突撃!ワークライフバランスの現場訪問!この会社のリモートワークがスゴイ
出社の必要がない在宅勤務=リモートワーク。気になる制度ではありますが、実態はどのようなものなのでしょうか。この制度を全従業員利用可能にしているのが、株式会社コスモスイニシア。在宅勤務のほかにも様々な働き方対応できる制度を実施している同社の狙いとは。総務人事部の石川博基さんと藤澤由香さん、経営企画部の三木美和さんにお話を伺いました。
コスモスイニシアについて
マンションや一戸建ての住宅分譲、賃貸事業、仲介事業、建築コンサルティングなど、住宅、都市生活環境に関わる事業を手掛けている株式会社コスモスイニシア。従業員数は約520人。そのうち、女性は半数を超えるそうです。
「在宅勤務の要望が増えるだろう」と先んじて導入したリモートワーク制度
コスモスイニシアでは本社での内勤業務のほか、各地にあるモデルルームで勤務したり、営業で外回りをしたりと、業種や部門によって働く場所が異なります。
「2011年の東日本大震災を機に、緊急時でも業務をストップしないような勤務形態や環境の見直しを検討し始めました。そして2014年の本社移転の際に、全従業員のパソコンをデスクトップ型からノート型に変更。働く場所の選択肢が一気に広がりましたね」(石川さん)
さらに出産休暇、育児休暇から復職する従業員はほぼ100%と、出産経験のある従業員も多いので、子どもの突発的な事情などで在宅勤務の要望が増えるだろうと予想し、先んじてリモートワーク制度を整えました。
現在のリモートワーク制度は、月に4回(4日)まで自宅での勤務が認められるというものです。出社する必要はありませんが、場所は自宅に限ります。仕事の始まりと終わりの際に、上司に報告のメールをすることが義務づけられています。
「子どもが風邪をひいたときや、インフルエンザなどの病み上がりの段階など、体調はいいけれど出社できないというときなどの突発的な事態に使われることが多いですが、『夕方から旅行にいくために午前中は自宅で勤務する』というような使い方も可能ですよ」(藤澤さん)
現在、従業員の半数以上がリモートワーク制度を利用したことがあるそうです。また、外回りのある営業職や専門職だけではなく、内勤の一般職や事務職といった、全従業員が利用できるというのも、大きなポイントではないでしょうか。
「当社は、職種等によってあまり差をつける社風じゃないんです。やるならみんな同じ。あとは、緊急時に業務がストップしないような環境を整えたいという意味もあって、職種を決めずに始めたという背景があります」(藤澤さん)
「私は、普段問い合わせが多い部署に勤務しているため、なかなか一つの作業に集中することができないのですが、自宅勤務のときは集中して資料づくりなどを行えるので、仕事がはかどりますよ」(三木さん)
育児経験者を中心にした「ワークスタイルイノベーション」プロジェクトを実施
リモートワーク制度のほか、時短勤務(Limited制度)も整備されている同社。通常7.5時間勤務のところを、育児中または介護中の従業員は男女ともに5時間または6時間の時短勤務を選ぶことができます。また、育児中の従業員に対しての取り組みは制度だけではありません。
2014年から育児を経験しているお母さんたちを中心に、育児中の従業員が働きやすい環境をつくっていこう、働き方を変えていこうという「ワークスタイルプロジェクト」を立ち上げました。
「復帰した従業員から、『復帰するときはすごく不安だった』という話や、これから実際に復帰する従業員からも『先輩ママがどのような工夫をしているのか話を聞いてみたい』という意見があって、そういった不安を復職前に解消できるよう、復職予定者が育児中の従業員とコミュニケーションを図る『顔合わせ会(育休復帰者交流会)』を実施しています。今は復帰する直前のタイミングで年に1回行っているのですが、『参加前は不安だったが、参加後は復職が楽しみになった』『会社の状況を聞けて、取り残されていくのではという不安が取り除かれた』と、参加した従業員にも好評です。今は『もっと定期的にやりたい』という声もあるので、増やそうか検討しています」(藤澤さん)
そこから発展して、2015年からは『ワークスタイルイノベーション』という取り組みを展開。会社全体として多様な働き方に対応し、全従業員の働き方を変えることで、結果として育児はもちろん、介護をしている人たちも働きやすくなるのではと考えたためです。
『ワークスタイルイノベーション』では、従業員の「時間あたりのパフォーマンスを向上させる」ことを目的として、就労時間の制約や休日出勤の原則禁止といった労働時間ガイドラインを設けた他、自宅だけではく、社内に設けられたフリースペースでも自由に仕事ができるよう業務用パソコンを軽量のものに変更したり、会議を積極的にSkypeで行うことで移動時間を短縮したりと、様々なことを実行しています。
「全従業員の時間当たりのパフォーマンスを上げるために、まずは就労時間の制約を設けました。残業は原則20時まで。どうしても20時を超えて残業したいという場合は、承認を得た上で22時まで。そして休日出勤は原則禁止。時間を制限するものの、成果は向上することを期待しています。実施後は、業績は当初の目標通り、労働時間は深夜残業時間が35%、休日出勤が79%削減し、全員の時間当たりパフォーマンスがアップしたと思います」(石川さん)
ワークスタイルイノベーションを実施し、時間当たりのパフォーマンスが上がることで、これまでと同じ仕事をする時間が減り、新たな時間が創出される。創出された時間を次なる価値創造に充てるとともに、ワークとライフがシナジー効果を発揮するようなプライベートの時間の使い方を実践してほしいと思っています。従業員の中には、空いた時間をスポーツにあてて、セーリング(ヨット)という競技で国体に出場した人もいるのだそう。
ただし現状会社全体で設けたルールは時間の制約のみ。部署や部門それぞれの働き方の改革やルールを作ることが求められています。
「たとえばあるマンション分譲部。一番忙しい時期が落ち着いたらモデルルームを1週間閉めて、全員1週間休みにしていました。それまでは頑張る、という働き方ですね。驚かれるかもしれませんが、それが認められているんです」(藤澤さん)
ワークスタイルイノベーションの一環として、社内に様々なソファやテーブルなどを配置したフリースペースも設置されました。誰もがその場所に来て、自由に仕事をすることができます。気分を変えつつアイデアを練ったり、他部署の人と意見を交わしたり。ここにも自由な社風が表れていました。
まとめ
突発的な事態に使われることの多いという、コスモスイニシアの「リモートワーク制度」。一般職なども含めたすべての職種の従業員も利用でき、子どもの発熱で保育園に預けられないといった突発的な事態が発生しやすい、育児と仕事を両立する方にとっても、ありがたい制度なのではないでしょうか。また制度だけでなく、先輩ママとの「顔合わせ会(育休復帰者交流会)」など、育児休暇後の復帰時の不安を取り除いてくれるようなフォロー体制が整っている、コスモスイニシアのような会社であれば、今後結婚や出産を経験するU29女子も安心して働いていけそうですね。