今、企業が求めているのは「ママ」の力!時間と場所にとらわれずにプロとして活躍できるグロースハッカーの全貌に迫る

2017年03月03日
子育て中のママによる在宅ワークの新しい可能性として、福岡から発し、全国で注目を集める「ママグロースハッカーズ」。現在、ママグロースハッカーズの全仕事のうち約9割を占めるのが、Kaizen Platformからのオファーによるサイト改善提案である。サイト改善を図りたい企業と、実装を担うグロースハッカーをマッチングする“プラットフォーム”を提供するのが、Kaizen Platformの役割だ。
今回は、ママグロースハッカーズに案件を依頼することが多いKaizen Platformの3名の担当者にインタビュー。ママが具体的にどんなサイトの改善を担当しているのかや、ママならではの強みの発揮など、グロースハッカーとして活躍するママへの期待を伺った。
Kaizen Platformの皆さん

左から、Customer Growthの矢崎泰三さん(以下、泰三)。EC/Media Unitの小山純子(以下、純子)さん。Customer Supportマネージャーの岡本葵さん(インタビューは同席せず)。EC/Media Unitの郷康宏さん(以下、郷)。

消費のカギを握る「ママ」の視点を捉えて 購買に直結するサイト改善を提案

–まずは、ママたちにどのように案件依頼が来て、どのように発注しているのか、大まかな流れを教えてもらえますか?

 はい。私たちが企業から受けている改善テスト案件は、当社のプラットフォームに登録を行っているグロースハッカーなら誰でも投稿できるオープンオファーと、専門のグロースチームに案件の依頼を行うターゲティングオファーとに分けられます。ママグロースハッカーズは現在グロースチームとして活動しているので、ターゲティングオファーを依頼することもありますし、それぞれのママが個別にオープンオファーに投稿することもあります。ターゲティングオファーの場合は、まずママグロースハッカーズを統括するデジタルハリウッドSTUDIO福岡の高橋政俊校長に連絡をし、それぞれの案件を割り振っていただいています。

–具体的に、ママにはどんなサイトの改善を依頼しているのでしょうか。

純子 私は、化粧品メーカーや、女性向けの本やコミックの閲覧サイトなどの改善をお願いしています。同じ女性向けの商品やサービスなので、消費者視点を活かして提案いただいています。

泰三 私からのお願いで多いのは、まず音楽教室や英語教室など、教育系のサービスです。ママのみなさんはご自身のお子さんの習い事を選んだ経験がある方も多く、どんな情報が気になるかをよく知っているのでとても説得力のある提案をしていただけます。他には、不動産の賃貸サイトでも、独身女性をターゲットにしている場合は、独身時代の経験を活かした提案をしていただいています。人材派遣業も、派遣をはじめいろいろな働き方を経験しているママが多いので、とても頼りにしています。

–「ママの視点」へのニーズは近年高まってきているのでしょうか?

 はい、高まってきていると思います。現在はECサイトなどWebで予約や購入ができるサービスが多く、Webサイトが消費の入り口になるケースが増えてきています。そして、多くの家庭では女性が財布を握っているので、女性の目線でのサイト作りやサービスの設計がとても重要になってくるのです。例えば家族で車を購入する際、メインで運転するのはパパだったとしても、購入を検討する段階ではママの意見がとても大事なケースが多いですよね。そうすると、車種やスペック、世界観といった男性視点での情報だけでなく、価格や機能面、保証などといった女性が気になる情報もしっかりとカバーすることが大事になります。こういった背景から、「ママの視点」でサイトを改善していきたいと考えている企業が増えてきているのだと思います。

–なるほど。実際にママにサイトの改善を依頼してみて、どう感じていますか?

 未経験からママ向けWebグロースハッカー養成講座を受講されていた方も多いと伺っていたので、最初は難易度が低いものや、取り組みやすい案件を選んで発注していたんです。でも、続けていくうちにママたちのレベルがどんどん上がってきて質の高い提案をたくさんいただけるようになり、今ではかなり幅広く案件を依頼させていただいています。

泰三 ママに限らずグロースハッカーというのは、誰でも登録できる仕組みになっているので、それぞれのグロースハッカーの方の得意分野やスキルのレベルが、こちらでも判断がつきにくいことがあるんです。それに加えて、子育て中で忙しいママだから仕事の時間をあまり作れないだろうという気持ちもあって、正直最初は作業時間がかかるような案件の依頼はあまりしていませんでした。でも、案件を依頼してみるととても高いクオリティで提出いただき、取り組む姿勢もとても意欲的で。当たり前ですが、時間に制約があったとしても、ママたちは他のグロースハッカーと同じようにプロとして仕事をされていることを改めて実感して、最初の自分の発想がいかに失礼だったか、痛感しちゃいましたね。また、ママ以外の人がターゲットの商品やサービスの改善案件にも意欲的に取り組んでくださるので、今後も活躍の幅が広がっていくのではないかと思います。

–ママたちのデザイン案には、何かママらしい特徴や傾向があるんでしょうか?

純子 情報の整理がしっかりできていて、強弱のはっきりついた案が多いと感じてますね。

泰三 確かに。ママたちは購入を検討する時にどんな情報が最も気になるかの優先順位をよく理解されていて、「どうやったら申し込みにつながるか」といった、購買に直結する動線の整理がされています。それに、デザインの雰囲気も柔らかめで、ポップな感じに仕上がるので、親しみやすさが出ています。

純子 他のグロースハッカーだと目立たせることを意識しすぎて原色を多く使ったりコピーを大きくしたりして、ぎらぎらした印象になってしまうこともあるんですが、ママは中間色などもバランスよく使っていて、とても自然に閲覧できるサイトのデザインに仕上がることが多いと思います。見た目にすごく惹きつけられる案が多いですね。

 あとは、イラストや素材を、しっかり作り込んで提案してくださることが多いです。他のグロースハッカーの場合は、細かい処理が抜けた状態で納品をされていて手直しが必要な場合もあるんですが、ママたちは、いつも丁寧に仕上げてくれますね。

ヤマハの音楽教室サイトのデザイン案

ヤマハの音楽教室サイトのデザイン案(左側がオリジナル、右側がママ制作)。ボタンやバナーを既存のものではなく一から作り込んでいる。動線が整理され、必要最低限のものだけ残して副次的な要素は折りたたむという技術的に高度なアイデアも見られ、改善率212%を叩き出した

–実際に、クライアントが求める成果も上げられているんですか。

 ええ、そこは自信を持っていいと思いますよ。2017年2月の時点で、ママグロースハッカーズのチーム全体での案件数は486本にのぼり、そのうち178本が採用に至り、勝ち案(採用されたデザインのうち、実際にサイト上でコンバージョンアップにつながったもの)も69本出ています。2016年10月時点と比較すると、この5ヶ月で投稿数も採用数も倍以上に増えているママがほとんどで、成長の勢いを感じます。

泰三 最初の期待をはるかに越える結果を出してくれてますね。

経験を積んで実践的なスキルを高め 活躍の幅を広げていってほしい

–ママグロースハッカーズが成果を発揮できている理由は、何だとお考えですか。

泰三 前にお話したような「ママの目線」が活きているのももちろんですが、ママたちの意識の高さも大きいと思います。みなさん小さいお子さんがいらっしゃって、フルタイムで働くのが難しい状況の方も多いですが、その中でもグロースハックの仕事に取り組める時間を頑張って作り出して、限りある時間の中でクオリティの高いものを納品しようという意識で取り組んでくださっています。決して「空いた時間の片手間でやる」ということではなく、プロとして真剣に仕事に取り組んでくださっていることが、サイト改善での成果にもつながっていると思います。

純子 納品後に発生する細かな修正対応も、スピーディーですよね。

泰三 そうですね。あと、ママたちのチームワークも素晴らしいと思います。今日もちょうどチャットでやり取りしていたんですが、朝11時に「ここがわからない」とママから連絡があって。こちらで技術的な解決策を示してあげるしかないかなと思ったんですが、「もう少し頑張ってみます!」と連絡があり、15時には「他のママにも手伝ってもらって、解決できました」と。スピードも組織力も、一般の制作会社に遜色ないな、と感じていたところでした。

–ママたちの仕事に対して、クライアントはどういう反応をしていますか?

純子 先日、クライアントにメディアで紹介されたママの記事を見せながら「この人が担当してるんです」と伝えたら、とても驚いていました。顔が見えるから安心だし、応援したいと言っていただきました。

泰三 私も、ママがサイト改善の担当をされていることを積極的にクライアントにも伝えるようにしています。ママの視点を活かしたいと考えているクライアントからは期待の声をいただけることも多いですし、しっかりと成果が上がっているのでとても評判がいいんです。子育てで忙しいママさんがこのクオリティのものを作っているのかと驚く方も多いですが、みなさん時間と場所に縛られないママの新しい働き方に賛同してくださっている印象です。

 クライアント側のスタンスも、有名なデザインブティックにしか発注しないということではなく、クオリティの高いものを納品していただければ当社のようなプラットフォームを活用されるケースも増えてきているので、ママがナショナルクライアントの仕事をできるチャンスは、これからも広がっていくと思います。

–今後、ママたちがどんな風に活躍していってほしいと思いますか?

 実践的なスキルを積んで、Kaizen Platform以外のフィールドでも活躍の幅を広げていっていただきたいなと思います。ママがWebの世界で価値を発揮できるチャンスは今後どんどん広がっていくと思うので、いろいろな仕事にチャレンジできると思います。

泰三 僕らがママさんに仕事を振るのが、大変になる日が来るかもしれないですね。

 いまの学習意欲と成長速度を考えれば、その可能性も十分あると思います。幅広いお仕事を経験されて、そこで得た知見をグロースハックにもフィードバックしていただけたら、僕らも心強いです。

泰三 そうやって活動の場を広げて、同じように時間に制約がある中でも専門性を発揮できる仕事がしたいと考えているママたちにとって励みになる存在になっていってほしいですね。

 Web業界でのキャリアがある人だけじゃなくて、未経験からスタートした人も成果を出せると示せれば、雇用の流動化も高まりますし、社会的にも大きな意義のあることだと感じています。

–最後に、ママたちにエールをお願いします。

泰三 仕事面では信用しているので心配ないんですが、身体を大事にしてほしいですね(笑)。いつ寝てるのかと思うくらい、頑張っているママさんが多いので。子育ても仕事もとなると自分の時間がどうしても確保しづらくなると思うので、しっかり休息をとることを忘れないでもらいたいと思っています。

–春以降は2期生も加わり、ますます強力な組織になる予定とのことで、楽しみですね。

純子 ええ。それで2期生には、いつ頃から仕事をお願いできるんですかね?

 純子さん、気が早いですね(笑) でも、我々一同、大いに期待しています!