勤務時間やお給料は? 「週休3日制」で働きやすくなるの?

2017年09月27日

最近、さまざまな企業で導入され始めている「週休3日制」。休みが増えるのはとても魅力的ですが、週休2日と比べて「忙しくなる」「お給料が減る」と心配する声も聞かれます。

週休3日制で働き方はどう変わるのでしょう。今後、新たなワークスタイルとして定着するのでしょうか? 特定社会保険労務士の長沢有紀さんにお話をうかがいました。

 

「週休3日制」の働き方とは?

週休3日制は、文部科学省が2014年1月に発表した「夢ビジョン2020」の中で提案され、新たなライフスタイルとして注目を集めるようになりました。

昨今、問題となっている「人材不足」を解消する策として、正社員の「週休3日制」を導入または検討している企業が増えているようです。人それぞれの働き方のニーズに応えることで人材を集め、辞めずに長く働いてもらえる職場環境づくりにつなげたいと考えているからです。

現在、労働基準法が定める労働時間「1日8時間まで、週40時間まで」に準じて、「週休2日制」が一般的になっています。これと比較して、実際に「週休3日制」を導入している企業の例をみると、大きく次の2つのタイプに分けられます。

労働時間分配タイプ(労働時間は1日10時間、週40時間/給料は週休2日制と同じ)
週4日の出勤日は1日の労働時間を増やして、休みを1日増やすイメージ。通勤時間と所定1時間の休憩を含めると、出勤日は仕事の拘束時間が長くなりますが、仕事とプライベートをともに充実させる働き方になりそうです。休日を習い事や資格取得のための勉強など、自己啓発にあてることもできます。

労働時間短縮タイプ(労働時間は1日8時間、週32時間/給料は週休2日制より少ない)
労働時間に応じてお給料は減りますが、週の休みが1日増え、週休2日制と同じ生活ペースを保ちながら、仕事と家庭、育児や介護との両立がしやすくなります。ただし、子育て世代で保育園のお迎え時間などを考えると、出勤日を減らすよりも時短勤務(所定1日6時間)を利用したほうがいい場合もあります。

1日増えた休日を、何に使うかという目的をしっかり持ち、自分のライフスタイルに合わせて選択することで有意義なものになるでしょう。
 

週休3日制を導入しているのはどんな企業?

厚生労働省の調査(※)によると、月1回以上の週休3日制を含む「完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度」を採用している企業の割合が多い産業は、医療・福祉(10.6%)、製造業(8.1%)、電気・ガス・熱供給・水道業(7.0%)の順になっています。企業規模は1000人以上(8.8%)が最も多く、99人以下(4.8%)になると割合が下がります。
※平成28年就労条件総合調査の概況

これまでのところ、従業員数が多い企業でかつ土日出勤や夜勤のある職場で、シフト制の勤務体系の延長として週休3日制を導入しているところが多いようです。社内でも「週休3日制」を選択できる職種や部署が限定されていたり、休みは土日や繁忙期を除いたりといった条件付きのところもあります。
 

多様な働き方の選択肢として、週休3日制が広まる日が来る?

週休3日制を選択した場合、社内の他部署との連携や他社への応対をどうするか、異なる勤務体系に対する人事考課などの課題は残っていますが、長時間労働の解消や職場全体の生産性がアップするなどの効果も期待されています。

実は、週休2日制が定着したのも1990年代頃で、そう昔のことではありません。同じように「週休3日制」が普及するには、企業だけでなく、公務員や学校も含めて社会全体が一斉にその方向に動く必要があります。それには、政府の働きかけや法の整備が求められるため、まだまだ時間がかかりそうです。

導入を開始した企業も、今は試行錯誤を重ねている段階。たくさんの成功事例が生まれて、社員にとってより利用しやすく魅力的な制度になれば、一人ひとりの多様な働き方を支援するメニューのひとつとして、今後広まっていく可能性は十分にあるといえます。
 

現在導入されている週休3日制の多くは、「1日の労働時間が増える」か「お給料が減る」というタイプが多く、単純に休みが増えるものではありません。制度が適用される職種や部署、休みの条件なども各企業で異なります。自分のライフスタイルに合わせて、時短勤務など、他の制度とも比較検討して選択するといいでしょう。

今後、厚生労働省が提言する「多様な働き方」のメニューのひとつとして、週休3日制は時間をかけて普及していくと思われます。1日をどう使うかという目的意識を持つことで有意義な制度になるでしょう。

 

記事監修:長沢有紀
特定社会保険労務士。行政書士。アドバンス社会保険労務士法人代表。1994年に25歳で長沢社会保険労務士事務所を開設。開業当時、最年少開業社労士として注目を集める。現在、セミナー講演でも活躍中。取材、TV出演等多数。
アドバンス社会保険労務士法人:http://www.roumushi.jp/

※この記事は2017年9月時点での情報です。