退職し、次のステップへ進む勇気を持つために。職場をやめられない理由のケース別解決策

2015年11月30日

「転職」は本当にやりたいことを自分の仕事にするための選択肢の一つ。しかし、「急に辞めるなんて言いにくい」「後悔したらどうしよう」と行動に移せず、結局今の職場から離れられないまま…。そんな「なかなか次の環境に行けないU29女子」は、どのような心構えで退職に臨めば良いのでしょうか?

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今回はご自身も4回の転職を経験しており、ヒューマン・スキル研修の開発を行なっている人材教育コンサルタントの岩淺(いわあさ)こまきさんにお話を伺いました。

 

なぜ辞めることができないのか?

まず、世の社員が「退職したい」と思ってもなかなか行動に移せない裏側には、どのような理由が多いのでしょうか。

「なかなか行動に移せない段階というのは、そもそも次の仕事が本当にやりたいという訳ではないのでしょう。本当に環境を変えたいのであれば、今の職場を辞めなければならないのは必然であり、『辞めたい』ではなく、『やりたい』が勝っていれば、すでに何かしらの行動をとっているはずなのです」

辞められない理由がポジティブかネガティブかに関わらず、「その場にとどまっている」という状況のうちは、なぜ自分が転職したいのか、転職してどうしたいのかなど、もう一度動機をしっかり固める必要がありそうです。

 

よくある辞められないケース3つ&解決策!

また、そのほかの職場を辞められない理由とその解決策について伺いました。

 

【ケース1】周囲へ必要以上の配慮をしている

「『私が辞めた後、会社は大変だろうな…』『後任の人はどうするんだろう』など、心優しい配慮がありすぎ、退職を言い出せない人がいます。自分の抜けた穴を埋める同僚や後輩に申し訳ない気持ちで一杯になり、言い出せないタイプです」

【解決策】会社はそんなにヤワじゃないと知る

「確かにあなたが辞めた後、引き継ぎ等で周囲に若干負荷は掛かるでしょう。でも大丈夫。会社はそれが原因で混乱に陥るほどヤワな組織ではありません。例えば社長が替わったとしても組織は潰れたりしませんよね。あえて誤解を恐れずに言うならば、人が一人辞めたところで悪影響が出るということは、むしろ組織としておかしなことなのです。

ですから、まずは安心しても良いことを知って下さい。あなたがやりたいことのできる職場に転職し、イキイキ働いていることを知れば、今居る職場の人達も納得してくれます。そして今のあなたのポジションが空くことは、違う人が成長するきっかけにもなるのです。とはいえ、後任の方になるべく負荷が掛からないように、引き継ぎ資料はきちんと準備しておきましょう」

 

【ケース2】上司の反応が怖くて言い出せない

「『退職を申し出て怒られたらどうしよう』『異常に引きとめられたり、仕事量が増えたりしたらどうしよう』など、上司の反応が怖くて言い出せない人もいます。一瞬の恐怖に耐えられない人や、その後のNOが言えない自分がうっすら想像できてしまうのかもしれません」

【解決策】退職の相談に乗ることも上司の仕事の一つと捉える

「もし深刻な状況ではなく、『ちょっと怖いなぁ』と思う程度であれば、思い切って退職の意思を伝えてみましょう。上司は、組織が円滑に動き続けるために退職の時期や引き継ぎ方法の相談に乗ってくれるはずです。それも上司の仕事の一つなのです。

しかし、もし退職を伝えると怒鳴られるようなパワハラに近い環境に置かれているのであれば、そこに黙って居続けるのではなく、周囲の信頼できる人や社内の相談窓口、人事に相談してみてください。自分一人で抱え込んでも、問題は解決しません。困っていることを周囲に伝えれば、周囲が初めて状況に気づくことは多いものです。適切な支援を得るために、自分から助けを求めてもよいことを知っておいてください。積極的に社外の相談窓口を活用してみてもよいでしょう。ちなみに厚生労働省には専門の窓口もあります。

窓口の相談役にもいろんな人がいますから、相性の合う・合わないはあります。もし1回目の相談で思うような結果にならなくても、そこで諦めず、セカンドオピニオン的に違う人に同じ相談をしてみましょう。ネガティブスパイラルから抜け出せなくなるのを避けるためにも、1人で考え込まないことが大切です」

 

【ケース3】辞めた後の自分に自信を持てない

「『次の職場でやっていけるだろうか』『次の職場が決まらない内に辞めてしまったら、生活は成り立つのだろうか』など、次の環境に対する漠然とした不安があり、辞めることを言い出せない人がいます。これは具体的な根拠があって、不安になっている訳ではありません。不安が漠然としているために解決策が立てられず、不安のスパイラルに入ってしまい、『今のままで良い』と面倒くさくなるか、切り出す勇気がしぼんでしまうタイプです」

【解決策】「不安」を具体的に書き出す

「不安を感じる原因を明らかにすると解決策が見え、不安が解消されるので、まずは何が不安なのかを具体的に書き出してみましょう。例えば『生活費が足りなくなるのではないか』という不安があるのなら、年にいくら必要で、今年収はどれくらいで、貯金はいくらで、仮に収入がなかった場合何カ月耐えられるか、など具体的に掘り下げていくのです。

意外とやりくりができると気づけば不安でなくなりますし、○円足りないと分かったなら、『次のボーナスまでは浪費を我慢しよう』『親に相談してみよう』など、具体的に対策が立てられるようになります。そしてモヤモヤが晴れたことに気づき、転職に対する気持ちが切り替わることを実感できます」

 

岩淺さんからU29女子へメッセージ「“頭で”悩んでいてはダメ」

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「転職や新しい環境にチャレンジするのは、未知への恐れが伴うものです。ただ、やってみないと分からないことを今悩んでも答えは出ません。『まずはやってみる』の精神が大事なのです。総じて転職を切り出せない人にオススメなのは、転職先を決めてから転職を上司に申し出ること。そうすれば腹が決まり、転職の意思を伝えざるを得なくなりますし、当然お金の心配もなくなります。私も4回転職しましたが、いつも次を決めてから上司に報告していました。いずれにせよ、一人で“頭で”悩んでいてはダメ。まずは社外の先輩や友達と意見交換するなど、行動に移してみましょう。

環境が変わるのを待つより、自分で環境を変える。やってみないと分からないことに悩み続けるのではなく「とにかくやってみよう!」という積極的な姿勢で行動することで、転職活動をよりポジティブに捉えられるようになりそうです。

 

<プロフィール>
岩淺 こまき (いわあさ こまき)

グローバルナレッジネットワーク人材教育コンサルタント。システム販売会社での営業技術支援および導入企業向けの研修、人材紹介会社での中途入社社員に対する研修や、メーカーでの販売促進セミナーの企画・実施を経て、現職ではヒューマン・スキル研修の開発・実施に当たる。現在ITエンタープライズにて「プロマネ1年生の教科書」「その一言を言う前に」「岩淺こまきのオン/オフで使えるプレゼン術」、日経ITproにて「おさえて安心 ビジネスマナー100」連載中。また、オルタナティブ・ブログ「明日の私を強くするビジネス元気ワード」公開中。