U29(ユニーク) 女子プロジェクト

「ロールモデルがいないので不安」という人必見!あなたが求めているのはロールモデルではない!?

職場にロールモデルがいないと悩むU29女子へ

就職、結婚、出産、復職。女性の人生には分岐点がいっぱいです。

ただ、「どんな状況であっても働き続けたいとは思っているけど、職場など、身近なところに“ロールモデル”がおらず、今後自分はやっていけるのか不安……」という人は少なくないハズ。あなたも「お手本になるステキな先輩がいてくれれば、安心して同じ道を進めるのに!」と思ったことはありませんか?

今回は、かつて(株)リクルートで営業マネジャーや編集長を務め、出産後も復職して活躍、その後独立して(株)ACT3を設立した現役ワーママでもある堂薗稚子さんに、悩めるU29女子の相談に、スパッ!と答えていただきました。

ロールモデルはどう求めるべきなのか。そもそも、ロールモデルって必要……?という疑問が、読めばきっと解消されるはずです。

 


 

【お悩み相談】アラサー店長さん(27歳・販売)より

私はアパレルの小売企業に就職し、現在入社5年目です。2年目で店長に就任し、4年が経ちました。

店長になりたての頃は、売り上げ管理やアルバイトスタッフの教育などでいっぱいいっぱいでしたが、最近は周りを見られるようにもなり、今の仕事にやりがいを感じ始めています。

ただ、今の現場での将来の自分の姿を想像することができず、悩んでもいます。

今は楽しいと思えていますが、この先もそうとは限らない。何より、販売職という仕事と家庭との両立ができるんだろうか、という疑問が大きいのです。

現在同棲中の彼とは結婚を考えていて、両立できるのなら結婚後、出産後も働き続けたいとは思っています。

しかし、私の会社には店長より上のポジションは男性しかおらず、新卒入社の女性で現・ワーキングマザーという先輩は身近にいません。この会社で女性が働き続けるとはどういうことなのか、イメージできないのです。

同じ社内でも人事・企画・経理・総務などのスタッフ職なら、土日休みで勤務時間も安定しているのだろうなと気にはなっているのですが、ポストはあまりなさそうです。

ロールモデル不在のなか、これから私は何を目指してどう進めばよいのでしょうか。

 


 

ロールモデル不在だとなぜ不安になるの?

この相談者のように、ロールモデルがいないことで不安を感じている人は、結構多いのでは? まずはなぜ不安を感じるのかについて、考えてみましょう。

「割と日本の女性って、“こうあるべき”という枠や型に自分をはめることで、安心したいという心理を持っているんじゃないでしょうか」と堂薗さん。枠や型がない状態で何かをするのは、イメージできない分、不安。しかし枠や型に自分をはめ込むことで、かえって追い詰めてしまうこともあると言えそうです。

堂薗さんによれば、女性は現実的なので、成功体験の連続にしか未来を感じることができない人が多いのだそう。何かしらの成功モデルに自分を重ね合わせて、安心しながら進みたいものなのかもしれません。

 

本当はロールモデルなんていらない!

また、ロールモデルがいないと不安を口にする人は多いけれど、ロールモデルとなりうる人を紹介して欲しい!と周囲に具体的な相談をする人は、あまりいないのだとか。

「女性が“ロールモデル”と口にするとき、そこに描いているのは仕事力だけでなく、女性としての生き方やスタイル、果てはとりまく環境や条件のようなハード面まで含まれているように思います」と堂薗さん。

それらが自分にピタッとハマる人を追い求めているのだけれど、心のどこかで自分と比較してしまう部分もあるので、そこに開きがありすぎてもダメ、という難しさをはらんでいるのです。

「例えば、素晴らしく仕事ができる先輩やキレイなママ友、イケてる旦那さんとかわいい子どもがいる友人……。そういう部類の人に出会うと、ステキだなとは思いつつも、相手のキラキラ感にかえってしょんぼりすることがありますよね」と堂薗さんが言うように、女性は感受性が鋭いがゆえに、共感しながらも自分を相手に重ね合わせたり比べたりして、そこに現実を見てしまうもの。

「実家が近くて親に助けてもらえるから」「旦那さんがすごく理解のある人だし」「独身で子どもがいないから仕事に打ち込めるのよ」など、自分はできないけれどその人ができていることの理由を無理やり探して、毒づいてしまったり……。

自分が想定する完璧な人はなかなかいないものですし、仮にそういう人が現れると、今度は粗探しをしてしまうのが女子の複雑なところですね。

自分とほぼ同じ条件のロールモデルでないと、フィット感が得られず残るのはギャップだけ。でもそんな人を見つけるのは無理に近い話です。結局、お手本がいないことが不安なだけで、本当にロールモデルを求めているというわけではないのかも。だったらロールモデル探しはやめたほうがいいし、そういう人がいないと嘆くことも意味がないのではないでしょうか」

 

それでも不安なら、探すべきは“小分けのロールモデル”!

では、今回の相談者と同様の不安を感じてしまうU29女子は、どうしていけばいいのでしょうか?

堂薗さんがおすすめするのは、自分にとってしっくりとくる“完全な”ロールモデルではなく、「小分けのロールモデル」を探すこと。仕事、ライフスタイルなど、それぞれ別々にスポットを当て、その中でも細分化して、その部分のみのお手本を見つけるというやり方です。

「こういう仕事のときは、この人のこのやり方を」「あの人のあの部分は真似したい」というふうに、いろんな人のごく一部を切り取って、そこだけをお手本にすればよいのです。

それでも、どうしても“完全に近い”ロールモデルが欲しい場合は、とにかく聞く耳を持つこと、と堂薗さん。大事なのは、自分と全く同じ条件の人などいないという前提で、その人から学びたいという気持ちでコミュニケーションをとることです。

「聞く耳をちゃんと持てば、必ず得られるヒントはあるはずです。また、その場合のロールモデルは必ずしも女性ではなく、男性でもあるいは家族でもいいですね。それは“小分けのロールモデル”にしても同様です」

 

ゆるゆると川を下るようにキャリアを形成できればOK

さあ、ここでいよいよ本題。
お悩みに対する堂薗さんからのアドバイスです。

「アラサー店長さんの場合、いろいろと見えていないことが怖いんだと思います。20代後半って、それまでの自分を振り返ったときに成長できていないような気がして、おびえてしまいがちな時期。『いつの間にかこの歳になってしまったけど、何も持っていません』という気持ちになってしまう。また同時に、今後の見通しを立てたくなる年頃でもあるんですよね。

この方が素晴らしいのは、『今の仕事にやりがいを感じ始めている』『今は楽しいと思えている』というところ。『お手本が身近にいない』と嘆いていますが、これまでの先輩方はやりがいや楽しさを感じられないままに辞めていってしまったのかもしれない。そこまでたどり着けたあなたはステキです。

今楽しいと思えているのなら、続けるべき。『この先もそうとは限らない』なんて言っているけど、ずっと楽しいと思い続けていられるかもしれませんし。どっちかなんて分からない将来のために、今楽しめている仕事を捨てるという選択はないんじゃないでしょうか。今の楽しさをどんどん積み上げていけばいいし、楽しいと思えなくなったらまた考えればいい。もしかしたらそのときは別の“もっとやりたいこと”が出てきているかもしれません。

やりがいが感じられて楽しいのなら、その先のキャリアに先人がいようがいまいが、前に進めばいいだけです。

前例がいることでかえって、その人と比べて自分を卑下したり、予定通りにいかないことがあると落ち込んだり、と余計な悩みも出てくるもの。そう思うと、前に人がいないという状況も、結構悪くないものじゃないでしょうか。それぐらいの気持ちで取り組めるとベスト。ロールモデルがいないことにとらわれすぎていたけれど、根本の問題はそこではないのかも、と気づくはずです。

キャリアには“山登り型”と“川下り型”があると言われています。夢があって、それを達成するために必要なものは何かを逆算してキャリアを考えるのが、“山登り型”。昔はこれが求められていましたが、今は、夢も目標も持たないけれど目の前のことに実直に取り組み、自分がもっとも活躍できる場を探しながらキャリアを形成していく“川下り型”の時代。振り返ったときにそういう形でキャリアが積み重なっていればいいんじゃないでしょうか。

先例がないことにおびえず、かといって自分がロールモデルになるべきだなんて気負うこともせず、今やりがいを感じながら仕事ができている自分のスタンスに自信を持って、将来のためにいろいろなものを積み上げていってほしいですね」

 

“ロールモデル”について改めてかみ砕いてみると、自分が求める理想のお手本など、身近にはそうそう見つからないと気づかされます。であれば、探し求めることに無駄な時間を費やしたりせず、部分部分の見本を見つけて“いいとこ取り”をするのが賢いやり方!

あれこれ不安になってしまう年代ではあるけれど、“ロールモデルの不在”にとらわれることなく、自分らしい働き方で自信を積み上げていきたいですね。

堂薗稚子

1969年生まれ。92年上智大学卒業後、(株)リクルート入社。人材系事業の営業職を経て「就職ジャーナル」副編集長、「リクナビ派遣」編集長、カンパニーオフィサー、ダイバーシティ推進マネジャーなどを歴任。13年、 (株)ACT3設立。女性活躍支援など、企業の組織開発・人材開発にかかわる調査・企画立案、コンサルティング・研修・講演などを行う。著書に『「元・リクルート最強の母」の仕事も家庭も100%の働き方』(KADOKAWA)。二児の母。

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