今の働き方こそ、私の理想形!Webを通じて、熊本からママたちを勇気づけたい
ママたちのリアルライフ&ワークスタイル
vol.3:ママグロースハッカーズ1期生・牧本玲子さん
仕事と子育てが両立できずに味わった
大きな挫折感
ママグロースハッカーズ1期生の牧本玲子さんは、14歳の男の子のママ。現在は熊本市で暮らしている。大阪府出身で、大阪の大学を卒業後、22歳で就職し大手家電メーカーのプログラマーとなった。
「プログラマーが何をするのかもわからないまま入社したんですが、私には向いていたんでしょうね。パズルを解いていくような面白さに夢中になって、熱を上げて仕事に打ち込みました」
当時玲子さんが担当したのは、PCが個人の間で爆発的に普及するきっかけとなったアップルコンピュータ「iMac※」に搭載された、CD-ROMドライブ導入プログラム。スティーブ・ジョブズの自伝にも出てくるほど「iMac」のキモとなった部分で、やりがいも大きかった。玲子さんはその後愛媛に転勤になり、29歳で結婚。退職して専業主婦になったが、半年でその生活が物足りなくなってしまったという。
「働いてみて、やりがいのある仕事が自分にもできることがわかったので、家での時間が退屈で仕方なかったんです。女性はもっと社会進出すべきとか、そういう強い信念があったわけではありませんが、純粋に仕事が楽しかったのでもっと続けたい、そんな気持ちでした」
愛媛でプログラマーの仕事を探し、別の会社で働き始めた玲子さん。子どもが生まれて1年間の育休を取得した後すぐに職場復帰をしたが、その頃から仕事が特に忙しくなり残業をする日が続いた。仕事ができるようになるほど期待も大きくなり、任される責任もプレッシャーも増える。17時までの時短勤務だったはずが18時、19時と伸びていき、それでも終わらずに後輩に仕事を任せて、お迎えのために保育園へと駆け込む日々が続いた。
ある日、いつものように慌てて保育園へお迎えに行き、園児の部屋の電気が消えている様子にハッとした玲子さん。我が子を探し、職員室の一角に先生と一緒にポツンと座っていた姿を見つけた時、もう今の働き方は続けられないと感じ、会社を退職することにした。初めての、大きな挫折だった。
「社内でも保育園でも迷惑をかけ、私は何をやっているんだろうって思ってしまって。主人は仕事で帰りが遅く、子育てを手伝ってくれる人も近くにいなかったので、精神的にも追い詰められて。プツンと糸が切れたようになってしまったんだと思います」
玲子さんはその後5年間、仕事をせずに子育てに専念することになる。旦那さんの転勤で2007年に熊本へと転居し、子どもも小学校3年になって子育てが落ち着き始めた頃、ようやく働くことを前向きに考えられるようになってきた。
以前のように長時間勤務で子育てと両立できなくなることがないように、勤務時間が決まっていた契約社員の仕事を選んだ。新しく入った会社ではWebサイトのデータ分析を担当したが、この会社では地域のブログサイトも運営しており、玲子さんも少しずつWebサイトの仕事に興味を持ち始めた。そのうち自社のサイト内のコンテンツ運用も任されるようになり、ターゲットユーザーの興味を惹くコンテンツを充実させたり、サイト改善によってコンバージョン率を上げたりして運用益が出るところまで成長させることができた。
「プログラミングはこれまでもやってきましたが、Webはデザイナーの世界で、私は苦手分野だと思い込んでいました。でもサイトを立て直して実績を残せたことで、自信を持てるようになりました」
しかしその後、会社の吸収合併と事業再編により契約が途中解除となってしまい、次にどのような仕事をしようか悩んでいた頃、知り合いの紹介で偶然知ったのがグロースハッカーの仕事だった。もともと新しい仕事や働き方を覚えていくのが好きだった玲子さんは、すぐに興味を持った。
「会社を辞めた時は、フリーランスとしてやっていくことも考えました。でも地方でのWebのフリーランスは大都市と比較してマーケットも小さく、専門性を追求する世界で勝負できる仕事がなかなか見つかりませんでした。でも、グロースハッカーの仕事なら、自分のスキルを磨きながらわたしの希望する働き方ができると感じたんです」
熊本から1時間半かけて、福岡でのWebグロースハッカー養成講座に通うと相談した時、旦那さんも息子さんもすぐに応援してくれたという。「頑固者のママが一度やると決めたら、僕たちがなんと言ってもやるでしょ」。そう言われたと照れる玲子さん。家族の本心はきっと、これまで献身的に子育てをしてきたママに、再びやりがいのある仕事のチャンスを掴んでもらいたかったに違いない。
ママたちが感じている
ITへの苦手意識をなくしたい
座学と課題に追われて大変だった講座も終わりを迎え、いよいよ本格的にグロースハッカーとして活動しようという矢先の2016年4月、玲子さんは熊本で地震に見舞われた。自宅マンションは半壊し、しばらくは仕事が手につかない状態だった。しかし、マンションの修繕スケジュールも決まり、少しずつ復興に向けて動き出す中、玲子さんを頼りに1本の電話が鳴った。熊本でWebサイトのコーディングができる人を探しているという。気落ちしてばかりもいられないと考えた玲子さんは、その仕事を手伝うことに。すると、グロースハッカーの活動にも自然と意欲が湧いてくるようになった。
デジタルハリウッドSTUDIO福岡の校長の励ましや、メンバーがわざわざ熊本までお見舞いに来てくれたことにも心を動かされ、「このメンバーと一緒に働きたい」という気持ちが湧いてきた玲子さん。2016年10月より、あらためてママグロースハッカーズにジョインし、活動を再開した。
玲子さんは、毎朝だいたい7時頃に起床。8時前に子供が学校に行くと、掃除や片付けなど家事を済ませて10時から仕事開始。お昼に休憩し、16時ぐらいに子供が帰ってくるまでは、再びPCと向かい合う。息子さんはすでに中学生のため、手のかかる時期も過ぎて、仕事にも集中しやすい環境ができている。グロースハッカーの仕事は震災をはさんで半年ほどのブランクがあったため、他のメンバーほどにはまだ案件数をこなせていない状況だが、飲み込みは早い玲子さん。ITへの苦手意識もないため、今後の伸びしろは大きい。現在は月に10万円ほどの収入だが、当面は額にはこだわらず、スキルを伸ばすことを目標にしているという。
「私はもともとプログラマーで、アクセス解析などの経験があるので、オリエンシート自体を分析して、どこを強化したら数字が上がるのかを客観的に把握するのは割と得意です。一方で、デザインなどクリエイティブ要素の作り込みには課題が残ります。今は、一つひとつの案を大切にし、勝率(採用されたデザインのうち、実際にサイト上でコンバージョンアップにつながったものの割合)を上げることを目標に頑張っています」
玲子さんは現在、ママグロースハッカーズの活動の他、ボランティアとして震災の復興支援販売サイトの制作も手がけている。これは、熊本で起業している女性たちが中心となって立ち上げた、熊本産の材料を使った食材や工芸品を販売するサイト。ここでも、Webグロースハッカー養成講座で学んだことが活かされている。
再開したグロースハッカーの仕事に加え、震災ボランティアのプロジェクトもあり、玲子さんは忙しい日々を送っている。それでも、これまで働いてきたどの働き方よりも、自分にぴったり合っていると感じ、前向きな充実感を感じているという。
「正社員から始まって、これまでに契約、派遣、パートとあらゆる雇用形態で働いてきましたが、家にいながらも専門性の高い仕事ができる今の働き方が、私の理想形ですね。仕事をしながら、家族のためにおでんを煮込み、味のしゅんでる(染み込んでいる)大根を食べていると、幸せを実感します」
だからこそ、玲子さんは子育て中の他のママたちにも、こんな働き方があることを伝えたいという。
「グロースハッカーの仕事に必要なのは、きちんと日々を生活している生活者の視点なので、ママは本来向いていると思います。でも、ママはITに苦手意識があって怖いと思っている人がとても多くて。そこを私がうまく橋渡しできたらいいなと思っています」
長いビジネスキャリアの中で、子育てと仕事を両立させていくのがいかに大変か、身をもって学んできた玲子さん。グロースハッカーという働き方を手に入れたことによって、新しい道が開け始めている。少しずつ復興が進んでいる熊本で、玲子さんがママたちと一緒に展開していく活動は、きっとこれからのママの働き方の新しいモデルとなっていくだろう。
※「iMac」 は、Apple Inc.の商標です。
Mama Growth Hackerz(ママグロースハッカーズ)とは
子育てママの目線を生かしたリサーチ・企画・デザイン・運用等の全てをワンストップで対応できる日本初・ママだけのグロースハッカー集団です。ママ向けWebグロースハッカー養成講座の修了生が中心となって活動しています。
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