副業とは違う! 「パラレルキャリア」ってなに?

2017年10月24日

「パラレルキャリア」という言葉、近頃よく耳にするようになりましたね。しかし、実際にどういうことなのか、副業とどう違うのか、始めるにはどうしたらいいのか……など、具体的にはイメージしづらいのではないでしょうか。

今回は、パラレルキャリアについてのさまざまな疑問や、この「新しい働き方」の可能性について、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事の田中美和さんにうかがいました。

 

いま必要なのは、“長期的で柔軟な”働き方

パラレルキャリアとは、ひと言で言うと「働きながら、それ以外のキャリアを築く」こと。より幅広い分野でのスキルアップや社会貢献、日々の生活の充実など、キャリアの「複線化」を目的としたものです。副業は報酬・収入を得ることが目的であるのに対し、パラレルキャリアは必ずしも報酬・収入を得ることを目的としていません。たとえば、自分の専門性を活かしてNPO・NGO団体でボランティア活動を行う「プロボノ」もパラレルキャリアのひとつ。「pro bono publico」というラテン語からきており、「公共善のために」という意味合いです。

ではなぜいま、パラレルキャリアが話題になるのでしょうか? その背景には、平均寿命が延びて、今後ますます「健康で長く働き続ける」ことが求められているにもかかわらず、企業自体の寿命は短くなっており、長期的にひとつの企業に依存することが難しくなってきていることなどがあります。このようなリスクに備えるためにはキャリアは1つより2つ。キャリア形成の主導権を自分で握り、将来に備えた柔軟なキャリアを自分で用意する必要性が生まれてきたのです。
 

パラレルキャリアは、「好き」や「得意」からでもスタートできる

パラレルキャリアでは、「本業で培った経験やスキルを活かす」という働き方もありますが、「私には専門性のあるスキルなんてとても……」という人でも「好き」や「得意」な分野があれば、始めることができます。

現在、パラレルキャリアを始めたい人に向けた支援やマッチングを行うインターネットのサービスが多数ありますが、そこではさまざまなスキルが求められています。たとえば、モノや場所、スキルなど、個人が所有しているものを、お互いに共有する「シェアリング・エコノミー」と呼ばれるサービスのサイトでは、「家事が得意」という人が、「料理を作って欲しい」「家の片付けをして欲しい」人に対して、自分のスキルを売ることができます。

また、企業から「ある特定の分野に詳しい人からヒアリングをしたい」というニーズがあり、自分の知識や経験とマッチすれば、それを企業に売ることもできるのです。ほかにも、イラストや占いといった趣味的なジャンルへのニーズも増えているので、一度これらのサイトをチェックしてみてはいかがでしょうか。
 

パラレルキャリアを始めるときの注意点は?

パラレルキャリアを始めるにあたって注意したいポイントは、いま働いている会社の就業規則を事前に確認すること。副業や兼業が全面禁止なのか、許可を得ればOKなのか、OKでも条件付きの場合もあるので、しっかりとチェックしましょう。
 
パラレルキャリアは、基本的に個人で築いていくものなので、信頼関係の上に成り立っています。企業が運営しているシェアリング・エコノミーなどのサイトでは、利用規約に則りスキルの売り買いを行うのでトラブルは起きにくい仕組みになっていますが、口コミや知り合いを通じて仕事を請け負う場合は、報酬額や納期を口約束にせず、最低限メールに記録を残すなどして、トラブルを防ぐことが大切です。
 

出産・育児後の女性の働き方を応援するパラレルキャリア

近年、「働き方」の選択肢がどんどん増えてきており、結婚、出産、育児を経て、その後の自分の働き方を見直す女性も多くいるようです。

「いままでは週5日で働いてきたけれど、本業は週3日に減らして、週1日はボランティア、週1日は子どもと過ごす」というように、自由度の高い働き方を自分で選べるようにもなってきています。このような女性たちにとって、パラレルキャリアはその思いを実現できる力強い味方と言えるでしょう。
 

パラレルキャリアによって得られる人脈や経験は、会社勤めで得られるものとはまったく違うはず。そこで出会った人を通じて、新たな仕事の輪が広がる可能性もあります。自分の経験やスキルを活かすことはもちろん、「好き」や「得意」からでもスタートできるパラレルキャリア、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

 

記事監修:田中美和
株式会社Waris代表取締役共同創業者。国家資格キャリアコンサルタント。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japan キャリアカウンセラー。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事。出版社勤務、フリーのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て、2013年に株式会社Warisを共同設立。Warisでは、プロフェッショナルスキルを持つキャリア女性と企業とのジョブマッチング事業を展開している。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

※この記事は2017年10月時点での情報です。