U29(ユニーク) 女子プロジェクト

アドラー心理学から簡単に学ぶ「未来志向」のポジティブ転職

心理学なんて難しそう…と思うかもしれませんが、「アドラー心理学」は実は非常にシンプル。今回は、アドラー心理学を応用したカウンセリングや研修を30年以上行っている、ヒューマン・ギルド代表取締役の岩井俊憲さんに、アドラー心理学に基づく後悔しない転職の考え方を聞いてみました。

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最初にアドラー心理学に基づいたアドバイスから。
「今の職場が自分にミスマッチと感じるなら、次の職場というチャンスを探せば良いのです。仕事にコントロールされるのではなく、仕事の主役になることが大切。あなたはあなたが思っている以上のリソース(持ち味)があります。
転職に悩んだとき、やってはいけないのが、人に自分の問題点を聞いて、自分の魅力を打ち消してしまうこと。まずは、人に自分の長所・魅力を聞いてみて、それを謙虚に書き出してみてください。自分でもその可能性に驚くでしょう。
何がチャンスなのか、自分に何ができるか考えることが重要です。何が問題かではなく、何ができるか、何をしたいのか。発想を変えることで、受動的な生き方から、能動的な生き方に変わることができます」

さて、これを読んでどう感じましたか?
誰もが一度は考える転職ですが、「私は〇〇ができないから、この仕事…」というネガティブな転職ではなく、「本当にやりたいことを実現するため」「自分の理想のライフワークを手に入れるため」という目的のあるポジティブな転職をしたいもの。
そんな手助けをしてくれるのが、今注目されている「アドラー心理学」です。

簡単に理解できる、たった3つのポイント

アドラー心理学は、「自己決定性」「目的論」「全体論」「認知論」「対人関係論」という5つの基本と、勇気づけという技法、共同体感覚という価値観で構成されていますが、極端な話、このうち「自己決定性」「目的論」「勇気づけ」だけを覚えるだけで実践できるほどシンプルなのだとか。

1.自己決定性:あなた自身がどうなるか、どう変化するかも、自分で選択できる

「アドラーは、『人間は自分の運命の主人公である』と言っています。例えば、生まれつき目が悪い、兄より学力が劣っている、という過去の中で劣等感を持っているとしても、『目は悪いけど、手先の器用さを生かそう』という建設的な方向か、『どうせ兄には勝てないから、家にひきこもろう』という非建設的な方向を、どちらも自分で選ぶことができますよね。そして、建設的な方向を選択することで、他者を悪者扱いすることがなくなる上に、知恵が涌いてきます。あなたを作るのはあなた、あなたを変えるのもあなたなのです」

2.目的論:過去の原因を探しても解決にはならない

「人の行動には必ず目的があります。アドラー心理学は、変えられない過去の原因から『〜だから〇〇』と考えるのではなく、創造できる未来に向けて『〜したいから○○する』と考える未来志向です。過去の原因探しは解説にはなりますが、解決にはなりません」

3:勇気づけ:困難を乗り越える力を与える

「勇気づけとは、困難を克服する活力を与えることです。アドラー心理学では、前述した5つの基本理論をもとに、「◯◯がだめ」ではなく「◯◯がよい」といった、人のマイナスの面ではなく、プラスの面に目を向ける『加点主義』や、仕事でミスをしてしまったけれど、このミスから何を学べるだろうかといった、失敗を受け入れる『失敗の受容』などの『勇気づけ』の技法を使って、自分や他人にアプローチします。これが不足すると、悲観主義や自己否定に陥ってしまいます」

アドラー心理学の実践例

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それでは、この「自己決定性」「目的論」の考えや「勇気づけ」の技法を応用した例を聞いてみましょう。転職によくある悩みを例に、岩井さんに聞いてみました。

1.「自己決定性」の応用
Q.今の会社が合わず、転職をしたいのですが、今までよくしてくれた上司や先輩を裏切るような気がして、気が進みません

A.転職はミスマッチを修正することです
「最初の就職は、知識経験不足なんです。会社のブランドやイメージで就職してしまい苦しんでしまう。でも、それは自分にマッチしていない会社を選んでしまっただけ。転職は、ミスマッチの修正であり、会社を裏切ることではありません。会社のための自分ではなく、自分のための会社と考えましょう」

2.「目的論」の応用
Q.今の仕事が自分に向いているのか分かりません。やってみたい仕事はあるのですが、今の自分に出来るかどうか不安です

A.ゴールから現在を見ましょう
「重要なのは目的。つまり『結局、あなたは何がしたいのですか?』『5年後、10年後、あなたはどんなライフスタイルを送っていたいですか?』ということなんです。過去の延長線上に自分を見るのではなく、未来の自分がいる場所から今を見てください。理想の未来から逆算して階段を降りていったとき、今の仕事や環境が適切なのか、目的のためにすべきことを考えてください」

3.「勇気づけ」の応用
Q.転職活動をしているのですが、希望の会社に採用されません。不採用の度に、自分を否定されているような気分になり憂鬱です

A.自己否定の必要はありません。自分自身を信じましょう
「転職でよくあるのが、一度や二度の失敗で、自己否定に走ること。たしかにあなたに欠点はあるかもしれない。しかし、それは会社とあなたとのミスマッチなだけであり、自分を否定することではありません。例えば「資格がないから採用されないんだ」と自分を否定する減点方式で捉えるのではなく、「私は人と接することが得意だし、そこを活かせる会社が必ずあるはず」というように、加点方式で自分のことを捉え直しましょう。そして、現実をしっかり見つめた上で『私は大丈夫』と、自分を勇気づけ、信じてあげることが大切。あなたを必要としている企業は必ずあります」

まとめ

最後に、岩井さんからU29読者へメッセージをいただきました。

「原因探しの旅に出ることはやめて、未来志向な生き方をしましょう。『あなたは5年後どうありたいですか?』と聞かれたときに即答できるような、未来のビジョンやミッションが備わった生き方をしてほしいのです。転職においても、そもそも自分は何がやりたいのか、自分の原点は何なのか、アドラー心理学はそのようなことにも向き合えます」

もしも今、仕事や転職でネガティブになっているなら、アドラー心理学を応用して、ポジティブな仕事、転職活動に繋げてみませんか?

 

(プロフィール)
岩井 俊憲(いわい としのり)
1970年、早稲田大学卒業。外資系企業の管理職などを経て、1985年、有限会社ヒューマン・ギルドを設立。代表取締役に就任。アドラー心理学を中心にカウンセリングや心理学の各種講座を行うほか、企業や自治体などで、アドラー心理学に基づく勇気づけやリーダーシップ、コミュニケーションの研修などを実施している。研修の評判は非常に高く、経営者、企業のリーダー・管理職、会社員、学生、主婦まで、幅広い層の人々から人気を博している。著書は『マンガでやさしくわかる アドラー心理学』(日本能率協会マネジメントセンター)、『勇気づけの心理学 増補・改訂版』(金子書房)、『人間関係が楽になるアドラーの教え』(大和書房)など。

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