「世の中をよくしたい!」思いから始まる「NPO」という働き方

2017年12月20日

「社会に貢献したい」という思いをかなえる働き先として、関心の集まるNPOやNGO。「社会的な活動をしている団体」ということはわかっていても、実際の働き方については知られていないことも多いようです。そこで、認定NPO法人フローレンスに新卒で就職した菊川恵さんに、NPOでの業務ややりがいなどについてうかがいました。

 

「社会の問題解決に取り組む」のがミッション

NPOとは、Non-Profit-Organization(非営利組織)の略で、社会的な課題を解決するために活動している団体のことをいいます。そのうち、特定非営利活動促進法(NPO法)によって法人格を付与されている団体がNPO法人です。その事業分野は、福祉、教育・文化、まちづくり、環境、国際協力など、多岐にわたります。NPOの中でも、地球規模の課題(開発、環境、人権、平和など)を解決するために活動している団体がNGOで、Non-Governmental-Organization(非政府組織)の略です。

ボランティアのような無償の活動を行っているイメージがありますが、実は収益を目的とした事業を行うことが認められています。ただし、一般企業が事業で得た利益を株主に配分するのに対して、NPOは社会的な事業に再投資しています。つまり、新たな社会的取り組みに挑戦している組織といえます。社会的なニーズの高まりから、NPOの数は急速に増え、現在までに5万を超えるNPO法人が認証・認定されています。
 

組織や待遇、やりがいは?

NPO法人といっても、経理・人事や各事業部、企画、広報など、組織的には一般企業とそれほど変わりはありません。近年は、ビジネスを通じて社会問題を解決することを目的として起業したソーシャルベンチャーから、NPO法人に発展するケースも増えています。

もちろん、職員への給与も支払われます。育休・産休などの制度の充実や働き方改革に取り組んでいるNPOもあります。新公益連盟に加盟するNPOや社会的企業(ソーシャルビジネス)約100団体を対象にした給与に関するアンケート(新公益連盟「ソーシャルセクター組織実態調査2017」※回答約半数)によると、NPO職員の年平均給与は339万円。NPOに転職すると給与が下がるということも、一概にはいえません。

しかし、新卒でNPOに入職するというキャリアは、日本ではまだメジャーではなく、一般企業から転職するのが一般的です。私が働いている「フローレンス」は、親子をとりまく問題解決に取り組んでいるのですが、実際に子どもを持って初めて保育所不足の問題に直面し、「この状況を何とか変えたい!」と転職してきた人もいます。職員それぞれが、当事者意識を持っていて、その思いをダイレクトに仕事にぶつけ、“最前線で変化を推進していけるところ”がNPOで働く醍醐味だと思います。
 

求められる人材とは? 自分に合ったNPO法人の選び方

NPOの活動分野は幅広く、親子にかかわるものもあれば、女性にかかわるものなど、人にかかわる分野だけでも多岐にわたります。ほかにも、動物愛護や環境問題にかかわるものなどもあります。NPOで働く上で、共通して求められるのは、共感力と想像力、本質を見極める力ではないでしょうか。取り組みにかかわる人たちに共感し、問題・課題を抱えるに至った背景を思い浮かべて、的確な対応をすることがNPOの活動だからです。

また、それまでにはなかった事業を起こすわけですから、創造性や生産性も求められます。NPO法人単独では何もできません。行政や民間企業と力を合わせて取り組む課題が多いため、いろいろな人を巻き込む力や発信力も必要です。

たとえば、フローレンスのように待機児童問題などで困っている親子に対して、人的サービスを提供している団体で働きたいという場合、人に寄り添う仕事がしたいなら保育の現場、社会の構造に働きかけたいという人は事務局側の求人を見るといいでしょう。また、あえて少数精鋭で運営しているところであれば、経理が欲しいなど、具体的な募集職種があるかもしれません。前職で培った専門性を活かしたいという人は、採用側にその点をしっかり伝えるといいでしょう。

興味のあるNPOがやっているイベントに足を運んだり、ボランティア活動に参加してみると、どんな人を対象にどんな仕事をするのかイメージがわきやすいのではないでしょうか。
 

今後、社会のニーズが多様化する中、政府や一般企業ではカバーしきれない分野で事業を行うNPOの役割はさらに大きくなることが予想されます。それにともない、いろいろなNPO法人で求人があると思われますが、一般企業への就職活動と同じように、ただ「その組織に入りたいから」というだけではなく、「何がやりたいのか、組織が目指す目的や理念に共感しているのか」という視点で、働くべきNPOを選べば、やりがいのある仕事に出会うことができるでしょう。

 

記事監修:菊川恵
認定NPO法人フローレンス 小規模保育事業部。「保護者のサポートをしたい」と新卒で入職。「おうち保育園」のバックオフィス業務のほか、「こども宅食」の新規事業プロジェクトにも携わり、コンテンツマーケティングを担当。10年前、日本で初めて訪問型・共済型の病児保育サービスを開始したフローレンスは、「親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決する」というミッションのもと、さまざまな事業を展開。革新的な事業モデルを生み出している。

※この記事は2017年12月時点での情報です。