その無茶振り、引き受けて大丈夫!? 信頼を失わない「仕事の断り方」とは

2017年10月05日

「今晩は大切な約束があるのに、こんな日に限って上司に残業を頼まれた……」
「得意先から、どう考えても納期に間に合わない発注が!」
こんな経験がある人は少なくないはず。そうした場合に、「できません」だけでは社会人として頼りない印象に。とはいえ、無理に引き受けて、後で周りに迷惑をかけてしまっては本末転倒です。ときには、「できないことはできない」とはっきり伝えなければいけません。

仕事を断る前に、まずはその仕事を受けるべきかどうか客観的に判断することが重要です。正しい判断をした上で、次のステップとして「どう断るか」を考えましょう。今回は、企業の組織・リスク管理の一環として、謝罪行動にも詳しい増沢隆太さんに、仕事を断るときの考え方や方法について教えていただきました。

 

断るかどうかの基準は、その仕事を最後までやり遂げられるかどうか

仕事を断るときは、「相手に申し訳ない」「断って怒られたらどうしよう」などと考えがちです。しかし、当たり前のことですが、まずは「仕事である」ということをしっかりと認識しておかなければいけません。仕事とは、自分に与えられた役割の中で、その責任を全うすることです。ですから仕事を断るかどうかの基準は、「自分の仕事として最後まで達成できるかどうか」です。

感情で仕事を安請け合いして、その結果依頼されたことを成し遂げられなければ、自分の責務を果たすことになりません。仕事においては、常に自分の立場と役割、キャパシティをしっかりと認識し、それに基づいて考え、行動するということが重要です。もし、あなたの範疇を超えるような依頼があった場合は、自分だけで判断せず、上司などの責任を負える立場の人に相談するということも必要です。
 

無茶振りだと判断した仕事は、安請け合いしない

そもそも、無茶振りをする人というのは、こちらの都合を一切考慮していないものです。そういう相手の無理な要求を一度飲んでしまうと、その後も無茶振りが続く恐れがあります。それを毎回受け入れ続ければ、結局最後には自分が潰れてしまうことになりかねません。上司や取引先の頼みを断るのですから、面と向かっては言いづらいかもしれませんが、無理な要求に対してははっきり断わることが、その後の働きやすさにつながります

もし「急で申し訳ないんだけど……」と、相手が気遣ってくれているようなときは、希望に添えないことに対してはお詫びした上で、できない理由を明確に伝えるようにしましょう。できないことは断わらなければいけませんが、代案を出すなど歩み寄って、解決策を探ればよいのです。
 

仕事を断る際に知っておきたいテクニック

断り方の基本は実はとてもシンプルで、「相手の態度に合わせる」ということです。無茶振りをする人はこちらの事情など考慮していないのですから、断る理由を述べたり、申し訳なさそうな表情を作ったりしてもあまり意味がありません。ですから、無茶振りにはあれこれ気を回さずに「申し訳ありませんが、できません」とストレートに伝えればよいのです。

一方、相手が一定の配慮を示している場合は、こちらもむげに断ってはいけません。穏便に断るためのテクニックとしては、前述の「代案を出す」ことが有効です。「今は手がつけられないのですが、明日(あるいは、○時まで)なら対応できます」「最後までは難しいですが、この部分までは可能です」といったように、条件を付けるといいでしょう。代案を提示した上で頼むかどうかは、相手が決めることです。全くやる気がないわけではないという姿勢を示すことにもなります。

また、中には可能な範囲を超えた代案を出してしまう人がいますが、ゆとりを持って、あくまでできる範囲で伝えるのが得策です。既に相手の要望に完全には応えられない状況で、伝えたことができなかった場合、さらに相手の心証を悪くします。逆に伝えた以上のことをやれば、少し見直されるかもしれません。

社外の相手の場合は、「決裁権が自分にない」ことを理由にする手もあります。たとえば、取引先の注文を断る際、「弊社では、この金額(納期)では受注しかねます」「上司の決裁がおりません」などと説明すると、相手もそれ以上は強く言いづらくなります。ただし、これはあくまで奥の手です。あまり頻繁に使うと「この人には権限がないから、頼んでも仕方ない」と思われて、自分の評価を下げてしまいます。
 

仕事の依頼を断ると、どうしてもその後の評価が気になりますが、一度断っただけで評価が下がることは、まずありません。社会人の評価は、あくまで日頃の勤務態度で決まります。

急な残業を断ったとしても、普段からしっかりと仕事に取り組んでいれば問題はないはずです。また、長期間にわたり信頼関係を築いてきた取引先なら、無茶な注文を断ってもすぐに取引中止になったりはしません。

仕事の依頼を上手に断れるかどうかは、普段どれだけ誠実に仕事と向き合っているかが大きな鍵となります。

 

記事監修:増沢隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役。元東京工業大学特任教授。産業カウンセラー。企業の組織内コミュニケーションの向上やキャリア開発研修に従事。新卒・再就職採用におけるキャリア支援、理系大学生のためのキャリア教育などにも取り組む。著書に『謝罪の作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『戦略思考で鍛える「コミュ力」』(祥伝社)など。

 
※この記事は2017年10月時点での情報です。