労働契約のポイントを学んで、ワークライフバランスを守れる会社を見つけよう!

2015年12月21日

仕事、プライベート、育児・出産などの生活とバランスを保って働く「ワークライフバランス」。しかし、自分が求めるワークライフバランスの形が実現できる会社かどうか、どうすれば見極められるのでしょうか?
そこで今回着目したいのが「労働契約書」や「労働条件通知書」などの労働契約を交わす際に用いられる書類です。もちろん求人票にも条件は記載されていますが、求人票には「残業なし」と書かれてあるにもかかわらず、労働契約では「残業あり」となっていることも。
労働契約のポイントをおさえ、しっかりと確認することは、ワークライフバランスを守って働けるかどうかを見極めるための一つの手段といえます。
グラース社労士事務所の特定社会保険労務士・新田香織さんに、ワークライフバランスを守って働くための「労働契約書」や「労働条件通知書」の確認すべきポイントを伺いました。

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労働契約時に扱われる書類とは?

私たちが会社に勤めることが決まった場合、給与や勤務時間などの労働契約を交わすことになります。その際、必ずどのような労働条件で契約するのかを明らかにした書類が必要になります。その主な書類は「労働条件通知書」や「労働契約書」の2種類。それぞれどのような書類なのか、新田さんに教えてもらいました。

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「労働基準法では、使用者(会社)は労働者に対して、必ず記載しなければならい項目(絶対明示事項)として契約期間、就業場所、業務、労働時間、休日、退職について(上図参照)を書面で示すことを定めています。これを『労働条件通知書』と呼びます。

また絶対明示事項の他に、退職手当、休職など会社が定めた事項がある場合に示す『相対的明示事項』というものがありますが、こちらは口頭での説明でも可能です。

一方、『労働契約書』は使用者(会社)の示す労働条件に、労働者が同意をして契約するものです。こちらは、労働契約法に基づくもので、労働条件や労働契約の内容についてできる限り書面にて確認することが規定されていますが、必ずしも『労働条件通知書』に盛り込む絶対明示事項すべてを含んでいなくても構わない書類です」

「労働基準法では、明示された労働条件と実際の労働条件が違った場合には、労働者はすぐに労働契約を解除すること。つまり、退職できるということになっています。転職の際には、どちらの書類の内容も、求人票の内容と相違ないかよく確認した上で、受領する必要があります」

ワークライフバランスを守るために押さえておくべきポイント

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そこで、仕事と生活のバランス「ワークライフバランス」を守りたいとき、労働契約時の書類で特に注意すべきポイントを、新田さんに教えてもらいました。

「ワークライフバランスを考える際は、絶対明示事項について次のように一つ一つ確認したほうが良いでしょう」

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1.働く前に誰もがチェックすべきこと

ワークライフバランスを考える前に、誰もがチェックしておくべきポイントです。

●チェックポイント:期間の定めの有無

「期間の定めがなければ、長く働ける環境であることがわかります。もし期間の定めがある場合は、契約更新の判断基準を確認しましょう。例えば、“契約期間満了時の業務量” “勤務成績、態度” “会社の経営状況”など、これらの判断基準は会社によって異なります。
また、契約期間が満了になったとき、『契約が更新されなかった!』というトラブルを防ぐためにも、事前の確認が大切です。
平成25年の労働法契約法の改正により、5年以上働いている場合、雇用者からの申し出があれば、事業主(会社)は無期契約にしなくてはならなくなりました。そのため、契約期間は1年毎で更新回数の上限は4回など、勤続年数が5年以下に収まるように上限を設けている会社もあるようです」

2.ワークライフバランスを守りたい場合

仕事もプライベートも充実させたい。両方のバランスをしっかりと保ちたいという人は、次のような内容をチェックしておきましょう。

●チェックポイント:残業・休日出勤の有無やその程度

「まずは残業・休日出勤の有無やその程度を確認しましょう。厚生労働省の平成25年『労働時間等統計調査』によると、法律で定められた労働時間を超過した時間外勤務が月45時間以下の企業は98%で、そのうち約70%の企業は10時間以下。つまり、月の残業が45時間以上だと多いといえるでしょう」

●チェックポイント:年次有給休暇の有無やその内容

「年次有給休暇の有無やその程度も確認が必要です。法定通りなら、入社半年後に10日の年次有給休暇を取得できるようになりますが、入社時に取得できたり、半年後でも10日以上取得できたりと、会社によってさまざま。半日単位での利用ができる会社もあるので、確認することをオススメします。書面に詳細が書かれていないことが多いので、会社に聞いてみましょう。
また、有給休暇の平均取得率を聞いておくこともポイントです。厚生労働省の平成27年『就労条件総合調査』では、取得率は47.3%となっていますので、これを基準に判断するとよいでしょう」

3.結婚後、出産・育児と仕事を両立させたい場合

結婚し出産・育児を経験しても仕事も続け、両方のバランスを守りたいという人は、次のような内容をチェックしておきましょう。

●チェックポイント:産休や育休制度の内容と利用状況

「出産・育児とのバランスを保つには、会社に産前・産後休業制度(産休)や育児休業制度(育休)などの内容を確認しておく必要があります。しかし、『労働条件通知書』や『労働契約書』では触れていないことが多いので、『就業規則』や『育児介護休業規程』を見せてもらいましょう。育児休業の期間は、原則子の1歳の誕生日の前日までですが、一般的に、大企業では法定を上回る企業が多く、中小企業では法定通りの企業が多い傾向にあります。実際、どれくらいの人が利用しているかなどの実績を聞くこともポイントです」

●チェックポイント:育児休業以外の制度は法定通りに取得できるか

「育児介護休業法では、育休のほか、“短時間勤務制度” “所定外労働の免除制度” “法定時間外労働の制限” “深夜業の制限” “子の看護休暇”が最低限、用意されているはずなので、こちらもしっかりと制度が整っているのか、確認しておきましょう。
特に“子の看護休暇”制度は、就学前の子を病院に連れて行ったり、予防接種や検診のために使えたりするものですが、それが半日単位で利用できたり、有給で取得できたりすると、両立の助けになるでしょう」

●チェックポイント:フレックスタイム制度・始業終業時間の繰り上げ下げ制度の有無

「フレックスタイム制度や始業終業時間の繰り上げ下げの制度の有無も、『就業規則』で確認しましょう。これらの制度があると、時間の融通がついて出産や育児との両立がしやすくなると思います」

4.退職を検討する場合

いずれは退職や転職を検討する場合も、再度、今の会社から提示された『労働条件通知書』や『就業規則』を確認しておくことで、スムーズな退職が可能です。

●チェックポイント:退職は何ヵ月前に申請する必要があるか、退職金の有無、有給休暇の買い取りが可能かなど

「退職する場合、まずは、何ヵ月前に申請する必要があるのかを『労働条件通知書』や『就業規則』で確認しましょう。退職金の有無も、書面で詳細が確認できます。
また、会社によっては有給休暇買い取りに応じてくれることもあります。こういった規程は通常、書面には書いていませんので、希望するなら人事担当者に要相談です」

さらにワークライフバランスを追求するなら「就業規則」の確認を!

最後に新田さんに、ワークライフバランスを守って働くためにチェックすべき書類についてのアドバイスをいただきました。

「『労働条件通知書』や『労働契約書』でワークライフバランスを守るために見るポイントをご紹介しましたが、これらの書面だけで働きやすい環境かどうかを十分に読み取ることは、むずかしいのが実状です。そのため、労働条件について会社から説明を受けるときに、書面を確認するだけではなく、しっかりと質問をするなどして判断をしましょう。
特に『就業規則』には、『労働条件通知書』や『労働契約書』には通常書かれていない特別休暇や年次有給休暇の取得要件などの詳細や、妊娠中や子育て中に利用できる制度などの記載があることも。
また、転勤配慮、在宅勤務制度や育児を理由に退職した人への再雇用制度があるかどうかなども、ワークライフバランスを守って働けるかどうかの重要な判断基準になるでしょう」

まとめ

自分が理想とするワークライフバランスが守れていないと感じ転職を考えている方は、採用が決定してから入社日までの間に会社から労働条件が示されますので、その際に『就業規則』も見せてもらい、本当に自分が働きやすい環境であるのかを確認しておくことをオススメします。

 

(プロフィール)
新田 香織(にった かおり)
特定社会保険労務士/キャリア・コンサルティング技能士2級
化粧品会社、専門商社での企画職を経て、平成10年より社会保険労務士として活動。その間、厚生労働省東京労働局雇用均等室の育児両立支援職場環境整備コンサルタントとして、次世代育成支援対策推進法を担当し、行動計画アドバイスおよび認定マーク「くるみん」の認定審査等を行う。
現在は、顧問先契約、コンサルティング、セミナー、執筆活動を行う。
ワークライフバランスをテーマとした企業研修・自治体セミナー、調査等の実績多数。

<主な著書>
「仕事と介護両立ハンドブック」生産性労働情報センター、共著「さあ、育休後からはじめよう」労働調査会等