女のマネー講座:社会保険完備でない会社での年金対策
vol.12 社会保険完備ではない会社に勤務。将来もらえる年金に影響は?
ファッション・販売兼プレス/正社員/I・Mさん(31歳)
profile 大学卒業後、理学療法士として病院に5年勤務する。ファッション・雑貨が好きで、27歳のときに、現社の販売スタッフに転職。東京23区内で一人暮らし中。
社会保険完備でない会社なので、自分で老後に備えることを始めましょう
Iさん:「勤務先が小さな会社で、社会保険が完備されていません。年金など、ほかの人より支給額が少なくなるんじゃないかと心配しています」
溝渕先生:「法人または従業員5人以上の個人事業所は、社会保険(医療保険、年金保険)を完備させる義務があり、すべての事業主は労働保険(雇用保険、労災保険)に加入する義務があります。Iさんの会社は何にも加入していません。年金がもらえるか心配されていますが、厚生年金に加入している人よりも、年金の支給額が少なくなります。会社には加入義務があるので、相談してみては?」
Iさん:「難しいとは思いますが、相談してみます。あと、産休・育休は、小さな会社でも取得できますか?」
溝渕先生:「産休・育休制度を整えることは、会社の義務。Iさんのように小さな組織で働いていても、産休・育休を取る権利はありますが、すべての会社で制度が利用されているかといえば、それはまた別ですね」
Iさん:「ちなみに、出産育児一時金(※)は会社から支給されるんですか?」
溝渕先生:「Iさんは国民健康保険なので市区町村から支給されます。支給額は1児ごとに35万円です。Iさんの心配すべきところは、年金の支給額なので、今後は貯金して、投資でお金をふやすことを考えなければいけません」
Iさん:「実は、あまりお金に執着がないんですよね」
溝渕先生:「30歳をすぎたのだし、そろそろ将来必要になるお金のことを考えてみては? おどかすわけではありませんが、老後には最低でも5000万~6000万円必要だと言われています。31歳の今から定年の60~65歳まで時間があるので、5000万円をつくることは十分可能ですが」
Iさん:「けっこうお金が必要なんですね…! お金をふやすといえば、郵便局の簡易保険(※)に加入していますが、この商品でお金をふやせますか?」
溝渕先生:「ここ何年も金利が低いので、Iさんが加入している簡易保険はふえないでしょう。保険機能があるだけです。さらに言うと、現在独身ですし、保険よりも自分に合った投資を始めるほうがこの先、Iさんのためになると思いますよ」
◆結論1 :
厚生年金保険に加入していない人は自分で年金をふやすべきだと心得て
年金には、国民全員に支払い義務がある「国民年金」を土台に、企業に勤務する人が加入する「厚生年金」、公務員の人が加入する「共済年金」が上乗せされています。Iさんの場合、厚生年金に加入していないため、年金の支給額が少なくなります。そのため、必ず貯金して、投資を始めるなど、自分で老後のお金をふやす努力が必要ですね。
◆結論2:
30歳をすぎたので、将来、必要になるお金に備えよう
お金に執着がない人も、貯金がない人も、30歳をすぎたら、老後の備えを意識し始めましょう。30歳ならば老後まで30~35年あるので、時間をかけて、ゆっくりと老後の資金(最低5000万~6000万円)をつくることができます。Iさんは、ボーナスの半分を貯金して、まずは100万円の貯金をつくり、その後、投資を始めるとよいでしょう。
マネーがどんどんわかる!基本ワード
出産育児一時金
健康保険の被保険者が出産をしたときに、1児ごとに35万円が支給される。国民健康保険の場合は、各市町村によって支給額が異なるため、事前に確認しておきたい。申請先は加入している保険の種類により異なり、社会保険事務所・会社・役所などの各窓口で行う。
(郵便局の)簡易保険
養老保険、学資保険、終身保険など、郵便局の窓口で加入できていた保険。郵政民営化を受けて、新規で加入することや、すでに契約している商品内容の大幅な変更は認められない。すでに加入している簡易生命保険については、郵便局の窓口にたずねてみよう。