スペシャルインタビュー 女優 真木よう子さん

2016年05月17日
クールな雰囲気でどこかミステリアスな魅力をもつ真木よう子さん。小学生の頃から女優になりたいという夢を持っていたそう。夢を叶えた彼女の仕事観や考え方の変化などについてうかがいました。

真木よう子さん

――『海よりもまだ深く』は30、40代のオトナたちが“こんなはずじゃなかった”という思いを抱えながらも生きていく物語ですが、劇中「なりたいオトナになれた?」という印象的なセリフがあります。真木さんご自身は、なりたいオトナになれたと思いますか?

「小学生の頃から“オトナになったら女優になりたい”と思っていたので、それは叶えられましたね」

――小学生からの夢を叶えるなんてなかなかできないですよ! 真木さんのように自分がなりたいものや就きたい仕事につくにはどうしたらいいのでしょうか。

「とても簡単なことですよ」

――簡単!? ぜひ、教えてください!

「決して諦めないことです。“もうダメだ”と思ってやめた瞬間になりたいものにはなれませんから。私も10代、20代はオーディションに落ちてばかりで“ダメかもしれない”と何度も思いましたけど、その度に、ここで諦めるか続けるかで今後の人生が変わってくると自分で自分に言い聞かせて、続けることを選んできましたから」

――“ダメかもしれない”と思ったときこそ、ポジティブに考えるべきなんでしょうね。

「いえ、まったく逆です」

――えっ!!?

「私も仕事や私生活で“ダメかも”とか“こんなはずじゃなかった”と思うことは多々あります。だからといって、その度に無理やりポジティブにもっていく必要はないと思うんですよ。だって、無理に前向きに考えると余計に疲れちゃうじゃないですか」

――確かに、落ち込んでいるときにポジティブになるには相当なエネルギーがいります。

sub1_「だから、私は流れるままに生きてきた気がします。流れるままとは、流されるのではなく、自分の思いの流れるままということ。例えば、オーディションに落ち続けて、女優の仕事をやめるか続けるかと考えたときに“続けたい”という気持ちがあればそれに従う。自分の感情に対して素直に進んでいくようにしています。なんだかんだ考えても、それでも私たちは生きていくんだから、という感じです(笑)。ただ、娘が生まれてからは、少し仕事への考え方は変わってきたかな」

――どのように変化しましたか?

「娘が生まれて責任というものを強く感じるようになったんです。つまり、自分ひとりの人生ではなくなった。そのときに守るもののために、きちんと女優という仕事に向き合おうと改めて思いました。いままでは仕事において“誰かが言ったからやっている”という気持ちが少なからずあったけれど、誰かのためでなく自分のためにやろうと思うようになったんです」

――いま、真木さんが仕事に対して、大事にしていることはなんでしょうか。

「監督の言ったことに対して“嫌”や“できない”は言いません。例え、自分の演技プランと違うかなと思っても、監督が構成しているものは、俯瞰で見るときちんと完成されていますから自分の判断よりも監督に判断に従うようにしています。素直に演出を受ける。これは私の仕事のスタンスのひとつですね」

sub2_――映画の話に戻りますが、真木さんが演じた響子はシングルマザーで、新しい恋人ができて新たな人生に向かって進んでいるという役どころです。女性にとって、新しいパートナーの存在は人生に影響すると思いますか?

「独立してひとりで戦っている女性もいますし、シングルマザーで頑張っているお母さんはたくさんいますから、パートナーの存在が必ずしも必要とは限らないのではないでしょうか。私は誰かに寄りかかるのではなく、自分の足で歩いていける自立した女性が一番かっこよくて魅力的だと思いますね」

 

●Profile
まきようこ/1982年生まれ、千葉県出身。2001年に女優デビューし、2006年『ベロニカは死ぬことにした』で映画初主演。『ゆれる』で第30回山路ふみ子映画賞新人女優賞を受賞。『さよなら渓谷』で第37回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、『そして父になる』で最優秀助演女優賞の2冠を達成する。NHK大河ドラマ『龍馬伝』、フジテレビ『最高の離婚』などドラマでも活躍。
●映画紹介
『海よりもまだ深く』
(C)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ

(C)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ


<5月21日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他、全国ロードショー>

15年前に文学賞を獲ったきり売れずに興信所に勤めている“うだつのあがらない”大人の良多(阿部寛)。妻の響子(真木よう子)にも愛想を尽かされ離婚されてしまう状態。月に1度の面会日、11歳の息子、真悟を連れて団地に住む実家の母親(樹木希林)の元へ訪れる。ひょんなことから台風の夜に元家族が団地に集まりそれぞれの想いが交錯していく。是枝裕和監督最新作。

取材・文:中屋麻依子/撮影:八木虎造