スペシャルインタビュー 俳優 田中 圭さん
イケメンから気弱な青年、そして極道までと多くの役を演じる田中圭さん。その気になる素顔は男らしい実直な男性。今回のインタビューでは飾らない、自然体の姿を見せてくれました。
――役者であれば当たり前かもしれませんが、その中でも田中さんは数多くの作品にさまざまな役で出演されているイメージです。過去には同時に7作品を抱えていたと聞きましたが。
田中さん「それは数年前の話ですけど、今は大体3~4作品ぐらい。でも、今の方が大変ですね。作品数が減っても、出演場面が増えていますし、求められることもハードルがあがっていますし。今回、出演した『劇場版 びったれ!!!』も『シングルファーザー』『司法書士』『元・極道』という3つの顔を持つ主人公を演じましたが、オファーがきたときはどう表現できるか課題でした。でも、課題があるからこそ挑戦したくなるんですよ」
――困難があるからこそ燃えるタイプですね。
田中さん「自分が出演した作品を観て“よくやった!”と思ったことが一度もないんですよ。それは自分を否定しているのでも卑屈になっているのでもなく、今だったらもっとよくできるんじゃないか、と思う。これが課題となって次の現場では乗り越えてやろうと芝居に取り組む。そうすると、また次の課題が出てくる…これの繰り返しですね」
田中さん「結果はいろいろですが、毎回、乗り越えるために一生懸命アプローチしていますね。だからこそ、飽きずにこの仕事を続けられているんだと思います。でも、いい評価を受けられずにへこんだり、悩んだりして役者をやめようと思ったこともありましたね」
――それはどんなときに?
田中さん「以前は1年に1回はやめたいと思っていましたね(笑)。直近は2、3年前かな。役者をやっていることが無意味に思えて」
――無意味?
田中さん「当時、ある舞台を観に行ったんですが、立派な会場に豪華な舞台装置、そして人気のある役者さんが出演していたけれど、僕にとって作品内容はまったく納得できる出来じゃなかった。でも、芝居後は観客がスタンディングオベーション。そのときに“芝居で勝負しようとしている俺っていらないじゃん”とか“役者のあるべき姿って何だろう”と考えてしまって。でも、それって結局ひがみだろ、とも思ったり。役者の意味や自分の価値に対してすごく葛藤しましたね」
――でも、やめなかったのはなぜ?
田中さん「進行中の仕事がありましたから留まりました。少しでも自分のお芝居を観てくれる人や、使ってくれる方がいる間は役者を続けようと考えて。役者だけでなく、どんな仕事でも悔しい思いはみんなしているでしょうから、それをどう変換していくかが大事なのだと思います」
――前向きな変換をすることですよね。田中さんはもともとポジティブな性格ですか?
田中さん「ポジティブ…とかあまり考えないですね。ガチガチに“前向きになろう!”というより、自分に甘いので理想とする形に寄っていければいいかな、ぐらいです(笑)。止まっていなければいいと思うので」
――今日、お会いした雰囲気やスタッフさんとのコミュニケーションを見ていて、田中さんは人が好きなんだろうなと感じたのですが、人付き合いを上手にするコツってありますか?
田中さん「確かに人は好きですね。ただ、コツというとなぁ…。自分がやりたいようにやればいいんですよ。自然体でいることが一番大切。それで嫌う人もいれば残る人もいるだろうけど、みんなから好かれようとしたら疲れますから。僕も先輩から食事に誘われて行きたくないときは、はっきり行きたくないって言っちゃうし。それで怒られることもしょっちゅうですけど(笑)。でも、そんなに気を遣って生きていたら人と会うのが嫌になっちゃいますよ」
――確かにそうですね。ちなみに田中さんが素敵だなと思う女性のタイプも自然体系ですか?
田中さん「無理している人よりはいいですよね。分かりやすくギャップに弱いですよ。一見、何もできなそうだけど家事ができるとか。あと、自分にはない女性ならではの感覚は素敵だなと思いますね。僕は基本的に人に対して好印象から入るので、女性はみんな素敵だと思います(笑)」
●Profile
たなかけい●1984年7月10日生まれ、東京都出身。2003年ドラマ『WATER BOYS』で注目を集める。その後、ドラマ『私が恋愛できない理由』『ドクターX~外科医・大門未知子』、現在は『5→9~私に恋したお坊さん~』に出演。映画『図書館戦争』『相棒シリーズ X DAY』など出演作多数。
『劇場版 びったれ!!!』
11月28日(土)より角川シネマ新宿ほか全国ロードショー
『お人好しで頼りないシングルファーザー』『切れ者の司法書士』『元・極道』の3つの顔をもつ伊武努(田中圭)。仕事のパートナーの杉山(森カンナ)の実家が不正な取引で立ち退きを迫られていることを知り立ち上がる。人気の痛快裏リーガルドラマが待望の映画化。
インタビュー・文/中屋麻依子 撮影/八木虎造