60歳で独立した収納コーディネーターの語る「こだわり」の捨て方
かっこいい先輩に学ぶ!長く働き続ける理由
収納コーディネーター・スッキリ生活アドバイザー 宮城美智子さん
収納コーディネーターとして講演活動を中心にテレビや雑誌でも活躍する宮城美智子さん。70歳を目前にした今でも、講演会や片づけに悩む方からの依頼で全国を駆け回っています。そんなバイタリティーあふれる宮城さんに、働き続ける“理由”をお伺いしました。
■今の仕事は一期一会の出会いから
22歳で結婚するまでは経理事務所で1年半働いていました。当時、女性は結婚したら家庭に入るべきだという世の中で、私も結婚後10年ほどは専業主婦をしていたのですが、「女の人もこれからは精神的にも経済的にも自立しなきゃいけない」という母の教えが頭の片隅にあったんでしょうね。 ご縁があり、30代になって映像制作会社で再び働くようになりました。その仕事関係で、30代半ばにアート引越センターの寺田千代乃社長と出会い、女性としての生き方に感銘を受けたんです。私と同じ昭和22(1947)年生まれで子育てもしながら第一線で働き、男性社会の中で女性目線の仕事をする姿に憧れました。
この出会いがきっかけで、49歳の時に「50歳になったら何か新しいことにトライしたい」と、アート引越センターで働き始めました。まったくの異業種への転職でしたが、不安よりも女性オーナーとして活躍されている寺田社長のそばで働きたいという思いが強かったですね。憧れの寺田社長のもとで「エプロンサービスレディー」という女性だけから成るプロの引っ越し集団をつくり、10年間で全国400名の規模にまで育て上げました。そこで片づけられない人の多さに気がついたんです。 55歳の時には日本初の片づけサービスを始め、片づけに関する講演会やテレビ番組への出演、雑誌などの取材が徐々に増えていきました。60歳で収納コーディネーターとして独立。現在、ハート引越センターのアドバイザーも務めていますが、これも人との出会いが引き合わせてくれた仕事です。
もともと人が大好きで、仕事を通じた人との出会いを大事にしてきました。その出会いから色々なことを学び、新たな仕事が生まれて、また新しい出会いに恵まれる。だから仕事が楽しくて好きで、今まで続けてこられたのだと思います。
■ポジティブ思考で仕事は楽しく
楽しく仕事をし続けるには、いつも前向きでいることも大切です。良いほうに物事を考えると周りが変わってきます。部下を400人抱えてトップに立っていたときに悟りました。周りを変えようと思わずに、自分自身を変えることで周りが変わってくるのだと。そうやって、いつもプラス思考で楽しく仕事をしてきたので、つらいと思ったことは仕事ではほとんどありません。つらいことがあっても、これは自分にとっての勉強であり、今後の糧にしようと思っていました。どうしても気持ちをポジティブな方向に切り替えることができない時は、生き方の助けになるような本を読んだことがあります。その後もちょっと迷った時には、「この世で起きたことはこの世で解決するから、あの世には持って行けない」という本の内容を思い出して乗り切ってきました。つまり、時間が経てば解決するってことだと思うんです。
■人生も片づけもこだわりを捨てるべし
私は性格的にあまり物事にこだわらないほうです。モノにも執着しません。嫌なことがあっても一晩で忘れるタイプです(笑)。だから、過去を振り返ったり、立ち止まったりすることもあまりありません。「今」を大事にすれば、ちゃんと「未来」は来ると思うので、どんな仕事に対しても目の前にあることを一生懸命やることを心がけています。そうやって私はチャンスを逃すことなく、人との出会いという“運”を上手に使ってきたのだと思います。
いついつまでに「結婚しないといけない」、「妊娠しないといけない」、「転職しないといけない」などといった「未来」へのこだわりは、その通りになるとは限りません。「未来」は明確には見えないものだからこそ、それにこだわる必要はないと思うんです。それよりも「未来」に向けて「今」を大事にするべき。常に「今」を頑張って切に生きることで、色々なものの「未来」が拓けてくると私は感じます。
「こだわりを捨てる」というのは、片づけにも通じるところがあります。来るか来ないか分からない未来に向けてモノを残したり、過去にこだわってモノが捨てられなかったりする方も多いですね。「今」を大事に生きる道を選んだほうが、生き方上手といえるのではないでしょうか。
■仕事は自分の「生きる力」になる
30代のころは子育てしながら子どものために頑張ろうという気持ちもありましたけど、今考えると仕事は自分のためでしたね。一時は子どものため、家庭のためであったとしても、最後は自分の糧になると思います。仕事を持っていることで、プロ意識が働いて健康に気をつけるなど自己管理をちゃんとするようになりますし、身なりにも気をつかうようになりますね。まさに、仕事というのは「生きる力」だと思います。だから私も70歳からまた新しいことをやろうと思っていて、老舗旅館のおもてなしの心を取り入れた高齢者向けの引っ越しパックの商品化を進めていこうと考えています。
今は私の時代に比べて働く条件や環境もいい時代。ぜひ若い皆さんには、今たとえつらくても自分のために仕事を大事にしながら努力してもらいたいですね。
1947年生まれ。滋賀県長浜市出身。アート引越センターエプロンサービス担当部長時代に片付けや掃除のノウハウを構築し、60歳で独立。現在はハート引越センターの収納レディーの育成や講演会活動を行い、テレビ出演なども。著書に『片づけスイッチがONになる本』(主婦の友社)、『若返り片付け術』(朝日新聞出版)。
オフィシャルサイト http://theworks.co.jp/miyagi/