成長著しいママたちの、次なるチャレンジ!自分なりに読み解いた、Web課題発表をレポート
※1グロースハッカー……Webサイトの改善を通じて、ビジネスの成長を加速させる人のこと。
今回の課題は、Logista株式会社が出版した夫婦会議ツール「夫婦で産後をデザインする 世帯経営ノート」を紹介するLP(※2)の制作。世帯経営ノートとは、子育てを前提とした家族計画を考えるための、書き込み式のノートです。夫婦で産後の働き方や暮し方について「夫婦会議」を進めていけるよう設計されています。このサービスを立ち上げたLogistaのCEO長廣百合子さん(妻)・COO遥さん(夫)は、実体験のもと、子どもにとってより良い家庭環境を創り出せる夫婦であるために、このツールがどうしても必要だったと語ります。
「いわゆる『産後クライシス』によって、うちの場合は出産から10か月後には離婚の危機にまで直面してしまいました。産後に夫婦間の関係が不安定になるのはどの家庭でもよくあることですが、その時にコミュニケーションを可視化し、一歩踏み込んだ対話ができるような道具があれば、危機も未然に防げたのではないか。そんな思いで、このノートを作りました」
この試みはメディアでも取り上げられ、初版の千冊はすぐに完売。今年の1月に改訂版を出版し、さらに部数を伸ばしているといいます。
「課題の説明を受けた時、出産後のことを思い出して複雑な気持ちになりました」と語るママもいたほど、今回のテーマはママにとって身近な問題。だから、商品のターゲットとなる人たちの心へまっすぐ届くLPがきっと作れるはずです。
※2 LP……ランディングページの略。ユーザーが最初に訪問するページであり、このページの精度が情報伝達や商品の売り上げを大きく左右する。
ママの実体験を交えた案に共感!
いよいよプレゼンがスタート。一人3分という短い持ち時間で、自分の考えたコンセプトから実際のデザイン、工夫した点などをプレゼンテーションしていきます。マイクを持って人前で話すことに慣れていないママも多いため、緊張感が漲っていますが、提案の内容はどれも充実したもの。仮想ターゲットとなるペルソナの設定から、それをもとにした仮説の立案、デザインへの落とし込み、実装と、制作工程はすでにプロと同じ。さらに、ママがじっくりと時間をかけて、今回の課題に向き合っていた様子がよくわかる案が、さまざまに提案されました。
「夫婦会議を始めようというメッセージは、私には少しハードルが高いかなと感じてしまって。必要な情報やボタンを配して購入へと結びつけるコンバージョンエリアの前後に説明の文章を入れて、始めるハードルを下げ、意識が高くない人にも受け入れられやすくしました」
「私が考えたコンセプトは、言葉にできない思いを伝えること。だから文字を使わずに、まずは色や写真でユーザーのモヤモヤした気持ちを表現しました。ボタンのデザインが水彩画風になっているのも、淡い心象をイメージしたからです」
「本来はノートを販売するのが目的のページなので、売る気満々のデザインでもいいと思うんですが、今回は心の問題を扱っているので、まずは見た人の共感を得ることが先決だと思いました。だから、商品自体のアピールはあえて控えめにしています」
中には、実体験を交えたこんな案も。
「私は産後クライシスも経験しましたし、その後離婚もしています。当時のことを思い返すと、いつも悩んでいて将来を考える余裕もありませんでした。だから、その時の私に向けて、こんなノートがあるんだということをハッと気づかせられるような構成とデザインにしてみました」
プレゼンのあとは、株式会社サイドビジョンの代表で、講座の講師も務める北古賀紀行先生から一人ひとりに講評がありました。
「ファーストビューで何を言いたいのかが、まだ整理されていない印象です。ここでほぼ全部のことを伝えるつもりで、作り込みんでみましょう」
「Webは見る人の環境によって見え方が違うので、あまり微妙な色づかいは避けたほうが無難です」
「縦横の比率に気を使ってみましょう。人間の目は不思議なもので、1ピクセルぐらいの誤差でも、それを違和感として感じますから」
さらに北古賀先生からは、プレゼンそのものに対するアドバイスも。
「話す内容をきっちり用意しすぎると、逆に緊張して飛んでしまった時に何も出てこなくなっちゃうんです。用意するのは話す項目にとどめて、あとはその場に慣れることを意識しましょう」
このように、ママたち一人ひとりに細かいフィードバックがあることによって、単なる課題発表ではなく、次の成長の糧とすることができます。
すべてのプレゼンを終え、今回のクライアントであるLogistaの長廣さんご夫妻からも総評がありました。
「同じ案が一つもなく、皆さんが貴重な時間を使って、考えてくださったことにとても感激しました。私たちも、ノートを作って情報を発信する側に立つと、ついついユーザーの気持ちを忘れがちになってしまうことがあります。今回のプレゼンは、そんなユーザー目線から情報を整理していただいた案が多く、見た人にとって、とてもわかりやすいものになっている印象です」
「ある方はコンセプト、ある方は見せ方、ある方はライティングと、それぞれの強みを特に感じたプレゼンでした。基礎的な技術はもちろん、ご自分の強みをさらに磨いていってほしいと思います」
次回の課題は、Logistaが運営するWebサイト「産後夫婦ナビ」のデザイン提案。Logistaとの取り組みは、まだまだ続きます。長廣さんご夫妻も、今回の課題でママたちの実力や課題に取り組む真摯な姿勢を知り、今後の展開をさらに期待している様子でした。
さて、課題発表を無事終えたママにも、感想を聞いてみましょう。
私が楽しそうにしているから、家庭も明るくなりました
昨年4月に、夫の転勤に伴い福岡に戻ってきた渡辺さん。それまでは10年以上東京に住み、子どものPTAやクラブチームの手伝いなどで、毎日慌ただしい日々を過ごしていたと言います。
「東京では、子育てがすべてといってもいい生活だったので、引越しの時はすべてを置いていくような喪失感がありました。だから新しい街で、何か打ち込めるものが必要だと思ったんです」
学校や地域の活動で、常日頃からママたちの企画力や実行力に驚いていた渡辺さんは、この講座を見つけて即座に申し込んだそう。実は渡辺さん、新しい環境に順応していく夫や必死で新しい生活になじもうと頑張る子どもたちの様子を見て、少し焦りも感じていたんだとか。
「ある時、子どもに言われちゃったんですよ。お母さんはいつも家にいて、ラクでいいねって。それで私も負けられないって思ったんです」
しかし、もとは銀行員だった渡辺さんにとって、グロースハックはもちろん、Webもデザインもまったく未経験の分野。戸惑いはなかったのでしょうか?
「もちろん最初のうちは戸惑いもありましたし、今でもついていくのに必死。それでも一ヶ月前の自分と今の自分は全然違うので、毎日成長を実感できて楽しいですね」
子育ては、子どもがグングン成長していく過程を隣で感じられる喜びがあります。そしてこの講座は、同じ目的に向かって頑張れる仲間と出会い、切磋琢磨することで、ママ自身が自分の成長を実感できる貴重な機会でもあります。
「私が楽しそうにしているからか、家の中の雰囲気も少し明るくなったように感じてます。ひとりでプレゼンの練習をしていたら、『僕が聞いててあげようか?』なんて子どもが声をかけてくれたりして。家族の理解があるから、前向きに取り組めるのかもしれませんね」
渡辺さんは、この講座で身につけたスキルを活かして、今後はどんな風に生活を送っていきたいのでしょうか。
「私はあくまで家庭が第一だと考えているので、家庭に支障をきたすような働き方はしたくないと思っています。それを前提に、講座で学んだことを活かして、自分がどこまでできるかチャレンジしていきたいですね」
さて次回は、3月に行われるWeb修了課題発表をレポート。ママたちが楽しみながらも着実に成長していく様子を、さらにお伝えしていきます。
●参考:【夫婦会議ツール】夫婦で産後をデザインする「世帯経営ノート」