後輩から嫌われない「ダメ出しの力」を身に付ける
とらばーゆ世代になると、後輩の育成を任されることも多くなるはず。そうなると、ダメ出しをしたり、注意を促す場面もあると思いますが「嫌われてしまうのでは」と躊躇していませんか? そう思われない効果的なダメ出しの方法を『ダメ出しの力 職場から友人・知人、夫婦関係まで』の著者、繁桝江里さんにうかがってみました。
「叱る」と「ダメ出し」の違いとは?
「叱る」の定義として「とがめる」「戒める」という表現が入ることや、上司が部下を叱るというように上から下への一方的な流れが強調されます。しかし、「ダメ出し」は学術的に「ネガティブフィードバック」と呼んでいて、相手の良くない部分だけを指摘するという中立的な位置づけにしています。ですから、相手に対して「叱ってとがめる」のではなく、「有益な情報を与える」ことがダメ出しの基本と考えてください。後輩が気づけなかった情報を与えて成長につなげることがダメ出しの力なのです。
反感を持たれないダメ出しの3つのテクニック
■ 感情的にならない
ダメ出しをする上で、一番大切なことは感情的にならないこと。人間ですから、ネガティブな感情を出すとネガティブな気持ちが返ってきてしまうもの。特に、女性は感情的だという偏見を持たれがちです。ダメ出しの内容に目を向けてもらうためにも、あくまでニュートラルな空気の中で伝えることが大事です。
■ 解決法を加える
フィードバックをするときは、ただ「ここがダメ」と指摘するだけでなく、一緒に解決法を考えたり、提案することを心がけましょう。共に良い方向へ改善していくための価値ある情報を与えることに徹すれば、嫌われるどころか喜ばれるはずなのです。
■ ポジティブな部分も「イイ出し」してあげる
例えば、企画書を提出されダメ出しをする際に、その場だけの情報で判断することは危険。昨晩、遅くまで残って企画書を作成していたなら、その部分を褒めてあげたり、認めてあげる「イイ出し」をしたうえでダメ出しをすると、受け手にも効果的に響きます。人は誰しも自分の頑張りを認めてくれ、努力を見ていてもらえるとうれしいもの。ネガティブな部分だけでなく、ポジティブな部分も見ておき伝えることで相手をより成長させられるのです。
ダメ出しの効果的な使い方を学べたでしょうか。繁桝さん曰く「ダメ出しはネガティブに捉えられがちですが、言い方や方法さえ工夫すれば、相手にとっても、二人の関係にとっても、職場にとっても良い結果を生むツールになることが研究データで示されています」。より良い職場づくりのためにも愛あるダメ出しを実践してみてはどうでしょうか?
【プロフィール】
繁桝江里
社会心理学者。青山学院大学教育人間科学部心理学科 准教授。
職場や身近な人間関係における対人コミュニケーションの研究を専門に行う。
【著書】
『ダメ出しの力 職場から友人・知人、夫婦関係まで』
繁桝江里著 中公新書