県知事が妊婦に!?仕事と家庭の両立を応援する九州・山口のワーク・ライフ・バランス推進キャンペーン
「九州男児」の街から世界中に発信する「ワーク・ライフ・バランス」
「男性も女性も平等に働けて、子育てにやさしい職場づくりを」という意見から立ち上げられたこのキャンペーン。
今回は、「幸せは、家庭と仕事のバランスでできている」というキャンペーンメッセージを掲げているこの活動に焦点を当て、ワーク・ライフ・バランスの本質に迫ってみます。
家事を手伝う男性こそカッコイイ!
「九州・山口 ワーク・ライフ・バランス推進キャンペーン」はもともと、九州各県・山口県の知事と経済界のトップによる「九州地域戦略会議」から生まれたプロジェクト。
きっかけは「九州・山口地域の男性は、家事に携わる時間が全国平均より短く、妻は夫に比べると約7倍の家事を負担している」という衝撃的なデータでした。
「このデータを改善するために、もっと男性も女性も平等に仕事ができる社会にしていきたい。そうすれば少子化にもストップをかけられるのでは」というプロジェクトメンバーたちの想いから、「それにはまず、職場の男性の意識を変えていかなければ」という結論に。
チームリーダーの山口祥義佐賀県知事からも「これまでの九州男児のよくないイメージ部分を払拭していこう。仕事だけではなく子育ても楽しみ、家庭や地域の生活も大切にする……そんなイクメンを実践するのが当たり前でカッコイイこと、と思わせられるような社会に変えていこう」という意見が出されました。
こうして9県と経済界の合同での推進キャンペーンが始まったのです。
キャンペーンの一環としてまず展開されたのは、「ご当地男(ダン)ディ」というユニークなネーミングのもの。これは各県の県知事と経済界のトップが、「○○県男(ダン)ディ」を名乗って、育児や家事を楽しみながら仕事と両立する、といった内容の宣言を行うというものです。
佐賀県知事は「育児休暇を取りました。『男はこうするもんだ、こうしないもんだ』という“もんだ症候群”を打ち破っていきます」と宣言。
村岡嗣政山口県知事が「イクメンとの料理教室を開き、娘ふたりと参加して楽しく料理を学んでいます」と報告すると、小川洋福岡県知事も「結婚当初から台所に立っています。家事は工夫次第で楽しく面白いものになるので、皆さんもぜひ」と呼びかけました。
動画を見るとそれぞれの個性が伝わってきて、親近感が湧いてきます。
現役の県知事がなんと、動画でバーチャル妊婦体験!
身近なテーマで楽しく呼びかける男(ダン)ディたちの宣言を活かして、さらに今後につなげていこう、ということで次に作られたのは、3つの動画。
一つめは、3人の県知事が妊婦ジャケットを着用して疑似体験をする「知事が妊婦に」。
二つめは、会社員男性が日ごろ家のことを任せっぱなしで申し訳ないという気持ちを込めて、妻と娘のためにお弁当を作る「ごめんね弁当」。
三つめは、企業の社長が社員に対して、定時退社で家族との時間を作るよう促す「NO残業社長!」。
とりわけ、佐賀・宮崎・山口の現役知事が、7.3kg(妊娠7か月相当)の妊婦ジャケットを着けて出演している「知事が妊婦に」の動画は各地でかなり話題に。地方局だけでなくキー局の報道番組でも取り上げられ、ネットニュースなど各種メディアを賑わせました。
http://www.kyushu-yamaguchi-wlb.com/
さらにはイギリスの大手新聞『デイリー・テレグラフ』の公式サイトやアメリカ最大の老舗新聞『ニューヨーク・ポスト』のフェイスブックなど、全10か国の35サイトで動画が紹介されました。中国のSNSサイト「ウェイボー」でも「すごい!」と話題になるなど、その評判はグローバルに拡大。世界中で話題になりました。
3人の知事が疑似体験をしたのは、階段を下りる、スーパーでしゃがんで下段の商品を取る、椅子に座って靴下をはく、車に乗り込む、重い荷物を持って歩く、掃除機をかけるといった日常的な行為。
3人ともジャケットを着けた瞬間、「重い」の一言。河野俊嗣宮崎県知事は「肩と腰への負担にびっくり。自分が経験したのはたった数時間でしたが、実際の妊婦さんはこの状態が10か月も続くんだと思うと、あらためて敬服。妊婦さんたちにももっと気を配らないと、と実感しました」と感嘆しきり。
山口県知事は「靴下をはくのに一苦労。階段も足元が見えないので大変危険。妻もこうやって何か月もこの状態でやっていたのかと思うと感謝の気持ちでいっぱいになりました」、佐賀県知事は「子育て支援についてはいろいろ考えますが、妊娠中というのが子育ての第一歩であり、妊婦さんの時にどう過ごせるかが極めて重要だと認識できました」と、身をもって体験したことの大きさを口にしました。
ワーク・ライフ・バランスの大切さを、今一度考えてみる
「知事が妊婦に」の動画のすさまじい反響。その要因は、「現役知事が出演」というユニークさだけではありません。妊婦さんってこんなに大変なんだという衝撃が、日常の行動を通してリアルに伝わったからではないでしょうか。
さらに「亭主関白」「九州男児」といったイメージの強い九州地方からこのような取り組みが生まれたことの価値は大きく、より高いメッセージ効果があったと思われます。「女性が活躍できる社会」の今後の広がりに、きっとインパクトを与えられたはず。
妊婦さんとしての大変さや家事と仕事を両立する女性の忙しさは、決して当たり前のことではなく、周囲の理解と協力が不可欠です。女性が働きやすく、いきいきできる社会は、ワーク・ライフ・バランスに関心を持つ人を増やすことから始まるのかもしれません。
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(取材・監修協力)
宮崎県商工観光労働部雇用労働政策課