産婦人科医・きゅーさんに聞く!
第1回【子宮頸がん検診が大切な理由】
20代後半になり、周囲に結婚・妊娠・出産を経験する友人も増えるなかで漠然と「私って妊娠できるの?」という不安を抱えている人もいるかも知れません。少し気になる不調はあるものの産婦人科には抵抗があり、なかなか行く勇気が出ないという人もいるのでは。そこで今回は、産婦人科医でありブロガーのきゅーさんに、将来、出産を考えているU29女子の気をつけたいことや生理のトラブルなど体の悩みについてお話を伺いました。第1回は「子宮頸がん検診」についてです。
自分は妊娠できるのだろうか?という不安
20代後半になると、友人や同僚など身近な人が妊娠や出産を経験したり、また「生理のトラブルから婦人病が発覚し、病院にかかっている」という話を耳にするようになったりする機会が多くなります。そういった話を聞いていると「自分は妊娠や出産ができる体なのだろうか?」と心配になっている人も多いはず。
そうは言っても大きな症状がない限りなかなか産婦人科へ行こうとまではならないもの。将来、出産を考えるU29女子が、自分の体と向き合う方法について聞いてきました。
子宮のトラブルは、子宮頸がん検診で早期発見!早期治療!
「20代後半になって生理のトラブルが急増したというのは間違いです。食生活、タバコや飲酒といった嗜好品、さらには睡眠不足や急激な体重の増減、もちろん精神的ストレス等、もともと体に悪影響な要因が長年にわたり蓄積していき、ついに症状として表面化してしまうのが、20代後半であっただけなのです。
多くの方は自覚症状が出るまで産婦人科の病院にかかることはないかと思いますが、婦人科疾患に早めに対応するためには、なによりも子宮頸がん検診をまず受ける事が大切です。受診して悪い部分が見つかればすぐに対処することもできますし、生活習慣を改善しつつ経過を観察することもできます。妊娠に不利な条件がたまたま発見できるかもしれないし、それに対してどう対処するのかということも考えることができるのです。
日本での子宮頸がん検診の受診率はわずか20〜30%。先進国の中ではダントツで最下位です。海外に目を向けてみると、アメリカが80%、オーストラリアが65%と半数以上の女性が受診しているとの報告が。日本の受診率の低さが際立ちます。
最近は、20代、30代に子宮頸がんが急増していますが、早めに見つけることができれば対処できる症状がほとんどなのだそう。完治の可能性もグンと高くなります。早期発見、早期治療で未然に防ぐことが大切です。
子宮頸がん検診では、どんなことをするの?費用は?
「子宮頸がん検診が重要なことはよく分かったけど、何をするのか分からないし、お金もかかりそう」と感じた人も多いのでは?検診では、具体的にどんな検査をして、いくらぐらいかかるのでしょうか?
子宮頸がん検診とは、子宮頸部に異常な細胞がないか調べる『子宮頸部細胞診』と、医師による問診があります。『子宮頸部細胞診』は、子宮の出口である子宮頸部をヘラやブラシのような器具でこすり、上皮細胞を採取する検診。痛みも少なく数分で終了します。
オプションで追加可能な子宮や卵巣を調べる『経膣超音波検査』は、膣内に細い器具を挿入して、子宮と卵巣の大きさや形、位置、周囲との癒着の有無などを調べる検診です。痛みもなく、医師の内診では分かりにくい場所もモニターを通して見ることができるので、ぜひ一緒に受診することをおすすめします。
検診と言うと高額なイメージがありますが、国から『子宮頸がん検診無料クーポン券』が、20~40歳の間の5年ごとに配布されます。各自治体にも医療助成があり2年おきにクーポンを配布しているので、検診料がかかったとしても2000円程度でできるのです。そこに『経膣超音波検査』をプラスしても、5000円くらいで検査が可能です」(詳しくは自治体にお問い合わせください。)
妊娠に影響のある婦人科疾患とは
これから妊娠を考えるなら、気をつけておきたい病気のシグナルにはどんなものがあるのでしょうか?
「生理が3ヶ月以上来ない、生理痛がひどくなった、生理が重い、性交痛・排便痛がある場合は、なんらかの病気の可能性があるので早めに受診してください。
数ある症状のなかでも放置しておくと不妊につながる可能性があり、早めに対策したい病気としては、『子宮内膜症』と『子宮筋腫』、『子宮頸がん』が挙げられます。
『子宮内膜症』は、本来は子宮の内側にある子宮内膜の細胞が、子宮以外のところに存在する事により、毎月生理に伴ってお腹の中に炎症を起こしてしまう病気です。卵巣の中に子宮内膜細胞があると、だんだん大きくなってしまい、チョコレート嚢腫と呼ばれる卵巣囊腫を認める様になります。また子宮内膜症の特殊なタイプとして、子宮筋層に子宮内膜細胞が存在する子宮腺筋症という病気もあり、特に生理痛や不妊症につながりやすい病気であるため注意が必要です。子宮内膜細胞の繰り返す炎症は、腹腔内や卵管周囲の癒着を引き起こし、排便痛や性交痛等のトラブルの原因となります。症状が悪化すると手術が大変になることもあり、手術代も入院代もかかりお金の負担も増えてしまいます。
『子宮筋腫』は自覚症状が無いため見つかりにくいにもかかわらず、早めに見つけておかないと妊娠に不利になってしまう疾患です。生理量が増えた、生理痛が重いなどの症状から発覚することが多いので、気になる場合は早めに受診を。また、赤ちゃんのベッドである子宮内膜が子宮筋腫によって変形してしまうと、ベッドとしての役割を果たすことができなくなり、妊娠しにくくなってしまうというケースも。最悪の場合、手術することになりますが、子宮筋腫は良性疾患なので病院内での手術の優先度が低く、手術の予約を取ろうと思っても数ヶ月まで予約でいっぱい、半年待ちなんてこともあります。その分だけ妊娠のタイミングも先送りとなってしまうので、妊娠を考えているなら早期発見が大切となります。
『子宮頸がん』は、女性の死因の上位にあるガンですが、早期発見すれば治療できるガンです。検診を事前に受けておくことで、未然に防ぐこともできる数少ないガンのひとつ。だからこそ、症状が悪化してしまった患者さんを見ると『早めに発見できれば助けてあげられたのに』と、医師たちはいつも非常に悔しい思いをしています。」
病気を予防だけでなく、命を守ることにつながる子宮頸がん検診
「進行してしまったガンに対する有効な手立ては今のところありません。そのためにも予防医学が重要なのです。すぐに妊娠・出産の予定がなくてもぜひ検診を受けてもらいたいと思います。早期発見すれば防げる病気も多くありますので。『症状がないから病院には行かなくていいか』という気持ちも分からないでもないですが、『私は子どもが産めるのだろうか?』と不安になって悶々とする時間があるなら、今すぐに子宮頸がん検診の予約を入れましょう。たった数千円で病気を早期発見でき、健康と命を守ることができるのですから」
子宮頸がん検診は体の不調を治すこと以上に、これから先の将来の健康やそして命を守っていくことにつながるのですね。「私は妊娠・出産できる体なのだろうか?」と不安に思うのであれば、まずは子宮頸がん検診に行ってみましょう。また、すぐに結婚や出産の予定がなくても、子宮頸がん検診に行き、自分の体の状態を定期的にチェックしておくことで、将来の選択肢につながるのではないでしょうか。U29女子は年に一度の習慣にしたいものです。
第2回(8月28日公開)では、「妊娠に向けて今できること」についてお話いただきます。
お楽しみに!
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<プロフィール>
きゅーさん@産婦人科医
産婦人科兼研究者。沢山の外来診療をして感じた、「女性は生理の悩みを抱えている人がとても多い。しかし自分の身体について知っている事が少ない」という現実。日頃から正しい知識をもって自分の身体をケアする事が大事だと思い、ブログやメルマガ、アプリなどで分かりやすく解説している。
ブログ「産婦人科医きゅーさんが本当に伝えたい事」:http://ameblo.jp/kyusan0225/
アプリ「妊娠レシピ」:https://itunes.apple.com/jp/app/ren-shenreshipi-chan-ke-yito/id912829655?mt=8
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