アドラー心理学に学ぶ!仕事のストレスに負けない8つの習慣とは?【前篇】
仕事で疲れ切った心に効く、アドラー心理学とは?
実はアドラーの教えを実践、そして習慣づけることで、働く上での悩みも乗り越えられる、とカウンセラーの岩井俊憲さんは言います。
そんな岩井さんの著書『働く人のためのアドラー心理学』(朝日新聞出版)から、前篇・後篇の2回に分けて、仕事のストレスに負けないために使える、アドラー心理学の考え方をご紹介。
まず前篇では、アドラー心理学の基本を分かりやすくご説明します。
アドラー心理学ってどんなもの?
精神疾患を抱えた人を研究対象にしたユング、フロイトに対して、アドラーは健常者を観察対象にしました。つまりアドラー心理学とは、精神疾患ではないものの、日常の生活の中で少し心が疲れてしまった多くの人々を、前向きにさせるためのアプローチなのです。
そんなアドラー心理学の基本は5つの理論にあります。「自己決定性」「目的論」「全体論」「認知論」そして「対人関係論」です。
1:自己決定性
『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より
たとえ同じハンデを持っていたとしても、かたや悪い方へと落ちていく人もいれば、かたやパワフルに、前向きに生きる人もいる。つまり、どんな状況であれ、どのような人生を歩むかは自分自身が決められるということです。
2:目的論
『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より
一体どういうことなのか、具体例を挙げてみましょう。
仕事のストレスや疲れが「原因」ではなく、「会社に行きたくない」という「目的」があるから具合が悪くなると考えます。
『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より
原因ではなく、目的に重きを置くのがアドラーの考え方です。人間の行動や感情には方式、公式があるとは一概に言えないので、原因に対して「何故?」「どうして?」と出ない答えを突き詰めていくと、答えが出ないまま自分を追い込んでしまうこともあります。
上の具体例だけだと冷めた考えのように感じるかもしれませんが、「会社に行きたくない」という目的がだめだ、というわけではなく、目的、この場合であれば「会社に行きたくない」気持ちをどうすべきか、つまり、これからの未来をどうするのかを考える方が建設的である、ということなのです。
3:全体論
『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より
意識と無意識、理性と感情、心と体―――。人間は二面性があるように語られることが多いですが、そもそも人間はその全体で一つの個であり、部分部分に分けることはできない、ということです。
例えば、明日の仕事に備えて早く寝なきゃいけないのに、ついついスマホをいじってしまう、締め切り間近のタスクがあり、早めに手を付けなければならないのに、明日の自分に回してしまう、いわゆる「分かっているのにやめられない!」という状況。
理性(分かっている)と、感情(やめられない)がバラバラの状態ととらえられがちですが、アドラー心理学では、これはシンプルに「やめたくない」ということなのです。
2の「目的論」を前提とすると分かりやすいのですが、「友達と連絡をとりたい」からスマホをいじり、「早く帰りたい」から今日は仕事に手を付けない。何かしらの「目的」があるから、理性も感情もまるっと含めて、「やめない」「やめたくない」と判断しているということになります。
4:認知論
『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より
同じ出来事に対してでも、受け取り方は人それぞれ、ということがよくありますね。それがこの「認知論」です。
ただしこの考え方が当然であるとはいえ、自分独自のとらえ方が歪みすぎている場合は直した方がよい、というのがアドラーの考え方。ちょっとミスをしただけで、もう自分はこの仕事に向いていないなど、極端すぎる思考によって生活に支障がでてくる場合は、自分のとらえ方が誤っていないか、見直すべきでしょう。
5:対人関係論
『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より
部下が失敗をするとこっぴどく責め、上司が同じようなミスをすると「よくありますよね」などと言ってフォローにまわる。このように、相手によって行動、感情に違いがでてしまうことがあります。
逆を言えば、行動や感情には「相手役」が必要で、例えば部下なら「二度と失敗しないように怖がらせたい」から怒り、上司には「嫌われたくない」からフォローにまわるなど、必ず「目的」があります。
つまり、人間の行動と感情には、「相手役」そして「目的」があるとみる考え方なのです。
【後篇】ではこの基本をもとに、「もう疲れた…」とついついため息をついてしまう働く人へ、習慣とすべき8つの考え方をご紹介します。
生き方がちょっと楽になる考え方に出合えるかもしれません。
参考書籍:『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)