仕事もプライベートも充実させることは可能! 小室淑恵さんに教わる、ワーク・ライフバランスのための仕事術

2017年03月31日

仕事かプライベートか、で悩む必要はなし。両立することで、相乗効果が生まれる!

ワークライフバランスを大切にする女性

ニュースでは、「働き方改革」「ダイバーシティ」などが取り上げられ、女子が長く働き続けられる環境が作られつつあるように思えます。ですが、仕事もプライベートも充実させたいけど、「どちらか」はできても、「どちらも」は無理、夢のまた夢……と考えてしまいがちですね。

仕事とプライベート。これはどちらかを犠牲にするものではなく、相乗効果をもつ、という考え方こそが「ワーク・ライフバランス」と言うのは、(株)ワーク・ライフバランス代表の小室淑恵さん。ご自身も2人のお子さんを育てつつ働くワーママです。

そんな小室さんの著書『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』は、今から約10年前に発行された書籍ですが、ワーク・ライフバランスの基礎からノウハウまでがぎゅっとつまった 1 冊。今回はその中から、ワーク・ライフバランスのための仕事術をご紹介します。

 

そもそもワーク・ライフバランスとは

平日は気づけば定時が過ぎ、家に帰る頃には24時近く、週末は仕事の疲れが溜まって家で ゴロゴロ。そういえば、この土日、家から1歩も出てなかった、なんてことありませんか? 仕事が忙しく疲れ切ってしまって、プライベートな時間にまで影響を及ぼしてしまう。こんな日々がずーっと続くのは、避けられぬ道と思われがち。ついつい憂鬱になってしまう人も多いのではないでしょうか。

しかし、小室さんは言います。

『ライフ(プライベート)を充実させることでワーク(仕事)の効率や成果がアップし、そのことでまたライフ(プライベート)が潤っていく好循環を生み出すということ。』

『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』(小室淑恵著/ダイヤモンド社)より

これこそがワーク・ライフバランスの考え方であり、この発想の転換をできてこそ、ワーク・ ライフバランスを手に入れることができるのです。

ワーク・ライフバランスによって、どのようなよい結果が得られるのか。例えば結婚・出産した人であれば、ダブルインカムによって収入が増える、仕事、そして育児の悩みを分かち合うことができる、などが挙げられます。

ですが、働くお母さん、お父さんでないと関係がないのかというと、全くそんなことはありません。

『社会全体で仕事が知識集約型にシフトしている以上、単純に時間を長くかけてもパフォーマンスは上がりません。短時間で成果を上げるためには、むしろ普段からプライベートの時間を大切に使い、いろいろな情報や人脈に接し、インプットを増やさないといけません。
ワーク・ライフバランスは、知的生産性をアップさせる効果もあるのです。』

『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』(小室淑恵著/ダイヤモンド社)より

なにより、長く働き続ける覚悟ができることによって、人生の選択肢が広がるということが大きいです。仕事一本に集中してキャリアを追い求めることも安心してできますし、結婚をする際にも、それなりの収入を基準に相手を絞る必要もなくなるのです。

 

ワーク・ライフバランスを確立するための力

ワーク・ライフバランスのための第一歩は、時間の使い方についての意識を変えることだと小室さんは言います。
「今ある時間をどう上手に使うか」を考えると、自ずと「どう効率よく仕事を終わらせるか」という壁にぶつかります。そこで、おすすめは、以下の3つの力を身に付けることです。

1:プレゼンテーション力

「プレゼンテーション」と聞くと、企画や営業の部署の人に必要なものだと考えている人もいるでしょう。それは大きな間違えです。

例えば上司から資料作りを任されたとき、効率が悪いようなやり方だな、とか、ちょっと趣旨がずれているんじゃ、と思うことはありませんか? そんなとき、あなたがしっかりとプレゼン力を発揮し、最善の資料作りを提案できれば、資料作りにかける余分な時間、または、後日軌道修正する時間を省くことができるはずです。

ではプレゼン力とは何か。それは相手の課題――相手が困っていること、求めているもの、中でもどこに重きを置いているのか、そういった点をきちんと聞き出し、把握することにあります。 基礎中の基礎ですが、とても大事なことです。

『ただ、誰だって初対面の相手に気安く自分の悩みや課題なんて話すわけがありません。何か売りつけようという姿勢が見えれば、相手は警戒し、引いてしまいます。自分自身で問題の所在に気づいてない相手だっています。』

『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』(小室淑恵著/ダイヤモンド社)より

相手(お客様)に抵抗感を覚えさせないためにも、会話の進め方も重要です。いろいろと提案する過程で、自分の提案でフォローできないような課題にぶつかってしまうこともあり ますし、また、いきなり問題点をつくことで、気分を害する相手もいます。

そこで、自分が相手にプラスイメージを持っていることを前提に、話を進めるのがおすすめです。

『最初に「私は御社をこんなふうに素晴らしい会社だと思っています」とほめると、自社のファンだという安心感から、少しネガティブな情報を出してもいいかなというふうに思って課題を話してくれるのです。』

『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』(小室淑恵著/ダイヤモンド社)より

こうして課題を聞き出すことができたら、次は自分の持つ商品のアピールです。商品の魅力はもちろんですが、重要なのは以下のことだと、小室さんは言います。

『相手の課題にマッチするような使い方、応用の仕方を選び出し、ストーリーにすること』

『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』(小室淑恵著/ダイヤモンド社)より

例えば衣料店での販売で、「安くて」「かわいい」「膝丈」の「ピンク色」のスカートを求め ているお客様がいる場合。決して安くはないけれど、その他の3つの条件は満たしているスカートがあるとして、どう、商品を勧めるのがよいでしょうか?

何故その条件のスカートが欲しいのか、実は表立って条件には挙がっていない「自分の手持ちの服と合う」「色味は派手すぎない方がいい」(相手の課題)まで聞き出し、ほぼそれに見合うこと、価格は希望通りではないものの、実はリバーシブルで使い回しができる点(応用の仕方)を伝え、時期も場所も限定されず着回せるというストーリーを伝えてみると、お客様も、より商品が魅力的に見えるはずですね。

100%相手の希望に沿うものでなくとも、相手の課題を解決し、+αもあり、相手がハッピーになれるようなストーリーイメージを共有できれば、怖いものはもうありません。

2:コミュニケーション力

上司や先輩は残業が当たり前になっているから、と、定時きっかりに帰ることに心苦しさを感じてしまうこと、ありますよね。だからと言って、作業スピードを緩めることは自分のスキルアップには繋がりませんし、だらだらと残ってしまうのは時間の無駄です。

1番のおすすめは、周囲にアピールをすること。定時に帰りたいと思う理由は人それぞれですが、例えばスキルアップのため、語学や資格の勉強に充てたい、彼氏がいないから婚活に励みたい、ダイエットのためにジムに通ったり、夕食の時間を早めに設定したいなど、周囲に打ち明け、理解を得て、巻き込んでいくことがポイントです。

一定期間の挑戦だとしても、自分も周りもその感覚に慣れてしまえば、気づけば、ワーク・ライフバランスを尊重するような職場になっているかもしれません。

周囲へのアピールは、なかなか気乗りしないという人には、上司や先輩を立てる「おかげさまで戦略」がいいそう。

「おかげさまで戦略」とは、定時前の1日の業務報告の際に、上司や先輩のアドバイスなどが活きたエピソードを盛り込み、“そのおかげで”今日は早く仕事が終わったので帰ります、と伝えること。

『考えてみれば、若手社員が早く帰宅できるとすれば、それは上司や先輩から、日々いろいろなことを教わり、またサポートしてもらっていればこそです。
ところが、そのことを感謝しないで自分だけで仕事をこなしたような顔をして帰ってしまうと、やはりみんな腹が立ちます。
(中略)
だから、早く退社するとき、まわりにお礼を言うのは実は“戦略”ではなく、本当は当たり前のことなのです。』

『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』(小室淑恵著/ダイヤモンド社)より

こうして感謝の気持ちを伝えることで、上司や先輩たちも、気持ち良く見送ってくれるはずです。

3:マネジメント力

20代後半でリーダーなどの役職に抜擢、ということもあるでしょう。自ずと部下のマネジメントも必要になってきますね。そういうときにも、“ワーク・ライフバランス観”が活きてきます。

『なぜなら、部下のワーク・ライフバランスをサポートすることで、部下のパフォーマンスがよくなり、チーム全体の成果が上がるようになるからです。』

『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』(小室淑恵著/ダイヤモンド社)より

部下一人一人の生活を尊重し、自分は認められているという自信を持たせる。そうして、仕事への姿勢がポジティブなものになり、さらにプライベートでのインプットを増やした部下の数だけ、アイデアがブラッシュアップされ、チームとしてのパフォーマンスがあがる。最終的には、自分自身のワーク・ライフバランスにも繋がる、というわけです。

番外編:ワーク・ライフバランスな会社を見つける

国として「ワーク・ライフバランス」を掲げている昨今ですが、そもそも、今あなたが勤めている会社の風土的に、それは可能なのでしょうか? 一旦、見直してみる必要があるかもしれません。方法は3種類あります。

A:人事担当者に以下の項目を聞く

・育児休業の取得率、育児休業者の復帰率
・育児休業を取った人で管理職がどれくらいいるか
・長時間労働の習慣を見直す取り組み
・有給休暇の消化率
・勤続年数の男女の差

長く働き続けることを念頭に、転職活動をするのであれば、欠かすことのできない点です。 企業のホームページに記載されていることもありますし、直接は聞きにくい、マイナスな印象を与えるのでは、と不安を感じる人は、転職エージェントに相談してみるという手もあります。

B:22時に会社に行ってみる

特に長時間労働については、データや人事の説明はあくまでも理想で、実態とは異なるという場合も多々あります。

『長時間労働が当たり前になっているということは、そもそも常に業務時間内で終わらないことを前提にひとりひとりの仕事が組まれているのです。したがって、それに対応できない人は使えないという烙印を押されかねません。
明文化されていなくても、組織のメンタリティが長時間労働を当たり前としていれば、人事評価にもバイアスがかかっている可能性が高いのです。長時間労働が当たり前の会社で は、休日に出勤したとか遅くまで頑張っていたということが、暗黙のうちに、評価にプラスに作用します。』

『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』(小室淑恵著/ダイヤモンド社)より

ではそういった風土はどうやったら見分けられるのか。小室さんがおすすめするのは、22時頃に、その会社に何度か行ってみるという方法。全てのフロアの灯りがついていたら、要注意です。

C:自分で職場環境を変える

今の勤務先は、仕事内容も、お給料も十分。ただワーク・ライフバランスという点では……という方もいるかもしれません。その場合、いっそ自分で環境を変えてみるのはいかがでしょうか?

ワーク・ライフバランスの利点を上司や周囲に訴える……という大っぴらなことは難しくても、例えば時短勤務の先輩をサポートする、ということは可能ですよね?

「なんであの人は早く帰れて、私は帰れないの!」「しわ寄せがこっちにきてる!」と、つい思ってしまう気持ちは十分に分かりますが、そういう気持ちから出てしまう愚痴や態度が、諸事情を抱えながら仕事している人を、そういった人が働き続ける可能性、キャリアアップできる可能性を、潰していることになるのです。

いざ、子育てをしながら働く、という道を自分が選びたいと思ったとき、上記のような雰囲気が慣習化してしまうと、退職、もしくは、横ばいのキャリアしか選べないかもしれません。

そうならないためにも、帰宅を急ぐワーママに、押しつけがましくない程度のエールとサポートを伝えましょう。

『サポートするほうは、短期的には業務の負担が増えるかもしれませんが、その気配りと配慮は誰だって見ればわかります。チームワークに貢献する働き方ができているあなたを、マネージャーも評価するでしょう。』

『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』(小室淑恵著/ダイヤモンド社)より

 

「働き方」というのは人それぞれですが、『個人にとっては自己実現を図り人生を充実させる鍵であり、企業にとっては業績を左右する条件』です。であれば、より多くの人が充実と幸せを感じられるようなものが最善で、ワーク・ライフバランスという考え方の重要性がよく分かります。

20代は仕事、いやいやプライベートを優先、などと決めつけずに、共に刺激し合い、好循環を生み出すような生活を手に入れられるよう、取り組んでみてはいかがでしょうか?

キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方参考書籍:『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』(小室淑恵著/ダイヤモンド社)