スペシャルインタビュー 俳優 小泉孝太郎さん

2010年08月05日

小泉孝太郎さん爽やかな好青年。そんなイメージがぴったりの小泉孝太郎さん。しかし、20代後半までは、もがき苦しみながら仕事をしていたそう。そんな苦労話から、人生最良の出会いまで知られざる一面を教えていただきました。

―――小泉さんは幼いころから俳優になりたいと思っていたそうですが、きっかけは何だったのですか?
(小泉さん)「一言でいうと、画面の向こうが気持ち良さそうだったんですよね。幼稚園のころ、映画館で『ET』を観て、ラストで大泣きしたんです。この世の中に宇宙人と出会い、自転車で空を飛ぶ…なんて世界はないだろうと子ども心にわかってはいたけど、その半面、この世界に行ってみたいとも思った。父親が現実を扱う仕事だったから、潜在意識の中で仮想の世界に憧れていたんでしょうね。家庭環境って、知らず知らずのうちに、自分の人生に影響するものだなと最近、気が付きました」

―――そして、22歳のときに俳優デビューされましたが、実際、画面の向こうの現場は気持ちの良いものでした?
(小泉さん)「生やさしいものじゃないですよ。はっきり言って芝居をなめてましたからね。台本を覚えて、現場に行って、喜怒哀楽を表現して。それくらいできるでしょ、なんて考えていたから、目の前でほかの俳優さんが演じている姿を見て『とんでもない世界に入っちゃった』と」

俳優 小泉孝太郎さん―――それであきらめてしまう人も多いと思いますが、小泉さんは10年、俳優業を続けていますよね。なぜ、続けられたのでしょう。
(小泉さん)「恐怖感や不安の中にも1日現場にいると何回か楽しい瞬間があったので、そこに希望を感じていたんですよね。すべてがダメだと思っていたら投げ出していたでしょうし、役者の仕事は辞めていたと思います。でも、22歳でデビューして、この世界にどうにかしがみついていたけど、27歳で大きな壁にぶつかった。役者という仕事には数学のような方程式があるわけではないから、人それぞれ演じ方や思い方が違う。その中で自分の方程式は何だろうと考えていたんですが、答えが出ずにいつも胸がつかえているような状態だったんです。でも、ある現場で7回連続NGを出したことがあって。テンポアップな長台詞のうえ、監督から『このタイミングで水を飲んで、この台詞で立ち上がってくれ』といろいろ指示されて、もう頭と体がいっぱいいっぱいになってしまった。そのとき、もう監督の思い通りにならなくてもいいから、自分の思うようにやってみようと、半分やけっぱちの気分で演じたら、スッと台詞が出て動けたんです。これが初めての感覚で、すごく気持ち良かったんですよ。それまでは、言われたことをミスしないようにするので精一杯で、気持ちが受身だったんでしょうね。初めて攻めの気持ちになったとき、自分の方程式が少し見えたような気がして、ここから劇的に変わった。自分が思っていることを一度壊すことは不安で怖いけど、気付いて良かったと思いますね」

―――そこから大きく変わったんですね。
(小泉さん)「もちろん、自分だけの力じゃなくて、いかりや長介さんに出会えたことはとてつもなく大きかったですね。さまざまな経験をしてきたいかりやさんが出し惜しみせず、僕にすべてを注ぎ込んでくれた。仕事の後、一緒に飲みに行って『役者にはいろいろなタイプがいるけど、今、お前は上を見すぎずにコレをしておけばいい』と教えてくれたり。でも、必ず言うのは『お前、いかりやに教えてもらってますなんて口が裂けても言うなよ。役者が役者に心構えやテクニックを教えることほど恥ずかしいものはないんだから。師匠はいかりやです、なんて言ったら俺が格好悪くなるからな』って。もう、この時点でカッコいいんですけどね(笑)。今でも、何かにぶつかると『いかりやさんだったらどうするんだろう、どう考えるんだろう』と思うくらい。本当に出会えたことに感謝しています」

俳優 小泉孝太郎さん―――今回ドラマで、教え子と恋愛関係に陥る高校教師を演じていますが、そんな難しい恋愛に燃えるタイプですか?
(小泉さん)「ホント、恋は理屈じゃないですからね。正直、30歳を超えて女子高生との恋愛なんてありえないと思っていたんですが、干支が一回りも違う福田沙紀ちゃんと話していたらすごく大人だし、ちゃんとしている。こりゃ、年なんて関係ないなって(笑)。最近思うのが、理想は持たないほうがいいですね。昔は気が強い女性が好き、なんて理想もあったんですけど、今は決め付けずにフィーリングを大事にしています。そうすると恋愛の幅も広がるし、ありえない恋が始まる可能性もあると思いますから」

●Profile
こいずみこうたろう●1978年7月10日生まれ。神奈川県出身。2002年ドラマデビュー。NHK大河ドラマ『天地人』に出演するほか、『コールセンターの恋人』で初主演を務める。俳優業だけでなく、バラエティ番組でも活躍中。

●Information
ドラマ『ヒミツの関係~先生は同居人~』ドラマ『ヒミツの関係~先生は同居人~』BeeTVで配信中
・あらすじ
高校教師の小林直樹(小泉孝太郎)はとある事情で教え子である沢村千夏(福田沙紀)と一緒に住むことに。しかし、ヒミツの同居生活を送る2人にさまざまな難題がふりかかり…。ありえないけど、一度は憧れる学園ラブコメディドラマ。

ドラマ『ヒミツの関係~先生は同居人~』脚本:荒井修子/山口あさみ
出演:小泉孝太郎、福田沙紀、佐藤江梨子、石井好則、中尾明慶ほか

インタビュー・文/中屋麻依子、撮影/八木虎造、デザイン/河村俊子(studio PAWOZ)