ママ向けWebグロースハッカー養成講座第2期 いよいよWeb制作の世界にデビュー!ママたちの初めての企業課題提案
デジタルハリウッド福岡校で、2016年9月7日(水)から始まった「ママ向けWebグロースハッカー養成講座 第2期」。11月9日(水)に行われたグラフィック課題発表からさらに1ヶ月が経過、その間ママたちはグロースハックの基礎となるWeb課題に取り組んできた。年末に向けて家庭や学校も忙しさを増す中、全力で課題に取り組んできたママたちの、12月7日中間発表のプレゼンの様子をレポートする。
今回の課題は、絵本ナビ株式会社が運営する絵本の定期購読サービス「絵本クラブ」のサイトリニューアル。サイトのターゲットとなるのは、0歳から小学生ぐらいまでの子どもを持つママ。ママである彼女たちの視点を活かせる、ぴったりの課題だ。
Webサイトのリニューアルは、まず現状分析を行い、リニューアルのコンセプトを固めるところから始める。そのコンセプトをもとに、サイトを設計してデザインを作り、コーディングして実際にWeb上で動く機能を持たせる。これら一連の制作を、トータルわずか1ヶ月ほどで仕上げなければならない。
グラフィックの授業に加え、HTMLやCSSといったWebの基礎的な授業もすでに受けているとはいえ、自由自在に使いこなせるようになるにはまだまだ時間がかかる状態だ。e-ラーニング教材による個別制授業とクラス制授業を組み合わせた講座なので、個人の習熟度に合わせて理解度を深められる環境は整っているが、子育てに追われながら授業をこなし、内容を理解して課題制作に取り組むのは並大抵の努力ではできない。そのため、今回のデザイン案の出来には不満があるママもいたようだ。「もっとこうしたかったんですけど、私の技術が追いつかなくて……」。
「今回はあくまで現状の力量を把握し、今後の授業に生かすための課題発表」と、高橋政俊デジタルハリウッド福岡校校長がママたちを励ます。今回完璧にできなかったとしても、何ができなかったかを自分で把握できることが大きな学びになるのだ。
課題には、高橋校長がママたちの能力やキャラクターを考慮しつつ選んだ、4人1組のチームで取り組んだ。チーム名は自分たちで付けた。中には「てんぷら」チームという、ユニークな名前もあった。その由来は、「コンバージョンを10%(てん)プラス(ぷら)する」ことが目標とか。名前一つにまで、ママたちの思いがにじむ。
受講開始から3ヶ月が経過し、チームでの共同作業でママ同士のコミュニケーションも深まっているので、緊張した面持ちのママは少ない。プレゼンをすること自体にも、だいぶ慣れてきた。
しかし、今回の課題はWebサイト。クライアント相手のプレゼンさながらに、仮のサーバーに各々の制作データをアップロードし、自分でPCを操作しながら相手にわかりやすく伝えないといけないので、なかなか難しい。操作の仕方だけを取っても、ほんの3ヶ月前には全くわからなかったママも多数いる。こうした細かい作業を一つひとつ丹念に覚えていくことが、自立したクリエイターになるために必要なのだ。
どのチームも、プレゼンの冒頭で、クライアントの要望として出された「申込数を増やしたい」「明るい雰囲気にしたい」といった点を確認。その上で、「絵本クラブ」のサービス自体の強みを抽出し、現行サイトの課題点を洗い出し、リニューアルコンセプトを言語化していく。
「ターゲットは0〜5歳の未就学児を持つ20代後半〜40代のママ。世帯年収が平均より高く、子どもの教育に投資をするタイプ」
「ファーストビューでサービスの内容とメリットを明確に打ち出し、写真は“ワクワク感”や“幸せ感”が伝わりやすいものに変更する」
提案の内容は、どれも明確。前回のグラフィック課題提案時より、プレゼン資料そのものがシンプルでわかりやすくなった。アイデアを出すことに留まらず、そのアイデアを最適に相手に伝えるためにどうするかが、ママたちの間でしっかりと考えられているようだ。
チームで決めたリニューアルの方向性を元に、各々のデザイン案を発表する。
「ターゲットはママですが、サイトの制作者がIT関係の方だからか、現行のサイトは硬い印象があります。もっとママにとって親しみやすいデザインになるように心がけました」
「ママが気になるのは、絵本を読むことが子どもにとってどんな効果を持つかということ。だから絵本の読み聞かせのメリットを説く部分を、強調しました」
「私も野菜の定期宅配のサイトを見て、料金がわからず、購入を決めかねた経験があります。だからこの案では、料金を大きく表示して安心感を演出しました」
こういったママならではの視点による提案こそ、クライアントが求めているもの。サイトのリアルターゲットであるママが、直接デザインを手掛ける。それだけに、一つひとつの提案には説得力がある。
ここが正念場
理解に時間がかかっても着実に進めていけば大丈夫!
プレゼンが終わると、Web制作実践講座で講師を務めるWebデザイナーの高木剛志さんによる講評が行われた。ママひとりずつに対して、率直かつ丁寧なフィードバックがなされる。
「コンセプトが反映されたサイトになっている」「これだけの情報量を上手にまとめている」といった、それぞれの良かった点のフィードバックとともに、「余白の開け方やバランスにもう少し気を配ってほしい」「この写真の入れ方では写真素材を集めにくい」といった実践的なアドバイスがなされ、ママたちは真剣な表情でメモを取っていた。
最後に、高橋校長から改めてママたちへの期待が寄せられた。「理解のスピードは、早い人も遅い人もいます。でも、ここで諦めずに頑張りさえすれば、成果を出せるようになることは1期生でも証明済みです。今回は、皆さんの理解のスピードやキラリと光るセンスを見極めるための課題であって、ふるい落とすのが目的ではありません。2月から始まるグロースハックの授業に向けて、しっかりと基礎を固めていきましょう。」
クリエイティブ系職種のキャリアのあるママもいれば、今回の講座で初めてクリエイティブを学ぶママもいて、スタート時点で実力差があったのが2期生の特徴。しかし、この3ヶ月の講座を通じて、プレゼンや課題の抽出、提案の骨子をまとめるスキルは、総じて高まった。提案をデザインとして具現化したり、Web上で実装したりするスキルにはまだ個人差があるが、今回の課題を通じて約半数のママが、Webの世界に楽しさを感じたとのこと。今後の展開が楽しみだ。プレゼンを終えた二人のママに、感想を聞いてみた。
仕事も家庭もおろそかにしない
幸せなバランスの追求
ブルックさんは、イギリス人の夫と、5歳と2歳の息子との4人暮らし。結婚前は広告系企業で編集やライターの仕事をしており、その後はフリーランスとしてフリーペーパーの編集やライティングを行っていたが、長男の誕生とともに一時仕事を中断。夫がWebサービスの仕事にやりがいを持っている様子を見て、自分もデザインやコーディングに興味を持つようになった。 「彼の仕事の内容が面白そうで、話している内容をちゃんと理解したいと思っていたんです。それに、将来的に、もしまた海外に住んだり滞在することになった場合を考えると、言葉の壁を超えるwebの仕事は魅力的でした。」
もともと意欲が高く、センスもあったブルックさんは、授業を受けるごとにメキメキと成長。24時間作業に没頭していたいぐらい面白さを感じているというが、現実はそうもいかない。子どもが寝静まった夜11時からチームのママたちとミーティングを始め、明け方まで制作を続けることもよくあったという。プレゼンの直前に40度の高熱を出してしまい、思うように作業がはかどらなかった。しかし、仕上げてきたアイデアは細かいところまで考え抜かれた見事なものだった。
「今回の案は、自分の力を出し切ったという意味で、120点だと思います。私、今は必死で勉強する時期だと割り切って頑張ってるんです。でも、今後はバランスが大事。限界までやって自分を追い詰めたらどうなるのか、それを客観的に観察して、自分の仕事のスタイルを築いていけたらいいなと思っています」
一方で、今回のプレゼン案に50点と厳しい自己評価を下したのは、西崎さん。小学一年生の娘を持つママだ。夫の転勤で2013年に東京から愛媛へと移り、翌年4月に福岡に引っ越してきた。西崎さんの東京時代の仕事は、キャリアアドバイザー。夫の転勤の際に退職し、その後しばらくブランクがあったが、今回ママグロースハッカーズの募集を見て、即座に応募したという。
「単なるママ向けのWeb制作講座だったら、きっと受講してないと思います。グロースハックという仕事を通して、企業の成長のお手伝いができることがわかったので、私がかつてやっていたキャリアアドバイザーの仕事に似ているなと感じて。でも実際に覚えることは大きく違うので、今は四苦八苦してますね」
東京で出産した後は、7ヶ月の産休後すぐに職場復帰した。当時はそういったライフスタイルに満足していたが、愛媛へ移住したことを機に子どもとしっかり向き合う生活を送ったことで、仕事や生活に対する考え方も変わってきたという。
「子どもが習い事を始めて、私自身も嬉しいし応援したいから、在宅の仕事で時間とお金を上手に管理できるようになりたいです。持病もあるので、病気のケアもしつつ、ワークとライフのいいバランスを追求していきたいと思っています」
このクラスに集まっているママたちは、置かれている状況も、優先順位もすべて違う。しかしこうして、ひと所に集まり、同じ目標を共有して努力をすることは、連体感と信頼感を生み、時にはそれが自分を支える励ましにもなる。初めてのWeb課題に取り組んだママたち、将来を見据えたその目はキラキラと輝いていた。