60日間の効果は? グロースハッカーの卵12人 “ママ向け”講座のプレゼン風景をレポート

2015年11月25日
モダンなカフェのような空間で、Webデザインやコーディングを学べる「デジタルハリウッド福岡校」。開設17年で初となる、「ママ向けWebグロースハッカー養成講座(7ヶ月間)」を2015年9月にスタートした。入学から2カ月目。これまでの成果の集大成とも言えるプレゼンで、受講生12人は講師の予想をはるかに上回る実力を披露する。“ママだからうまくいく”、子育て中の女性がグロースハッカーで活かせる能力とは?
養成講座受講生

12名の受講生のそれぞれがコンセプトにもとづいてデザイン案を発表。講師やリクルートジョブズの担当者からはどれも高い評価を受けた。

全員が初心者。Webウェブ業界に飛び込んだママたち

ひとり、またひとりと増えていくセミナールームは、賑やかな声であふれていく。
「緊張する……!」「不安だな~」。切羽詰まったセリフとは裏腹に、彼女たちの表情は明るい。後ろを向いておしゃべりしたり、身を乗り出して隣の列に声をかけたり……。和気あいあいとした雰囲気だ。

ここに集まる12人は「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」の1期生。年齢は20代~40代と幅広く、前職も事務職、エンジニア、販売員、保育士、ベビーマッサージ師、エステティシャンなどさまざま。年齢も経歴もばらばらの彼女たちの共通点は、“子育て中”という点だ。

グロースハッカーという言葉にピンと来ない人も多いかもしれないが、端的に言えばユーザーの声やマーケティングデータを分析し、サービスや商品、Webサイトなどに反映して価値を高める仕事のこと。ユーザー目線に立った改善を行うことで、ユーザー数や売上の向上を目指す。たとえばWebサイトなら、ボタンの配置や色を変えてユーザーがより使いやすいデザインを提案する。

この日は入学から2カ月で学んだ知識を活かした制作発表。課題はリクルートジョブズが運営するアパレル・コスメ販売に特化した求人サイト「とらばーゆFashion」の広告制作だ。今回の課題のように、紙媒体の広告を提案してより多くのユーザーを獲得することもグロースハッカーの仕事のひとつ。写真・画像を加工する「フォトショップ」と、文字や絵のレイアウトに適した「イラストレーター」、2つのソフトで作った広告案を発表する。

フォトショップとイラストレーターと言えば、プロのデザイナーも使うソフト。彼女たちの半数以上は2カ月前までどちらも未経験で、経験者であっても10年以上のブランクがある状態。当然、誰一人として広告を作ったことはなく、グロースハックに関しても全員が初心者だ。それどころか、この講座が始まる前まで、彼女たちがパソコンを触るのはインターネット検索やネットショッピングくらいだったという。

この講座は毎週水曜日と木曜日の10時30分~13時に行われる授業と、パソコンで映像を見ながらソフトの操作を覚える150時間のe-ラーニングが基本構成。育児の合間にまとまった時間を取るのは難しいとはいえ、自宅学習も可能なのでマイペースで進められる。わからないことがあれば講師に個別指導を頼むか、受講生同士で教え合うことで理解を深めたという。その結果、2カ月という短期間でデザインを発表するまでの実力を身につけたのだ。

初めてのプレゼン。なのに、すでにプロの視点!

10時30分。校長・高橋政俊さんの「みなさん、昨日は眠れましたか?」という呼びかけでプレゼンが始まった。発表の順番は事前に抽選で決められている。ひとり5分の持ち時間でデザインの意図、訴求ポイントなどを解説し、発表後に講師やリクルートジョブズ担当者から講評を受ける。

養成講座プレゼン風景

受講生一人ひとりがプレゼンを行う。ターゲットとなるユーザー、クライアントの意向も考慮した発表が次々と行われる。

トップバッターが登壇すると、周囲から拍手が起こった。緊張に身を固めたグロースハッカーの卵はマイクを持ち、スクリーンに資料を映した。プレゼンテーションは自分の作品をお披露目するだけではない。「なぜこの形にしたのか」「なぜこの色を使ったのか」「なぜこのフォントを選んだのか」といったことまで解説し、デザインに説得力を持たせるのだ。「なんとなくかっこいいから」ではクライアントに採用されない。「グロースハッカー養成講座」ではソフトの使い方だけでなく、こういったプレゼンテクニックや広告制作のノウハウなど、プロとして独り立ちするために必要な技術も教えている。
その学習がすでに身に付いているのだろう。表情は若干固いものの、受講生たちは「なぜ自分がそのデザインを作ったのか」という根拠を淀みなく話している。
「アパレル業界で働く友人にアンケートを取りました」
「その結果、転職をするときに重視するポイントはこれだと分かりました」
「だから、このデザインではここをポイントにしています」
実際に見聞きしたことや具体的なデータからコンセプトを導き出し、説得力のあるデザインに仕上げているのだ。

ターゲットは「毎日の飲み会などに流されがちな24歳」?

もうひとつ、広告制作に欠かせないプロの考え方を彼女たちはすでに習得していた。それはほとんどの受講生がプレゼンの中で語っていた、「ペルソナ」という単語に表れている。「ペルソナ」とは、企業が製品やサービスを提供する際に設定する、メインターゲットとなるユーザーモデルである。その人物に向けてデザインやキャッチコピーを作ることで、訴求力が強く、よりメッセージが伝わりやすいものを作ることができる。受講生はそれぞれが考える「ペルソナ」を名前、年齢、職種、性格、趣味、家族構成まで、まるで実在する人物であるかのように詳しく描写する。

たとえば、
「上昇志向を持っているものの、毎日の飲み会などに流されがちな24歳の女性」
「結婚後も働きたい堅実派。30歳までに仕事でステップアップしたいと考えている」
「SNS好きで、ツイッターでは●●さん(タレントの名前)をフォロー」
など、キャラクターを細かく設定。完成した「ペルソナ」のイメージから、悩みや課題を予測する。
「この人の悩みは人間関係」「給料を上げたい」「スキルアップしたい」……。それを解決するような言葉、写真、デザインを反映した彼女らの作品からは、確固たるターゲットが見て取れた。

ときには居残り勉強も。チームワークで壁を突破!

発表も中盤に差し掛かったころ、とりわけ大きな拍手で迎えられる女性がいた。21歳で最年少のTさんだ。仕事と育児に追われ、学習時間の短い彼女は周囲に遅れをとっていた。授業が終わったらすぐに仕事へ向かい、子どものお迎えや家事を済ませて自宅で勉強……。ハードな日々の中、必死でついていこうとするが、分からないことばかりでうまくいかない。

そんな彼女を救ってくれたのは、ベテランの講師陣だけではなかった。高橋校長は、授業の後でも他の受講生たちが居残りをして、彼女をフォローする姿をよく見かけたという。Tさんのプレゼンは資料の準備不足が多少あったものの、完成した作品は周囲に引けを取らない見事なもの。提出期限の前日18時ぎりぎりまで粘り、周囲に支えられながら仕上げたという。発表が終わると教室には温かい拍手の音が響いていた。

彼女たちに起きた変化。5カ月後にはプロデビューを確信

この2カ月間、受講生の成長を間近で見ていた高橋校長はこう語る。
「みなさん、ここに来るまではそれぞれがひとりで戦っていました。それが『グロースハッカーになる』という同じ目標を持った仲間と出会い、支え合いながら努力しています。初めは育児や家事との両立ができるか、授業についていけるかという不安を抱えていましたが、今では『自分の手で未来を勝ち取る』という強い意志と、それだけの力を身につけています」

養成講座高橋校長

この2カ月間、受講生の成長を見守ってきた高橋校長。夢はグロースハッカーのママたちと共に、家庭・育児と仕事を両立した「ママが日本一働きやすい会社」を作ること。

講座は残り5カ月間。卒業後はグロースハッカーとして働いていくこととなる。フリーランスという道もあれば、企業に所属する道もある。グロースハッカーは今や、多くの企業に求められる存在。実力を身につければさまざまな道を切り拓くことが可能だ。「彼女たちママのすごいところは、『マルチタスク』の能力です。子育ても家事もすべてが同時進行。それをすでに実行してきたからこそ身についている力があるんです。グロースハッカーは複数の案件を同時に進める仕事です。そこが彼女たちの強みになります」。来春、日本中のママに新たな希望を拓く12名のグロースハッカーが誕生する。