スタッフ全員で一人のお客さまへ対応 予約・指名なしで主婦・主夫スタッフが助け合いながら働ける環境へ /銀河美容室 久喜青葉店

2017年02月13日

「個人で成果を出す」から「みんなで協力してサービスを提供する」へ
主婦としての復職を通じて体感した発想の転換

磯田祐子さん

プロフィール:磯田祐子さん(42歳)
勤務歴約2年。21歳から美容業界の世界に。専業主婦を経てパートスタッフとして同社に入社。現在は、週4日、9時〜16時の間で勤務。夫と2人暮らし。

埼玉県で4店舗を構えている「銀河美容室」。その一つ、久喜市にある久喜青葉店でスタイリストとして活躍している磯田さんは、パートスタッフとして勤務しています。実家が美容室を営んでいたこともあり、幼い頃から美容師という仕事を身近に感じていましたが、将来については悩んでいた時期があると言います。

「学生の頃は、美容師にも興味があったのですが、中学校の家庭科教師になりたいという思いもあり、進路について悩んでいました。そんな時、インターンとして美容室で働いていたのですが、徐々に美容師の『お客さまに喜んでいただける』ことに魅力を感じて。それで、美容師として働くことを選びました」

磯田さんが美容専門学校を卒業し、美容師として働き始めたのは21歳のとき。そこから店舗を変えながらも美容師一筋として働いていました。そして、38歳のときに結婚。結婚当初は家庭を重視したいという考えがあり、退職して専業主婦の道を選びました。

「夫も家事に専念して欲しいという考えだったので、専業主婦になったのですが、なってみると思ったより外とのつながりがなくなってしまって。働いていたときよりも体力的には楽だったのですが、精神的な疲れが大きくなってしまいました。それで、また働きたいなと思うようになったのです」

とはいえ、2年間ほど現場を離れてしまった状況で美容師として働くのは難しいと思い、決まった時間で働けるイメージのあった事務職などの求人を探していましたが、思った条件の仕事がなかなか見つかりませんでした。そんな時に出会ったのが銀河美容室でした。

磯田祐子さん2

結婚後、引っ越しもして周りに知り合いもいなく社会とのかかわりがなくなってしまうことに不安があったそう。

「ハローワークで、以前銀河美容室がパートスタッフで美容師を採用したと聞きました。それで、電話したところ『うちは主婦が多いから安心してください』と言ってもらえて、すぐに面接してもらいました」

現在は、週4日、1日5時間もしくは6時間の勤務。それでも、1日6人ほどのお客さまを担当しています。限られた時間でのお客さま対応には、当然工夫が必要になってくると磯田さんは言います。

「お客さまには、自分の勤務が何時までかを事前に伝えるようにしています。例えば、15時にお客さまが来店されてカットとカラーを頼まれた場合、2時間は必要になるため、自分はカットまでしかできないことを伝えています。ただし、お客さまに満足していただけるように、他のスタッフにその後の対応をお願いする際に、ご要望や注意点などを細かく共有するようにしています」

同店舗ではスタッフが一人でお客さまを見るのではなく、店舗スタッフ全員でお客さまに対応するという方針で運営を行っています。
「以前美容師として勤務していた頃は『美容師としてわたしのファンを一人でも多くつくらなければ』と思っていたので、最初は戸惑いがありましたが、働いているうちにみんなで協力し合ってお客さまにサービスを提供するという考え方もあるんだなと思いました。おかげで、お客さまに満足いただける仕事ができますし、家事の時間も確保できているので、助かっています」

磯田祐子さん3

定休日の日に行われている勉強会にも、積極的に参加している磯田さん。指導係も務めている。

「主婦・主夫の美容師資格保有者のスキルは大きな戦力」
予約なしの店舗運営でスタッフの時間の制約をフォロー

プロフィール:深井俊宏さん(43歳)
美容用品の販売を経て同社に。現在は、代表代行として4店舗ある店舗の運営に携わっている。

銀河美容室では、現在主婦・主夫のパートスタッフを積極的に採用しています。その理由を代表代行である深井さんに聞いてみました。
「わたしは、主婦・主夫となった美容師の方は、とても優秀な戦力だと考えています。それまでに培ったカットスキルや接客スキル、そのほか様々な経験は代えがたいものです。しかし、多くの主婦・主夫の美容師の方は、働く時間が合わないからという理由で、この仕事を諦めてしまう方が多いです。周りの美容室でもそういった話を聞く機会があり、大変もったいないことだと思いました」

しかし、実際は「美容師=主婦・主夫には難しい仕事」と思われている傾向が強いと深井さんは話します。また、専業主婦・主夫となりブランクができてしまうと、不安が大きくなかなか復職に踏み出せないことも多く、そこをいかに払拭できるかが、主婦・主夫スタッフ採用のポイントだと深井さんは考えています。

「まず、当店ではあえて予約制や指名制を採用していません。お客さまがいつでも気軽に来店できる美容室でありたいという思いもありますが、働いている主婦・主夫スタッフにもメリットがあります。予約・指名制にすると、子どもの体調不良による急な欠勤もある主婦・主夫スタッフは、予約日程を変更しなければならない等のことが発生する可能性があります。しかし当店は、その日出勤しているメンバーで協力し合って、来店されたお客さま一人一人に対応を行っています。お客さまにも負担がかからず、主婦・主夫スタッフにとっても気後れなく働ける形なのです。また、ブランクの不安を解消するために、月に一度定休日を利用して勉強会も開催しています」

全4店舗のスタッフの16人中9人が主婦のパートスタッフとして活躍しています。「お客さまも、こういった当店の特色をよく理解してくださっています。美容室としては少し珍しいかもしれないですが、開店後~昼までの時間にスタッフが多くいることを知ってくださっていて、午前中の時間に一番お客さまがいらっしゃいます。その意味では、当店のファンでいてくださっているお客さまに支えられている部分もあると思います」

そんな銀河美容室は、それぞれに働ける日数や時間帯の異なるスタッフの稼働を店舗間の調整でカバーしています。
「“美容師の仕事が好き”ということが大前提ですが、スタッフには家庭を第一にして欲しいと思っています。そのため、シフトを組む際は、まず休日希望を出してもらい、パートスタッフの休みを決めます。それで、どうしても人出が足りないときは、店舗間で行き来してもらうようにしています」

具体的には、その日の各店舗の出勤人数に応じて、『今日はA店に、明日はB店に』といった具合に、パートスタッフとアシスタントに対してスタッフが足りない店舗へのヘルプのお願いをしています。
「一人一人、家庭が違うように、『働き方』に求めるものは違うと思います。そこを理解して、今後も極力柔軟に対応できる体制を整えていきたいです」

美容室風景

同社では、70歳でも働いているスタッフがいるそう。深井さんも「長く働けるのがこの仕事の魅力です」と話す。