趣味の延長で始めたネットショップが本業に!着物ショップオーナー・梅原麻里さん「目の前のことを一生懸命やっていたら、夢の実現に向けて動けるようになった」
憧れのお仕事のリアルに迫る!輝く女子のワークスタイル
モダン着物小物「梅屋」店主 梅原麻里さん
30代で着物の世界に飛び込み、着物や和装小物のネットショップ、そしてアトリエ「梅屋」を開店した梅原麻里さん。洋のモダンさを取り入れたユニークな着物をプロデュースし、話題を呼んでいます。おしとやかな和風美人と思いきや、快活に笑い、サバサバと本音トークをするギャップが魅力の梅原さんに、夢を叶える秘訣についてお聞きしました。
着物の世界にハマってネットショップを開店
■以前から、着物のお仕事をしたいと思っていたんですか?
いえ、もともとファッションは大好きだったんですが、和服には全く縁がなかったんです。30歳ぐらいのとき、会社の先輩の影響で、着物を着るようになりました。
実はそんなにルールも厳しくなくて、自由におしゃれができることを知って、すっかりハマってしまったんです。洋服だと難しい柄と柄の組み合わせも、着物だと案外しっくりくるんですよね。帯などの小物との合わせ方によって、がらっと印象を変えられるのも楽しくて。
でも、私が「着てみたい!」と思うような着物が、なかなか見つからなくて。それが、着物の店を始めようと思ったきっかけですね。
最初は手づくりの和装小物をオークションサイトで売っていたんですが、それだとやりとりが大変なので、2010年にネットショップを開きました。
■初めは趣味の延長のような形だったんですね。
サイトに商品写真を掲載すれば開けるネットショップは、実店舗を開くよりは簡単なので、気軽な気持ちで始めたんです。
でもだんだんと着物の世界を知る中で、職人さんが減っているという現状を見聞きするようになって。それなら私自身が買いたくなるような着物や小物を作ってもらおうと、自分でデザインして、職人さんに発注することにしたんです。
とはいえ、当時はファッション・マーケティングの会社にフルタイムで勤めていて、その片手間にやっているだけで、収入はお小遣いにもならないくらいでしたね。
昔から好きなことを仕事にしたいという気持ちが強かったので、着物のほうに専念したいと思ったんですが、収入はほとんどない状況だから、悩んで悩んで……。
でも、悩んでいるだけでは何も変わらない、何かを手放さなければ、本当に欲しいものは手に入らないって思ったんです。最終的に、もう悩むのが嫌になって(笑)、2012年に退職しました。
カジュアルに楽しめる着物を広めたい
■アトリエはいつオープンしたんですか?
2015年からです。今はここで仕事をしつつ、月1回、オープン期間を設けて、お客様が直接商品を見てお買い物できるようにしたり、着付けレッスンやワークショップを開いたりしています。
あとは不定期に、ギャラリーや商業施設などでのイベント出店も行っています。より多くの新しいお客様に、梅屋を知ってもらうためです。
ネットショップ、アトリエ、イベントの3つを柱に、次はどんなことをしようか、常に考えています。開店自体は気軽にできても、継続するのは大変なことだな、とつくづく思いますね。
■毎日どんなふうにお仕事されているんですか?
9時半~18時半くらいまではアトリエで仕事をしたり、打ち合わせに出たり。帰宅して晩ごはんを食べたあと、忙しいときは家でも仕事をする、という感じですね。
お客様からのお問い合わせ対応のほか、ネットショップ用の写真撮影とか、入荷情報や商品説明の記事を書く、なども大切な仕事ですね。
あとは、着物や小物の図案・デザインを描いて職人さんに発注したり、イベントの企画を立てて打ち合わせをしたり、ブログやSNSを更新したり……と、いろいろなことをしています。
ブログでは、商品情報や告知だけでなく、プライベートで着物で出かけた話なども載せたりして、ほぼ毎日更新しています。
■ブログで、お客様から直に反響があるのは嬉しいですね。
実は、着物でアイススケートをした動画をアップしたら、それを見て、アトリエで着物を買ってくださったお客様もいたんですよ。何がきっかけになるかなんて、分からないものですね(笑)。
実際に着物で行動してみると、旅行の際はどんな帯の巻き方をすると苦しくないか、といったノウハウも蓄積されるので、そういったこともブログに書いています。
ショップやアトリエに来るお客様はコーディネートに迷われている方も多いんですが、小物の合わせ方などを提案して喜んでもらえると、やりがいがありますね。
あとは、「こういう着物が欲しかったんです!」と言ってもらえると、デザインした者としては本当に嬉しいです。なかには、普段着物は着ないのに、「これなら着たい!」と言って買ってくださる方もいたりして。
梅屋が扱う着物は、従来の着物よりは値段が手頃なものが多いので、初心者の方にもおすすめしやすいんです。着物というと敷居が高いイメージですが、実はカジュアルな感覚で着られる、ということを、多くの方に知っていただきたいな、と思っています。
「好きを仕事にする」には夢を持ち続けることが大事
■自分の好きなことを仕事にしたいと願うU29女子も多いのですが、夢を叶える秘訣はありますか?
まず、夢を持ち続ける、ということですね。もちろん、願っても叶う人と叶わない人はいると思うんですが、願うのを止めたら、絶対叶わない。夢を持つのを諦めた時点で終わってしまうんです。
あとは、何でもやってみることですね。若い方と話していると、ビジョンはあっても行動の仕方が分からないのかな、と思うことがあります。実際、私も20代の頃は悶々としていました。
でも、迷っている暇があったら行動すべき!
私もファッションの専門学校に通ったり、古着屋で販売員をしたり、ファッションとは関係ない仕事もしたり……。いろいろなことをやってきましたけど、そのときの経験は全て、今に役立っていると思います。
年齢を重ねるとだんだん、これまでやってきたことを、これからやることに応用できるようになって、動きやすくなるんです。それって、目の前のことを一生懸命やってきたからじゃないかな、と思うんですよね。
■経験が少ないとその分、不安になるのかもしれませんね。
そうですね。それに一生懸命行動していれば、後押ししてくれる人が現れるものだと思います。
もちろん、最初から助けを求めるということではないですよ。ただ、何かを手放して、必死になってやっていると、見かねた人が助けてくれるのかな、と。
私も会社を辞めて、本気さが周りにも伝わったのか、応援してもらえるようになった気がしますね。
最初は不安もありましたが、雑誌で紹介してもらえたり、大手のデパートに期間限定のポップアップストアを出す話をいただいたりと、チャンスに恵まれたので、ワクワクする気持ちの方が大きかったです。
“自分のごきげんをとる”ことが良い仕事へと繋がる
■とっても楽しそうにお仕事をされていますが、行き詰まりを感じたことはありましたか?
今は週に1回、高校のときの親友にスタッフとして働いてもらっていますが、2015年当時は、1人で全てをこなしていました。ネットショップの注文も出店イベントも増え、大忙しになってしまったんです。
朝も夜もずっと仕事をしていて、休みもなし。その疲れが出たのか、2016年に入ってからモチベーションが下がって、何かをやりたい気持ちが起きなくなってしまって。自分で始めた仕事だから、簡単に辞められるものでもないし……これはつらいな、と。
■そんな状態から、どうやって復活されたのですか?
その年の秋に1週間の出張があったんです。体力的にすごく疲れて、帰ってからずーっと眠り続けたら……急に復活しました(笑)。
強制終了したのが良かったみたいです。以前はランニングを習慣にしていたのに、忙しくなってから中断していたんですが、それをもう一度始めたのも大きかったかもしれません。もっと楽しみながら仕事をしよう、と思えるようになりました。
仕事に前のめりになりすぎていたところからいったん離れて、寝る、走る、楽しむ、と生活のベースを整えるのが大事なんだな、と実感しました。モチベーションを保つために一番大切なのは、結局、“自分のごきげんとり”なんですよね。
自分のモチベーションで仕事の成果が変わってしまうので、自分が快適に仕事できるようにコントロールすることが大事なんだと思います。
もちろん、月々の売上目標などもありますが、それを追いかけすぎると苦しくなる。楽しんでいれば数字は後からついてくる、凸凹しながらもゆるやかに上昇していけばいいって思えるようになりました。
■これからはどんなことに挑戦していきたいですか?
基本的にはひとりで仕事をしているので、ひとり分の力しか出せないんですよね。
なので、今後はより多くのスタッフに関わってもらえるように売上も増やしたいし、もっと外部の人や他の業界の人と組んだりして、チームで面白いことや新しいことをしたいな、と思っています。また、いつかはアトリエだけでなく実店舗も開きたいです。
梅原麻里
2010年にネットショップ『梅屋』をオープンし、自らプロデュースした着物や和装小物を販売。モダンで斬新なデザインの着物は、タレントが着用したり、雑誌で紹介されるなど注目を集めている。
「梅屋」 http://umeyakimono.com/
ブログ http://ameblo.jp/umemarippe/
(インタビュー/野田りえ 構成/風来堂 撮影/氏家岳寛)