未経験から転職! 結婚式場の聖歌隊から学童保育のスタッフへ
子どもが「主役」の放課後の居場所。私も一緒に学び、成長しています
株式会社ラボアンドタウン Labo&Townまちなか学童
小峰佳菜さん(25歳)
|生活の中で子どもに寄り添って成長を支えたい
中学時代の将来の夢は、ミュージカルやオペラの歌手になること。英会話クラブ(ESS)でミュージカルを経験して歌う楽しさを知り、音楽大学の声楽科に進みました。卒業後は結婚式場で聖歌隊のアルバイトをしながら、オペラの専門学校の夜間クラスで学ぶ日々。並行して、児童館でアルバイトをしたことが転職のきっかけになりました。
音大時代に両親の勧めで教職課程を取り、中学校で教育実習をした経験から、子どもに関わる仕事にも興味があったんです。児童館で子どもたちと遊ぶのは楽しい時間でした。ただ、大勢が不定期にやってくるため、特定の子どもとしっかり向き合うことは難しい。もっと深く関わりたいと思ううちに、放課後に小学生を預かる「学童保育」というものがあることを知り、求人を調べて見つけたのがラボアンドタウンでした。
学童保育所は公立が多く、ラボアンドタウンのような民間の学童はまだ珍しい存在です。通勤できる圏内に民間の学童があったことに驚きながらホームページを見たら、「子どもたちが主役となって『じぶん』を育む、放課後の場所」と明確なコンセプトが書かれていました。生活の中で子どもに寄り添って成長を支えたい。児童館で感じた“やりたいこと”が、ここでならできる。そう思ってアルバイト募集に応募しました。
|日常の中に成長のドラマがある
子どもたちは放課後、15時から16時ごろにやってきて通常は19時、延長の場合は21時までが保育時間。春・夏・冬の長期休暇時は一日をここで過ごします。子どもたちと向き合うという念願がかなったものの、私は保育の資格も知識もなく、最初は戸惑うことの連続でした。
例えば何かを注意するにも、「~しないで」と禁止形ではなく、「~しようね」と肯定的形のほうが子どもたちは行動に移しやすい。「少し待って」のつもりで「1分待って」と言ったら、本当に計り始めた子もいました。守らなければ、大人が約束を破ったことになります。だから「この作業が終わるまで待ってね」と具体的に伝えたほうがいい。先輩からの日々の指導やスタッフミーティングを通じて、一つひとつ学んでいきました。
もちろん、うれしいこともたくさんあります。最近の出来事は、キャベツ嫌いの子が頑張ってキャベツを食べたこと。ラボアンドタウンでは食事はすべて手づくりで、残さず食べたらお代わりできるというルールがあります。その子は千切りキャベツが食べられず、でも好きなコロッケをお代わりしたくて泣き出してしまったんです。どうすれば食べられるかな? スタッフも周りの子も一緒になって「ケチャップをかけたら?」「僕ならソース」と考えて、本人が「マヨネーズなら」と。子どもでも自分で言ったことは守るんですね。見事に完食してお代わりした誇らしげな笑顔は、今も忘れられません。
転職してもうすぐ1年。この3月から契約社員に登用されることになりました。これまでは仕事に慣れるのに精一杯でしたが、2年目は自分から発言できるようになることが目標。音楽活動も趣味として続けたいと思っています。実は転職して、歌との向き合い方も変わってきたんです。以前は、歌は自己表現でしたが、最近は自主公演のミュージカルでも「年輩のお客さまが多いからこう歌おう」と聴いてくれる人を意識するように。子どもたちと向き合うことで、“人”への関心が高まったのだと思います。そんな自分の変化もうれしく感じています。
●ある日の流れ
14:00 出勤、朝礼。今日の保育の流れを確認。
14:30 小学校まで子どもたちをお迎え。順次入室。おやつの準備。
15:30 おやつタイム。「いただきます」のあいさつも子どもたち中心に行い、生活習慣を育む。
16:00 子どもたちを引率して近くの公園で外遊び。曜日によって室内でのアートプログラムや季節のイベントを行うことも。スタッフでアイデアを出し合い、子どもたちの感性を育むプログラムを企画している。
17:00 宿題タイム。勉強が苦手な子はスタッフがサポート。一人ひとりの様子を見ながら、個別の対応を大切にしている。
18:00 子どもたちを誘導して片づけタイム。延長保育の子どもたちの夕食の準備。
19:00 通常保育の子どもたちは順次お迎え、または自分で帰宅。 延長保育の子どもたちの夕食。
20:00 食器の片づけを終え、勤務終了。
●転職before / after
・雇用形態……アルバイト → 契約社員
・勤務時間……9:00~18:00 → 13:00~20:00
・給与……11万円前後 → 一人暮らしできる程度
・休み……結婚式場は土日のみ勤務、平日は児童館に勤務 → 週休3日(土日ほか1日)
・休日の過ごし方……自宅でゆっくり → 友人と出かける、自宅でゆっくり
●転職して変わったこと
転職して、大人の常識が子どもには通用しないことのもどかしさを感じ、子どもたちの目線を理解することの大切さを学びました。それによって、日ごろの人付き合いでも相手により関心を持つようになり、人と接することがさらに好きになりました。(小峰さん)
●編集部より
音楽活動への思いは持ちつつも、子どもに関わる仕事への関心が高まってきたゆるやかな自分の変化を受け入れ、転身を果たした小峰さん。人の関心は一つには限定できませんし、自分に合う仕事も一つとは限りません。心の声に素直に従うことも、仕事選びに大切な姿勢だと感じた取材でした。
取材・文/大崎直美 撮影/刑部友康