スペシャルインタビュー 女優 杉咲 花さん
――杉咲さんが女優になりたいと思ったきっかけを教えてください。
「昔からドラマが好きで、自分も演じてみたいなと思ったのがきっかけです。それで、オーディションを受けて事務所に入りました」
――その話だけ聞くと、ものすごく積極的でガンガン前へいくようなイメージですが…。
「そのイメージの逆だと思います。私、声も小さいし、話す速度も遅いし…。今、こうやってお話ししていても“もっと早く話してよ”と思われていないか不安で(笑)。でも、もともとは前へ出るタイプだったんですが、高校には積極的な子たちが多くて、その子たちと一緒にいると私は違うタイプだと分かったんです。自分からどんどん前へいって話すよりも、人の話を聞いている方が好きなタイプだなと思うようになりました」
――でも、仕事では自分の意見を主張しないといけないことも多いですよね。
「はい。主張することで、いい方向へ向かうと思う時はしっかり言います」
――杉咲さんは昔から憧れていた仕事につきましたが、実際に仕事をして葛藤したことはありますか?
「葛藤まではないですが、考え方は変わってきたかもしれません。私はとにかく映画やドラマが大好きで、この世界に入って自分が演じたいという気持ちが強かったですが、様々な作品に関わるにつれて、よい作品をつくるために自分はどうすればいいだろうと、自分のことより、作品のことを考えるようになりました。映画やドラマはひとりでは決して生まれません。演じる人がいて、撮る人がいて、セットや音楽を作る人がいて生まれるものだと思うんです。みんなでよい作品を生むために、自分は何をすべきかを考えて頑張ることが楽しいと思うようになりました」
――「みんなで良い作品をつくること」が仕事の楽しさ、ということですか?
「はい。正直に言うと、自分が演技しているときはそこまで楽しいとは思わないんです。それよりも多くの役者の方と共演させていただいて、鳥肌が立つような素晴らしい演技を目の当たりにしたり、セットや照明などを完璧にセッティングするスタッフさんの姿を見たりしているときが楽しくて。それぞれが作品のために頑張って、それぞれが輝いてる場所に自分がいられることが楽しいです。きっと、みんなで“ものづくり”をすることが好きなんだと思います。そして、作品を観ていただいた方から、反応や感想が返ってくるときも楽しいですね」
――最近、鳥肌が立つような素晴らしい演技に刺激を受けたことは?
「映画『スキャナー』で共演させていただいた高畑淳子さんです。高畑さんは芸能事務所の社長役なんですが、所属している芸人を怒るというシーンで、アドリブで近くに置いてあった雑誌で頭を叩いたんです。その間も絶妙で、一瞬のうちにこんな素晴らしいアドリブができるなんてと感動しました。私はまだまだ瞬発力が足りないので勉強することばかりでした」
――多くの人と出会う今の仕事は刺激を受ける反面、自分に力が足りないと感じて落ち込むことはありますか?
「もちろんあります。でも、落ち込みすぎると良い方向に進むことはあまりないと思うので、次に進むことを考えます。落ち込みから立ち直るには自分が頑張るしかないんですよね。頑張って周りを説得するぐらいの演技をしないといけない。そのために何が悪かったかを反省して次に臨むようにしています」
――杉咲さんが仕事をするうえで大切にしていることがあれば教えてください。
「“当たり前に思わないこと”ですね。私の仕事は作品ごとに求められることがまったく異なるので、前の作品ではOKだったことも、NGになってしまうこともあります。ですから“こうやれば大丈夫だろう”とか“こういうシーンではこんな演技でいいだろう”とか自分の中での当たり前を作らないようにしています」
すぎさきはな/1997年生まれ、東京都出身。ドラマ『夜行観覧車』で注目を集め、『MOZU』『学校のカイダン』などに出演。今後はNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』に出演。映画『トイレのピエタ』、『愛を積む人』、2016年10月29日からは『湯を沸かすほどの熱い愛』の公開が控えている。
『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』
<4月29日(金)全国ロードショー>
残留思念を読み取ることができる仙石(野村萬斎)は、その特殊な能力でお笑いコンビとして活躍していたが人間不信に陥り引きこもり生活。元相方の丸山(宮迫博之)も芸人として売れずにくすぶっていた。そんな丸山のもとに女子高生の秋山亜美(杉咲花)から失踪した知人を探してほしいと依頼が入る。仙石と丸山は衝突を繰り返しながらも人探しを手伝うが、予想もしなかった大きな事件に巻き込まれていく。
インタビュー・文/中屋麻依子 撮影/平山 諭