女性がより活躍できる社会を目指す/一般社団法人・営業部女子課の会 代表理事 太田彩子さん

2015年08月18日

営業職の女性が会社を超えてつながれる場を作り、女性がより活躍できる社会を目指す/一般社団法人・営業部女子課の会 代表理事 太田彩子さん【私の仕事Lifeの転機】

「かしこカワイイ」女性を目指そう! そんな合い言葉に共感した営業職女性が集う「営業部女子課」。2009年の立ち上げ以来、全国に23支局、約2800人(2015年7月現在)のメンバー数を誇るコミュニティに成長し、2014年には手帳もプロデュースして好評だ。主宰者の太田さんはなぜ同会を立ち上げ、何を目指してきたのか。その思いを聞いた。
main

太田彩子(おおたあやこ)/1975年、神奈川県生まれ。早稲田大学法学部3年時に妊娠し、出産。リクルート・ホットペッパー編集部にて営業職として活躍し、社内MVP制度にて複数回表彰を受ける。その後独立、主に女性の営業職の活躍支援に携わり、のべ45,000人以上を支援した。09年営業女子を応援するコミュニティ「営業部女子課」を設立し、13年に社団法人化。14年9月よりプロモーショナルマーケティングを主に行う株式会社CDG取締役。代表著書に「1億売るオンナの8つの習慣」や「売れる女性の営業力」などがある。

営業の仕事を通して働く自信がつき、プライベートでも元気になっていった

「これからは女性の時代。あなたも自分の足で立って商売を始めなさい」———学生時代に事業家の叔母にかけられた言葉がずっと心の片隅にあったという太田さん。叔母の自立した姿に憧れたが、大学3年生で突然の妊娠、結婚。20万人に1人という難病を患っていた息子さんを抱えて就職活動もままならず、大学卒業後は専業主婦に。社会とのつながりを感じられず、「こんなはずじゃなかった」という思いから引きこもった。
「23歳の時に『自分を変えよう』一念発起して就職先を探しましたが、何のスキルも経験もなく、病気の息子を抱えた私を雇ってくれる会社はなかなか見つからなくて。ようやくリクルートの営業職に採用されたものの、成果が出せず半年で退社。自信をますます失いました」
その後、「そうはいっても、子どもを養わなければ」という一心で25歳のときに再入社。創刊したばかりのフリーペーパーの広告営業を担当してがむしゃらに働いた。
「再入社して半年間は、1日50件訪問しても契約ゼロ。『やはり私に営業は向いていない』と毎日のように泣いていました。それでも、時間をかけてお客さまとの信頼関係を築くうちに、少しずつ営業成績が上がり、自信がついたんでしょうね。プライベートでも元気を取り戻していきました」

参加者5人で「営業部女子課」の活動をスタート。戦略らしきものは何もなかった

太田さんの仕事かばんの中身。「営業部女子課」でプロデュースした手帳は「目標・結果シート」「やりたいことリスト」などのリストや読み物も充実しており、個人的にも愛用している。

太田さんの仕事かばんの中身。「営業部女子課」でプロデュースした手帳は「目標・結果シート」「やりたいことリスト」などのリストや読み物も充実しており、個人的にも愛用している。

営業職として社内表彰されるうちに、自ら働き、稼ぐことへの意欲が高まり、思い出したのが事業家の叔母の姿だ。「社内のMVP制度に3度入賞したら、独立しよう」と目標を定め、29歳で女性営業職の人材育成を行う会社を設立した。
「会社員時代に営業職として後輩の指導を経験して、人が成長して輝いていく瞬間に立ち合う喜びを感じ、この道で行こうと決めました。私にとって、自ら稼ぐことで得られる自由を実感させてくれたのが営業という仕事。スキルも経験もない自分が、営業という未経験でもゼロからスタートできて、働く喜びを感じられたこの仕事を社会に正しく伝えたい、という思いが根底にあったので、女性営業職に特化したんです」
さまざまな企業を訪れる中で切実に感じたのは、女性営業職が生き生きと長く働ける環境が社会にはまだ整っていないということだった。
「私自身が営業を経験した広告営業の世界は女性が多かったのですが、独立してさまざまな業種の営業部にうかがうと、100名の営業職のうち女性は2、3人ということも珍しくない。男性を基準とした体力勝負の職場で将来のキャリアを見失い、出産を機に辞める女性にたくさん出会いました。何とかしてこの状況を変えたいと思いましたが、人材育成コンサルタントとして外部から個々の企業に働きかけるだけでは、社会はなかなか変わらない。もどかしさを感じました」
そこで、「企業や業種を超えて、女性営業職が横断的につながれるような場を作れば、助け合えるのでは」と考え、ライフワークとして立ち上げたのが「営業部女子課」だ。
「戦略らしきものは何もなく、最初は怪しまれて(笑)。『勉強会』と銘打った交流会からスタートしましたが、最初は5人を集めるのがやっとでした。ところが、いざ開催してみると『職場に女性が少なくて疎外感があった。キャリアの悩みをわかち合えてうれしい』と共感してくれる女性が集まり、会員が一人またひとりと増えていったんです」

「楽しい」「やりたい」と思えることをやって、自分も社会もハッピーにしたい

2015年7月に行われた「営業部女子課」恒例イベント・「夏の女子会 TOKYO」の様子。全国からさまざまな業種の営業職女性90名が集まった。

2015年7月に行われた「営業部女子課」恒例イベント・「夏の女子会 TOKYO」の様子。全国からさまざまな業種の営業職女性90名が集まった。

「営業部女子課」は設立5年目には会員数が1500名を超え、社団法人化。現在は活動の輪が23都道府県に広がり、会員数約2800人の大きなコミュニティに成長している。「目標を達成する技術」「ワークライフバランス」「長く活躍できるためのキャリアプラン」といった多彩なテーマの勉強会が定例の活動だが、それだけではない。有志の会員がプロジェクトを組み、企業のマーケティング支援や女性営業職のための手帳のプロデュースなども行っている。
「最近では2015年8月末に政府が開催する『WAW!2015=女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム』を盛り上げるために、女性の活躍の現状について生の声や女性活躍支援のアイデアを全国から集め、シンポジウム当日に発表したり、社会に提案を発信するという活動をしています。自分の活動が社会問題の解決につながることにやりがいを感じ、たくさんの会員が参加してくれています。『女性営業職同士で助け合えたら』と始まった『営業部女子課』ですが、会員個人の仕事に役立ったり、人脈ができて楽しいというだけではここまで共感の輪が広がることはなかったと思います。女性営業職としてのスキルやアイデアを持ち寄ってみんなで活動することで、世の中の問題を少しずつ解決していける実感が持てる。結果、男女ともに尊重しながら輝く社会へ貢献できる。『“楽しい”“やりたい”と思えることをやって、自分も社会もハッピーにしたい』というのが、私たちの活動の軸です。日本の営業職に占める女性の割合は約2割とまだまだ少ないのが現実。『営業部女子課』を通して女性営業職の声をもっと社会に届けることで、女性営業職が仕事もプライベートもあきらめずに生きていける社会を作っていきたいと思っています」

太田さんの休日の過ごし方:趣味の登山に出かけるのが、休日の楽しみ。本格的な登山トレーニングを数年前より始め、北アルプスによく行く。「将来はヒマラヤの山に登ってみたい」と太田さん。
編集部より>>
「営業部女子課」では、夏限定プロジェクト『営業部WAW!課』を立上げ、2015年8月28日(金)〜29日(土)に開かれる日本政府主催の「WAW!2015(女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム)」を盛り上げるため、外務省、Google社と提携しながら全国のあらゆる世代の男女より「女性が輝く社会」に向けたアイディアを募集中。詳細は営業部WAW!課公式サイト(http://eigyobu-joshika.jp/waw/)。シンポジウムには太田さんもスピーカーとして登壇する。

取材・文:泉彩子、撮影:刑部友康

※ タウンワークマガジンより