生産性での評価制度で短い時間でもがんばりが認められる パートスタッフ中心の美容室 /有限会社ルッツ Hair Ruttu 赤塚店
ブランクが長くなればなるほど、
次の一歩を踏みだす勇気が必要になる
勤務歴約4年。4歳と6歳の子どもを持つ母親。家事のモットーは、「いかに無駄を削ることができるか」。
Love&Hospitalityをコンセプトに、都内を中心に店舗を展開しているRuttu group。会社が掲げている「愛のあるおもてなし」の言葉が示すように、温かな接客で、幅広い年齢層のお客さまから愛されているサロンです。その一つ、「Hair Ruttu 赤塚店」で、スタイリストとして働く佐藤さんは、17歳から美容業界で働いています。学生時代に通っていた美容室のスタイリストに憧れて、美容師を目指した佐藤さん。その後、いくつかのサロンを経て、4年前にパートスタッフとして同社に入社しました。そんな佐藤さんですが、入社前は、4年間ほど専業主婦を務めていたそうです。
「美容師の仕事が長かったので、最初はずっと家にいるのは合っていないかなと思っていましたが、思ったより専業主婦の生活は居心地がよく、しばらくは家事と育児に専念していました。ただ、上の子が3歳になって少し落ち着いたことで、この先踏み切る機会がなくなってしまうかもしれないと思い、復帰することを決めました」
佐藤さんは、復職したときの不安についてこのように話してくれました。
「その頃32歳だったので、結婚前に働いていた職場のような若いスタッフばかりの中で、溶け込むことはできるのか心配でした。でも、面接の時の電話対応が明るくて親しみやすい感じで、このお店の雰囲気ならわたしに合うかもしれないと思いました。近い年代のママのスタッフも多く、とても居心地がよいです」
Hair Ruttu 赤塚店では、スタイリストの指名つきで予約を受け付けるのが主流になっています。その上で、学校の行事の時などはあらかじめ休みを申請し予約受付を行わないようにし、急な子どもの体調不良の場合は、店舗にいるスタッフがお客さまに電話をし、予約の日程を変更するなどして調整を行っています。そんな環境に佐藤さんは「子どもを持つ母親も働きやすい環境です」と語ります。
現在赤塚店は、社員1名を除いて在籍しているスタッフ全員がパートとして働いています。そんな同店では他の店舗と異なり、パートスタッフの給与形態を一律の時給制ではなく、生産性(1時間あたりの売上)に応じて時給を設定する制度を採用しています。一人あたりのお客さまの対応の効率を上げたり、お客さまへのメニューのご提案を広げていくことなどが評価につながる仕組みです。
「限られた時間の中で勤務するパートスタッフにとっては、長い時間働くだけではなくて上手に時間を使う等の自分のがんばりもお給料につながるので、とてもありがたいです。仕事に対するモチベーションも高くなりました」
現在、佐藤さんは子どもの送り迎えもあるため17時までの勤務。その中で、いかに多くのお客さまに満足いただけるか日々努力しています。
「カットの技術を磨き、少しでも早くお客さまの求めている仕上がりになるよう努めています。また、お客さまとの時間は楽しくてついつい盛り上がってしまいますが、うまく接客の時間をコントロールするように心がけています。限られた時間でも最大限の仕事ができるように、できたりできなかったりを繰り返しながらも毎日挑戦しています」
また家事についても、時間の使い方に変化があったと話します。
「専業主婦だった頃とまったく同じようには家事をするのが難しくなりました。できないということに悩んだこともありましたが、最近は電子レンジを活用したり、諦めるところは諦めるようにしています(笑)。すべて完璧にしようとするのではなく、必要なことを見極めて時間を使うようになりました」
そう家庭との両立について話す佐藤さん。今後も、家庭を大切にしながら美容師として成長したいと語ってくれました。
「美容師として、10代、20代はいろいろなきっかけで環境が変わったのもあり、何かを『やりきった』という実感がなく、とても中途半端だったなと自覚しています。いまのわたしにとっては、美容師のお仕事も子育ても絶対に譲れない大切なことです。今後は、自分のペースで技術を磨きながら、美容師としても母親としても満足できる成果を残していきたいです」
パートの評価指標を“生産性”にシフトチェンジ
スキルUPとモチベーションUPを図る
勤務歴約15年。同社に入社前は理容室にて勤務。人事部長としてスタッフ採用&育成に注力しつつ、スタイリストとしてもサロンに立っている。
「佐藤さんのようにママとしてパートで働き続けたい人、店長など幹部候補となって経営にも携わりたい人……美容師の数だけ、求める働き方はあります。そのすべてを尊重して、キャリアプランを考えていけるように積極的にコミュニケーションを取っています」
そう話すのは、人事部長として新卒の求人活動からスタッフ育成、幹部候補の育成まで手がけている上妻さん。スタッフのワークとライフの両面を尊重している同社では3年ほど前より、婚活をしたいスタッフのために、勉強会などを入れずに早く退勤できる日を週に一度設けています。
「これは若いスタッフのためだけではなく、パートスタッフが気兼ねなく働けるためのフォローでもあるんです。パートスタッフの方々と面談をしていると、自分だけ早い時間に帰ってしまうことに対して、後ろめたい気持ちを持っているのがわかりました。フルタイムのスタッフも無理することなくプライベートと両立する働き方ができていれば、パートスタッフも安心できますよね」
社員1名を除いて全員がパートスタッフであることや生産性による給与制度などの特色がある赤塚店。これには、パートスタッフが最大限成果を発揮できるような環境を実現したいという思いがあります。
「当店にはアシスタントがいません。お客さまの対応はすべてスタイリストが担っています。こうすることで、スタイリスト一人一人が自分の生産性を把握することができ、『もっと短い時間でもっとお客さまに満足していただけるためにはどうしたらいいのか?』ということを考えられるようになります。その結果、時間の使い方やカットスキルが身についていきます」
赤塚店では、自分のカット料金の設定もスタッフの裁量に任せられており、サービスの質を向上して自らカット料金を高くしたパートスタッフも登場しています。生産性に着目することで、働ける時間に制約のあるスタイリストも、職務の中で成果を発揮し、評価を受けることを可能にしているのです。そんな彼女たちの努力が、若手の教育にも素晴らしい成果をもたらしていると上妻さんは話します。
「新卒など入社してまだ間もないスタッフに、『結婚しても美容師としての仕事を続けられる』『短い時間での勤務でも、スタイリストの価値を高められる』といった将来像を見せてくれていると思っています。彼女たちには、新しい美容師としての働き方のロールモデルとして、今後も活躍してほしいです」