困った後輩を一人前に育てる方法

2017年09月19日

仕事をなかなか覚えてくれない、仕事のミスが多い、あいさつもまともにできない……。そんな新入社員の教育係として、後輩の面倒を見ている人も多いはず。困った後輩のモチベーションを上げ、一人前に育てるにはどうすればいいのか、女性の活躍推進やリーダー育成などのコンサルティングに定評のある山本幸美さんにうかがいました。

 

新人との間には想像以上の世代間ギャップが

20代前半の新入社員とアラサー社員の間には、ライフスタイルや仕事観など、さまざまな世代間ギャップが生じています。そんな新人たちを「ゆとり世代」「さとり世代」とひと括りにするのは少し乱暴で、新人も先輩や上司からそう見られるのを嫌がります。それでいながら、言うべきときはきっちりと言ってくれる厳しい先輩も嫌いではない、という側面も持っています。

いまの新人世代は、仕事をする上でのモチベーションとして、「自分は期待され必要とされている」という自己重要感や「自分は会社に役立っている」という貢献実感、仕事に対する使命感、先輩や同僚から認められることなどを非常に大事にしています。逆に、上位のポストや給与の高さといった「地位や金銭的な報酬」にはあまり関心がない、という特徴があります。

こういったギャップを認識して、新人世代が働く上で何に価値を置いているのかを知ることが、後輩を指導する際に重要になってきます。
 

「自分は必要とされている」という意識を引き出す

このような後輩に接するときは、「自分は必要とされている」という意識を引き出すのがポイントです。例えば、コピー取りなどのちょっとした仕事を頼むときも、「新人ならやって当たり前」という考えは捨て、「○○さんだから、この仕事を任せたのよ」「小さな仕事ひとつでも、私たちのチームにとってすごく重要なの」とねぎらいの気持ちを言葉で伝えましょう

困った後輩に対する叱り方にもポイントがあります。例えば、ミスをしたときは頭ごなしに叱るのではなく、「あなたらしくないじゃない?」と指摘し、さらに「○○さんはできると思うから言っているのよ」と伝えます。相手を否定するのではなく、肯定しながら指導するというアプローチをすることで、「自分を大事にしてくれる先輩」と信頼を寄せてくれるでしょう。

「あなただけがダメなのではない」「私も昔はできなかった」というように、相手に共感するフォローも有効です。ミスを繰り返しても決して見放さず、「私は○○さんを信じているからね」とひとこと伝えることも忘れずに。ちょっとハードルが高いかなと思う仕事を任せるときには、段取りなどをただ教えるだけではなく、「この仕事を通じてどうしたら成長できるか」を自分で考えさせることも大切です。
 

後輩の「あこがれとなるお手本」になれている?

「報・連・相(報告・連絡・相談)」がなかなかできない後輩もいますよね。しかし、先輩だからといって、これらが後輩から上がってくるのをただ待つというスタンスでは、お互いの信頼関係は築けません。話しやすい環境を作るためにも、あなたのほうからアプローチして情報共有に努めましょう

セミナーなどで接する新入社員から話を聞くと、思った以上に先輩社員の言動をよく見ていることに驚きます。後輩を一人前に育てるには、あなた自身が「あこがれとなるお手本」になれるかどうかにかかっています。相手は自分を映す鏡。学ぶ意識のある先輩は、学ぶ意識のある後輩を育てます。この意識を常に持っていれば、困った後輩が「できる後輩」に変わる瞬間を、きっと見届けることができるでしょう。
 

いまどきの新入社員は、「自己重要感」や「貢献実感」を非常に大切にしています。この傾向は男性よりも女性に強く、仕事を頼むときも叱るときも、この価値観をくすぐる方法が有効です。

後輩の問題点や短所ばかりに目が行きがちですが、直してほしい点が5つあったら、同じだけ長所も見つけましょう。そこをさらに伸ばしてあげることで、後輩のモチベーションはグンと高まるはずです。

 

記事監修:山本幸美
株式会社プラウド代表取締役。株式会社リクルート、株式会社インテリジェンスなどで営業・人事コンサルタントとして勤務した後、2004年に株式会社プラウドを設立。代表として、ワークライフバランス推進、女性活躍推進、営業力強化、コミュニケーション力強化などの事業を展開。これまで700社以上の企業をサポートしてきた。著書に『一生使える「営業トーク」』(大和出版)、『一生使える「女性リーダー」の教科書』(大和出版)、『愛されて売れ続ける女性営業がしている10のこと』(あさ出版)など。

※この記事は2017年9月時点での情報です。