新卒入社で班長にも大抜擢! 24歳、国際自動車の“タクシー女子”が語る、タクシードライバーの魅力とは?
意外な業界・職種で活躍! イマドキ女子の多様なワークスタイル
国際自動車 成毛さん
タクシードライバーとして活躍する女性が近年少しずつ増え、注目が集まってきています。今回インタビューをさせていただいたのは、入社2年目で営業所初の新卒女性班長に就く国際自動車・成毛さん。この職種を選んだ理由は? 業界の現状はどうなってるの? 「タクシー女子」の仕事のリアルに迫りました。
ホスピタリティ精神あふれるタクシー会社の方針に魅力を感じた
■なぜタクシー業界を選んだのでしょうか?
就活では業界問わず、主に事務系で探していたんですが、たまたま国際自動車で事務と新卒ドライバーの募集をしていたので、説明会に行ってみたんですね。両方の職種の話を聞くうちに、この会社のドライバーは、それまで自分がイメージしていたタクシードライバーとはイメージが違うと感じて、事務よりも興味が湧いてきたのです。
まず「ホスピタリティ・ドライビング」という企業のモットーに惹かれました。
ドライバーはお客様を手助けする仕事で、そこに「おもてなし」という付加価値をつけた接客・サービス業という考え方。私自身、学生時代に飲食店でアルバイトをしていた経験から、人と接する仕事が楽しかったことを思い出しました。
■きっかけはその企業のモットーだったのですね?
「おもてなし」の発想から、さまざまなタクシーサービスを展開していることにも関心を持ちました。妊産婦さんのためのマタニティ・マイタクシーや、ホスピタリティアテンダントと呼ばれる女性ドライバーが子どもの送迎を担当する「お子さま送迎サポート」、英語に対応したバイリンガルタクシーも運行しています。
今まで抱いていたイメージとは違って、ドライバーとして活躍している新卒や女性の方もいると聞いて、職種として新鮮に感じて、興味が持てたのかもしれません。
初めて社会に出る私にとっては、新しいチャレンジ。この業界に、思い切って飛び込んでみようと決心しました。
■ご家族の反応はいかがでしたか?
母は「あなたがやりたいなら」と賛成だったのですが、父は価値観が古いタイプなので、とても戸惑っていました。タクシードライバーというと、「男性の仕事」「退職後に就く仕事」「体力的な負荷が大きい」などのイメージを持っていたようです。でも、そのとき知りうる会社の良いところ、自分のやる気を伝えて、最終的には納得してもらいました。
■タクシードライバーになるためには普通自動車第二種運転免許が必要ですよね?
はい。普通免許は大学2年のときに取っていたのですが、実はほぼペーパードライバーでした(笑)。
二種免許は実技も学科も一段難しい国家資格です。東京で運行するタクシーは、それに加えて東京タクシーセンターという第三者機関が定める地理試験にも合格しなくてはなりません。
そのために、入社前から地理の勉強などができ、資格取得費用の全額が援助される制度があり、と体制が整っていたので、安心して勉強に集中することができました。二種免許を取得したのは、入社から2か月たった6月でした。
その後は接客、メーターやナビ操作の研修、教官に同乗してもらっての実地訓練などのトレーニングを積みました。
女性におすすめしたい“働きやすさ”
■ドライバーデビューはいつでしたか?
今の営業所に配属されたのは、入社後4か月ほどたった夏の終わりごろです。お客様をお乗せするエリアは、東京23区と武蔵野市・三鷹市。
地理の試験には合格しましたが、蜘蛛の巣のようにはりめぐらされた東京の道路を、全て記憶しているわけではありません。分かったふりをして道を間違えると、お客様とトラブルになるので、ナビを使っても分からないときは、お客様に正直にお伝えしています。そうしたときは道順を教えていただき、お客様に助けられています。
私は一日の売上目標を決めていますが、それを達成するためには、いかに空車時間を減らして、お客様を効率的にお乗せできるかが重要になってきます。
慣れるまでは、どの時間帯にどのあたりを狙って流すかを先輩や教官に教わった通りに走っていました。また同期のドライバーから逐一営業情報の連絡をもらったり、無線のリアルタイムな情報を頼りに営業しています。毎朝必ず行くのは近くの高層マンションにあるロータリー。朝は遅刻しそうな人、駅まで急ぐ人が多いからです。
■どのような働き方をされているんですか?
勤務形態は日勤・夜勤・隔日勤務の3パターンがあります。私は通勤時間が1時間半かかるので、出勤回数が少ない隔日勤務を選びました。1回の乗車時間は実働15.5時間・休憩3時間で、月の稼働日数は11~12日。実質、毎月半分は休みということになります。
お給料は基本給プラス歩合制なのですが、頑張った分だけお給料に反映されるため一般企業に就職した大学の友人たちより高いです。休みが多くてお給料も多いので、ショッピングに行くと、欲しいものを買いすぎてしまうこともあります(笑)。
■タクシードライバーとして働くことのメリットはなんですか?
ライフスタイルに合わせた働き方ができます。
8時から17時までの日勤で働くママも多く、家族と過ごす時間が増えたというドライバーもいます。隔日勤務なら、一勤務あたりの時間が長い分、休日もまとめて長くとれるので、ミュージシャンとして活動している人もいますよ。
入社2年目で営業所初の新卒・女性班長に
■新人ながら、班長に抜擢された経緯を教えてください。
配属後の所信表明で、やる気を見せなくちゃと思って「将来は班長になりたいです!」と思わず言ってしまって……(笑)。班長は、営業所幹部数名で話し合って決めるそうなのですが、その所信表明のおかげか、社長直々に「どう? やってみる?」と声がかかりました。
会社として新卒や女性採用に力を入れていますが、私の所属する営業所は全470名のドライバーのうち女性がまだ10名と少なかったので、経験はまだまだ浅いのですが、私が班長になることで「新卒女性」の受け入れ態勢の強化が図れるということではないかと。期待されていると思うと、プレッシャーはあります。
班長の仕事は、20~70代まで200名以上いる班のメンバーの安全運行を管理する内勤の仕事です。国家資格の運行管理者資格が必要だったので、それは班長に任命されてから取得しました。メンバーの日報をチェック、運転ルートの相談だけでなく、業務やキャリアの相談にのったり、勉強会を開催するなど、さまざまな仕事があります。
でも、班長といっても、まだ「見習い」のようなものだと思っています。今はドライバーとして外へ出ながら、帰庫後に会うメンバーに声かけをして、まずは顔や名前を覚えるところから(笑)。「今日はどうでした?」と、その日の現場の様子を聞いています。班長の仕事が、逆にドライバーとしての自分の成長にも繋がっていると思っています。
■仕事が増えて大変ではないですか?
お客様の中には「もっとスピード出してよ」など、無理なご要望をされる方もいます。イヤなことがあってモヤモヤしながら勤務を続けると、思わぬ事故に繋がりかねませんし、お客様を乗せるのが怖くなってしまうドライバーもいます。
私自身も、入社直後に追い越し車線違反で反則キップを切られて落ち込んだときなど、困ったときには班長に助けられてきました。日々、前向きな気持ちで運転してもらえるよう、まずはメンバーの話に耳を傾けていきたいです。
予想よりはかなり早く班長のお役目をいただきましたが(笑)、引き受けたからには、メンバーの精神的な助けになれるよう、努力したいと思っています。
■最後に、タクシードライバーになって良かったと思われますか?
あるとき都内で乗せた方に「あなたは娘と同じ年くらいだわ。がんばってね! また乗りたいから名刺くださる?」と言われたとき、この職を選んで良かったと思いました。その後、何度か会社にご連絡いただいていたようだったのですがタイミングが合わず、1年後くらいに、やっとその方をお乗せすることができて感激しました。
タクシーの利用客は急いでいる方が多いので、安全に最短時間で走るように心がけています。少し早めに到着して「ありがとう」「助かった!」と感謝の言葉をいただけるときが一番嬉しいですね。困っている方のお役に立っている実感を持てることがやりがいになっています。
■とはいえ、お客様にもいろいろなタイプの方がいるのでは?
お客様に言われると、ちょっとだけ傷つく言葉があります。「どうして、普通の会社勤めじゃなくて、タクシードライバーの仕事を選んだの?」というものです。やはりまだまだタクシー業界への古いイメージは根強いのだな、と……。
そんなときは、お客様を目的地まで安全にお届けするやりがいのある仕事で、自分が精いっぱいのおもてなしをすることで、少しずつでもタクシー業界のイメージを変えていきたいという想いをお伝えしています。
1日30~35組、多いときで40組のお客様を乗せるので、微力ながら「タクシー=おじさんの職業」みたいなイメージは、少しずつ払拭できているかなと思っています。
偏見を持たずに、もっと多くの女性にこの業界に飛び込んできていただき、「タクシー女子」が増えてほしいと願っています。
成毛さん
大学卒業後、2015年4月に国際自動車に入社。2016年11月、配属営業所にて、新卒・女性として初の班長に抜擢され、その後、運行管理者資格を取得。最近は会社のテニスサークルへ見学に行くなど、体力維持に努める。
(インタビュー/兼子梨花 構成/風来堂 撮影/三坂修二)