スペシャルインタビュー 俳優 池田純矢さん
――池田さんは今年、デビュー10年を迎えましたね。
「14歳のデビュー当時は10年後、ハリウッドデビューしていると思ったんですけどね(笑)。あの時、思い描いていた理想とは違いますけど、今いる場所も胸を張って“ぼくはここにいる”と言えるところです」
――昨年から脚本・演出を手掛けて舞台プロデュースを行っていますよね。もともとは俳優として演出を受ける立場だったと思いますが、いつから制作に興味を持ち始めたんですか?
「昔から活字中毒で文章を書くことが大好きだったんです。創作をはじめたきっかけは小学1年生の夏休みの絵日記。普通は日々の出来事を綴ると思うんですけど、僕は恐竜の卵を拾って孵化させて育てて心を通わせたけど、最終的には手放すことになったというフィクションファンタジーを書きまして」
――絵日記がフィクションってすごいですね!先生に怒られませんでした?
「それが、先生に大ウケして褒めてもらったんです。ここですごく怒られたり否定されていたら、きっと脚本は書いていないかもしれませんね。やっぱり褒められると自信になるし、また書きたいと思いますから」
――いい先生に出会えて良かったですね。演出は自分が役者になってから「自分だったらこう演出したい」という経験がきっかけだったのでしょうか。
「それはないです。僕は演出家の方から演出を受けるときに“なるほど”とか“そっちのやり方もあるのか”と納得することが多かったので。でも、“自分はこっちが好みだな”という気持ちはありました。だから、すべて自分の好みで最初から最後まで作ったらどうなるのだろうという思いはあって」
――それで俳優でありながら脚本・演出を手掛けるようになるわけですね。
「僕の中では役者も脚本も演出も“芝居をつくる”作業なので、やることはほぼ変わらないと思っています。使う技術が少しだけ違う感覚で。例えるなら陶芸家がお皿をつくるかお椀をつくるかぐらいの違い。だから、違和感なく始めることができました」
――池田さんは、やりたいことが多いタイプなんですか?
「“やりたいことをやる”というより自然に始まっていることが多いです。よく『何がきっかけで演出をはじめました?』とか言われますけど、大きなきっかけはなくて自然と始めているんですよね。ただ、やるからにはプロフェッショナルでないといけないとは肝に銘じています」
――プロフェッショナルとは?
「お金をもらう以上はプロにならないといけないと思います。芝居が下手な人は芝居でお金をもらってはいけないし、文章が下手な人は脚本を書いて舞台をつくろうと思わないほうがいい。プロになりたいのなら勉強したり、継続して努力することが必要です。
僕の場合、舞台演出に関しては成功するビジョンが見えたので舞台を手掛けはじめました。役者もスタッフも集めて、いざ、やってみたらお客さんが入らなくてギャランティも支払えない、なんて失敗は絶対にできません。だから、成功するというビジョンが見えてから舞台制作に取り組みました」
――それが最新作の『スター☆ピープルズ!!』ですね。池田さんが書いた脚本を読みましたが、アッという間に世界観に引き込まれました。
「ありがとうございます。SFコメディを描きたくて、かつ裏テーマに学問も入れ込みました。化学と科学という学問をベースに宇宙を舞台としたコメディです」
――特殊能力をもったキャラクターが登場しますが、独特な能力に思わず笑ってしまいました。
「最初考えていた能力はカッコよすぎて、これだとキャラクターがヒーローになってしまうなと思ったんです。ヒーローではなくて、観ている人が親近感がわくキャラクターにしたいと考えたときに『使えない能力』というのが浮かびました。イメージとしては自分と友達の性格が違うように、よくあるちょっとした人と人との違い、ぐらいの能力差です」
――だからどのキャラクターも魅力なんでしょうね。
「その分、演出は細かいですよ(笑)。『あと0.2秒遅れて言って』とか『今の声のワントーン高く話して』とか」
――池田さんとお話ししていると迷いがなく、自分の思いに突き進んでいる印象があります。
「いえ、迷っていますよ。自信もないですし。ただ、ここまでくるのに食えない時代があったし、セリフがない役を何役もやったこともあります。その積み重ねがあってこそ、ここに立てているという自負はありますね。
持論ではありますが、どんな仕事でも自分がやっている仕事は誰かの憧れであることを忘れてはいけないと思うんです。僕の場合であれば、役者や舞台に関わる仕事がしたいと思っている人のためにも、今、その場にいる自分が全力で頑張らないと、と考えています」
――全力で頑張れるほど仕事をしていてよかったと思うときはどんなときでしょうか。
「毎日思っています。とても好きな仕事ですから。でも一番はお客さんに届いたときですね。自分のつくったものをお客さんが観て、何かを感じてもらえたときは幸せな気持ちになります。観てくれた人の人生の一部に僕の作品や演技が何かを残せたのなら、この仕事をした意味があるなと。
仕事って生きる意味のひとつだと思うんです。じゃあ、生きる意味ってなんだろうと考えたら、自分が何を残せるかだと思う。物や形ではなくても、自分がいた証を残せる仕事がしたいから」
――そのような仕事と出会えるコツはありますか?
「“こんな仕事がしたい!”とやる前から明確な人はあまりいないと思うんです。誰かと話しをしたり、何かを観たりして感情が動いて少しずつ興味がわいてくるのではないでしょうか。だから漫然と生きるのではなくて『この人に会ってみよう』とか『これを観てみよう』とか小さな興味と目標を持って生きていれば、出会える気がします。」
いけだじゅんや/1992年生まれ、大阪府出身。2006年『JUNONスーパーボーイコンテスト』で史上最年少準グランプリを獲得。以後、映画、ドラマで経験を重ね、2011年に舞台にも活躍の場を広げる。2015年に舞台初主演を果たし、脚本・演出も務めた『君との距離は100億光年』など年間4作品で主演を務めた。
エン*ゲキ#02『スター☆ピープルズ!!』
2017年1月5日(木)~1月11日(水)新宿東口・紀伊國屋ホール
重大な任務を課せられた特殊能力をもつ7人が宇宙船に乗り込み、地球へ向かう。しかしその途中、難破した小型宇宙船に遭遇し、地球からやってきたという科学者と出会い、これが彼らの根幹を揺るがす重大な事件へと発展する。笑いとほっこりがたっぷり詰まったエンタテイメントコメディ。
インタビュー・文/中屋麻依子 撮影/八木虎造