突撃!ワークライフバランスの現場訪問!この会社の子連れ出勤制度がスゴイ

2015年12月25日

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結婚し、子どもを産んでも働くのは今の時代では当たり前…のはずが、いまだ完璧な解決策がないのが、子どもの預け先の問題。保育園の枠は高倍率、保育費も高額…と、預けるにも数々のハードルが立ちふさがります。社会問題ともいえるこの難問を、「子連れ出勤」を行うことで解決を試みようとしているのが、ソウ・エクスペリエンス株式会社。子どもを職場に連れてくることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。子連れ出勤を広めていくことを目的とした「『子連れ出勤』100社プロジェクト」を担当されている関口昌弘さんと、実際に子連れ出勤制度を利用されているパートタイマーの望月町子さんにお話を伺いました。

ソウ・エクスペリエンスについて

エステやレストラン、アウトドアスポーツや陶芸といった趣味体験に、豪華客船でのクルージングなど。“体験”をカタログギフトとしてプレゼントできるサービス事業を行うのが、ソウ・エクスペリエンス株式会社。カタログを作り受注発送するだけでなく、体験の仲介まで一括して管理しています。

子連れ出勤制度とは?

ビルの地下にあるオフィスに入ってみると、20人ほどのスタッフたちがパソコンに向かっています。一見するとどこにでもあるオフィスなのですが、よく見ると3歳ぐらいの女の子が! 時おり子どもの声も聞こえますが、うるさくはありません。「現在子連れ出勤をしているのは全部で9人。出勤する際には必ず子どもを連れてくるのはパートタイムの3人。残りの6人はたまに連れてくるという形ですね」(関口さん)

ソウ・エクスペリエンス株式会社は創設からちょうど10年、スタッフ総勢30名のベンチャー企業です。子連れ出勤を始めたきっかけは、まだスタッフが10名ほどしかいなかった2013年頃。「育児休暇中の女性スタッフが『家で暇なんです』と言うので、『じゃあ一度連れてきてみたら』と言ってみたんです」(関口さん)というのが最初でした。

その子は生後6カ月の赤ちゃん。おむつ替えと授乳、寝かせるときだけ仕事を離れるけれど、「それさえできれば業務上大した問題じゃないと感じました」(関口さん)。既存のスタッフが子連れで職場復帰をしてみたのがなんとなくの始まりだったのです。

制度として取り入れたのは、2014年の夏。「子連れOK」という条件を掲げてのスタッフ募集を行いました。そのときに採用された第1号スタッフが、望月町子さんでした。
出産を機にお仕事を辞めていた望月さん。出産後に復職の誘いがあったものの、子どもを預けられる保育園が見つからず断念したそう。そのため、日中に子どもと2人きりで過ごす生活に、閉塞感を感じることも多かったといいます。

「元々バリバリ働いていた人は、暇を感じてしまうんですよね。家庭に入りたい人も、もちろんいいと思うけど、働きたいという人もいるはずなので、それはもったいないですよね」(関口さん)
「働けずに困っていたときに、友人からこの会社を紹介してもらいました。子どもの預け先が見つからなくても仕事ができるだけじゃなく、先輩ママも多いのでいろいろと相談できて、育児の面でも勉強になります。この会社に入れて本当に良かったと思っています」(望月さん)

子連れ出勤制度が軌道に乗るまで

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以前から働いていたスタッフというわけではなく、初対面で、しかもよく動き回る2歳の子どもの子連れ出勤は会社にとっても初めてのこと。まずは2カ月お試しでやってみることになりました。

「実は子どもが苦手な人もいるだろう、本当は仕事の妨げになるなのではと、最初は心配でした。娘も最初は触っちゃいけないものを触ったり、デスクの上のものを落としたりとハプニングばかりで。だけど2カ月経ったとき、『何とかなりそう』って思ったんです。この2カ月で会社の方たちも慣れてくれたし、大人とふれあっていく中で、子どもも成長できるんじゃないかと感じました」(望月さん)
「オフィスが子どもに対応していなかったのもいけなかった。でもそのうちに『これは子どもが触るかもしれないから、置きっぱなしはやめよう』とか学んでいく。大人も子どもも慣れが必要なだけだったんですよね」(関口さん)

関口さんいわく、子連れ出勤を取り入れるには、社内でのコミュニケーションを密に取ることが大事だそう。子連れ出勤がスタートして少し経った後、みんなにアンケートを取ったところ、「本当は嫌がっている人もいるかもと予想していたのに、驚くことに子連れ出勤に対して否定的な意見を述べる人はひとりもいなかった。『もっとこうしたらいいのでは』とか『子どものことをもっと教えてほしい』など、ポジティブな意見が多く出たのはとても喜ばしいことでしたね」(関口さん)

一方、子連れ出勤第1号の望月さんは最初みんなに言えないことがあったと、関口さんは後になって知りました。
「望月さんはこの会社に来るまで、子どもにお菓子を食べさせていなかったそうなんです。でもスタッフたちがお菓子をあげちゃった。望月さんからすると『お菓子をあげないで』とは言いづらいですよね。今は子連れ出勤をしている人たちには、『やってほしくないこと』を言ってもらうようにしています」(関口さん)

子連れ出勤のリアル

ソウ・エクスペリエンスのオフィスをよく見ると、奥に土足禁止のエリアがあります。商品発送作業を行っているスペースであり、子どもたちのベースでもある場所。発送作業をしている大人が常にいるため、自然と子どもたちを見られる形に。ベビーシッターなどはおらず、スタッフ全員で子どもたちを見守っています。「うちの子もみんなのことが大好きで、『誰に会いたい!』とか『誰と遊びたい!』と言いながら出勤していますよ」(望月さん)

勤務時間についての規則はというと…。「バスや電車で来る場合の子連れ出勤は大変なので、出社は午前10時から10時半ぐらいと幅を持たせています。遅れるときは社内SNSに連絡をしてもらって、スタッフ全員で共有する。パートタイムの方の勤務時間は10時ぐらいから16から17時ぐらいまで。あまり厳密には決めていません」(関口さん)
スタッフとその家族みんながハッピーになることを考える。働き方に余裕を持たせることで、心の余裕もできるそうです。

子連れ出勤を社会全体に広めたい

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子連れ出勤をやってみた結果、社内スタッフにとってメリットのほうが多いことがわかった関口さんたち。このことを社外にも広めることにしました。それが、月に一度行っている見学会。希望する企業に子連れ出勤の様子を見学してもらい、意見を交わしています。目黒区のワークライフバランス推進事業者として表彰もされました。

「企業も社会の一員ということで、『子連れ出勤100社プロジェクト』というプロジェクトを掲げました。毎月の見学会には上場企業や数百人規模の企業の方も来てくれます。『子連れOKのフロアを作る』とか、『まずは決まった職種からやってみたい』など、みなさん前向きに検討していたようでしたね」(関口さん)

まとめ

待機児童などの問題で、保育園に入れられず復職ができない…子どもが少し熱を出してしまったら仕事を休まざるを得ないなど、まだまだ子どもを持つ人たちが思うように働けないことも多いのが実情です。
しかし、「子連れ出勤」であれば、保育園に預けられない場合だけ…、幼稚園が終わった午後だけ…というように、柔軟に利用することも可能。育児と仕事のどちらも犠牲にすることのない、新しい働き方のひとつといえるのではないでしょうか。
U29女子にとっても、この先の未来、選択肢のひとつになっていきそうですね。