恐怖」とは、いわゆる“圧迫接客”のように商品を次々と紹介し、どれかに決めるまで離れない、というような接客による恐怖です。欲しくもないものを買わされそうになるなんて、何かの詐欺に遭ったような恐ろしさがありませんか?

(2)「無視される恐怖」を与えない
お店の中には「売り込まれる恐怖」のほかにもうひとつ、「無視される恐怖」があります。自分が入店したのに誰も気がつかず、挨拶もされないままお店を後にするなど、まるでそこに居なかったように扱われること=「無視される恐怖」につながってしまいます。自分が居るのに居ないかのように扱われたら、誰でも悲しいはずです。

(3)お客さまにとっての快適な空間をつくる
「売れる販売員」は、天気の話や「最近、お買い物されましたか?」「もう夏物は何か買われましたか?」など、世間話のような声かけから入るので、お客さまからすると「売り込まれる恐怖」が薄らぎます。さらに、このような「世間話」をした後で「ではどうぞごゆっくりご覧ください(必要なときには参ります)」というニュアンスで離れていくため、お客さまは自分のペースでゆっくりと商品を見ることができます。聞きたいことが出たときには、さっきの人に聞けばいい、という安心感も添えることができます。

このように「絶妙な距離感」をとっていくことで、お客さまにとっての快適な空間をつくることができるのです。そして、お客さまの滞在時間が伸びれば「人が人を呼ぶ」効果が期待でき、さらに別のお客さまも入店しやすくなる、という効果も生まれます。

<第3のコツ> 売り込まないトーク!これこそが売り上げを伸ばす

(1)ゴリ押しは失敗の元!
「ダメな販売員」は、ショッピングの中盤でお客さまが悩んだとき、ひたすら買うことを決断するように促す接客をしがちです。するとお客さまは、無理やり買わされるような気持ちになり、「悩んでたけどやっぱりやめよう」と、逆効果になってしまいます。まるで食べたくもないものを無理やり口に入れられるようで、そんなことは誰だって嫌なはずです。口を頑なに閉じてしまうでしょう。美味しそうだな、食べてみたいな、という気持ちになってから、自分の手でそれを口に運んでゆっくりと味わうから、美味しく感じるのと同じです。

「売れる販売員」は「悩んだら、ちょっとお茶でもして、ほかのお店も見て、ゆっくり考えてみてください」「一晩寝てから、それでも欲しかったら買い、ではないですか?」などと「買わない選択」も肯定します。ゴリ押しトークは失敗の元と心得ましょう。

(2)人として信頼される販売員であれ
あえて、お客さまではなく、友人や家族が買い物で迷ったときにするアドバイスと同じように対応してみましょう。そうすることで「この人は、無理やり売ろうとしていない。よい買い物をさせようとしてくれている」と信頼され、結果、購入する確率も上がるのです。

「売り込まないことで売れる」ようになる。目先の売り上げよりも、長い目で見たお客さまとの関係、その関係がもたらしてくれるこれからの売り上げにフォーカスした方が、長期的なビジネスの安定につながるのです。

(3)「買ってよかった」と思えるようなコメントを添える
お買い上げの後のコメントは重要な接客ポイントです。「ダメな販売員」は「ありがとうございました」と、ありきたりなお礼をして頭を下げて終わりになりますが、「売れる販売員」は、「よいお買い物だと思います」と、一緒に選び抜いたものを自信をもってお持ち帰りいただく、そんな気持ちを込めたコメントを添えます。また「こんなふうにも使えますよ。楽しんでたくさんお使いくださいませ」などと、その商品を最大限に楽しむアイデアを伝えるのも忘れないようにしましょう。

まとめ

今回は観察力、距離感、トークを引き合いに出し、「ダメ販売員」と「売れる販売員」の違いを解説しました。売れない場合には必ずその理由と原因があるのです。一番大切なことは、お客さまをしっかり観察すること。次にお客さまと絶妙な距離感をとって、快適な空間をつくることです。

そして、目先の売り上げにこだわるよりも、長い目で見たお客さまとの関係を大切にした方がその後の売り上げアップに貢献することになります。ぜひ、参考にしてみてください。

記事監修:内藤加奈子(ないとうかなこ)
1975年東京生まれ。43歳。28歳で独立し16年で全国約3000店舗の現場で売上改善を実施。ファッションだけでなく食品、スポーツ用品、化粧品、車、生活雑貨など、商店街の個人店舗からグローバルブランドまで幅広いクライアントをもつ。8冊の本を出版。店舗コンサルタントとして売り上げアップを担わせたら右に出るものはいないと定評。1児の母でシングルマザーでもある。