突撃!ワークライフバランスの現場訪問!この会社のIターン転職がスゴイ
出身地ではない土地に移り住んで働くIターン転職。生活スタイルをも一変する転職ですが、働き方はどのように変わってくるのでしょうか。沖縄県でIターン転職者を積極的に採用している、株式会社レキサスのコーポレートデザイン部・安田陽さんに、なぜIターン転職に力を入れているのか、実際にIターンで入社したプロダクト企画開発部マネージャー・大西敬吾さん、タレントマネージメントチーム・山崎真由美さんに、Iターン転職の経験談を伺いました。U29女子が、今後の人生を考えるヒントにもなりそうです。
レキサスについて
レキサスは、沖縄県うるま市にあるIT企業。自社オリジナルのインターネットアプリケーションやスマートフォン向けのアプリケーション開発・販売、自社オリジナルのクラウド運用などのサービスを提供しています。全社員60名のうち、Iターンで入社した社員が20名と、約3割がIターン転職者。女性社員は全体の3割程度である16名、うち3名がIターン転職者です。
レキサスのIターン転職とは?
レキサスがIターン転職者の積極的な採用をはじめたのは2007年頃、きっかけは何だったのでしょうか。
「1998年の創設当初は、沖縄出身の社員がほとんどでした。取引先は東京や大阪など本土のお客様が9割を占めていたのに、本土の仕事に対する緊張感についていけないことがあったんです。のんびりした沖縄の人ばかりだと、本土の価値観とズレが生じてしまう。これを改善するため、東京で活躍されていた方に入ってもらい、日々の業務の中で転職者の働き方を見せながら、人材を育てていこうという考えが出たんです」(安田さん)
まずは人づてにIターン希望者を募集。次第にホームページや就職サイト、IターンUターン就職イベントなどで募集するようになっていきます。現在は、中途入社の応募が年間150名ほど。そのうち7割がIターンまたはUターンといった県外からの就職希望者となりました。
期待していた「人材教育」の面でも効果が出ているようです。
「沖縄にはIT企業自体が少なく、キャリアを積んで働いている人が少ないんです。そのため沖縄出身の新卒社員は、働き方の選択肢が少ないんですよ。今は、県外からの転職者が、キャリアアップのモデルケースになり、若い社員が今後のキャリアについて考えるきっかけになっていますし、仕事にも緊張感が出たように思います」(大西さん)
Skype面接にも対応!Iターン転職の取り入れ方
選考には充分に時間をかけ、遠方の場合、最終面接以外はSkypeでのWeb面接を実施するなど、柔軟に対応しているレキサス。最終面接で沖縄を訪れた際は、どこのホテルが良いといった細やかなフォローも行っています。また、Iターン転職希望者には、メリットだけではなくデメリットもしっかりと伝えるようにしているのだとか。
「選考の際に私たちが気にしていることは、弊社のビジョンに応募者の方の気持ちが沿っているかどうか。やっぱり『沖縄に移住したいから』という理由だけでアプローチしてくる方が少なからずいらっしゃるので。でも我々は、『沖縄を拠点に海外に向けた事業を行う。沖縄県の経済基盤を変える』という大きな目的がある。選考に充分時間をかけて、弊社で働くメリットとデメリットをちゃんと説明し、入社後のミスマッチを防ぐようにしています」(安田さん)
「私は最終面接の一つ前の面接を担当しているんですが、まず、物価が違うので収入が明らかに下がることを必ずお伝えしています。3~4割は下がりますし、僕も実際に4割程度下がりました。実際に生活を始めると、お金をあまり使わないし物価も安いので、デメリットとは感じなくなりますけどね」(大西さん)
人生のセカンドステップを求めて東京から沖縄へ
「移住はもちろん不安でした。レキサスじゃなかったら来なかったかも」と語るのは、広島、東京の大手家電メーカーで開発環境の製作に長く携わっていた大西さん。2013年に東京の会社を辞め、夫婦で沖縄に移住。レキサスに入社しました。
「妻が沖縄出身でよく一緒に帰省していたので、なじみはありました。東京では夫婦で働きづめでしたが、2011年の東日本大震災をきっかけに、家族の暮らし方について真剣に考えたんです。これから子どもも欲しい、でも今の環境で働きながら子育てをするイメージがわかない。そこで子どもがまだいないうちに、沖縄への移住を決めました」(大西さん)
奥さんは沖縄出身だから家族や友人がいます。しかし大西さんは行く前は不安だらけだったそう。
「友達もいないし、孤島に行くような感覚でした。仕事に対しては、問題があれば自分が変えれば何とかなると思っていたので不安はなかったんですが、知り合いがいないことや、趣味のテニスが続けられるかなど、生活の面で悩みました。でも行ってみたら何とかなりましたね(笑)。今は移住して3年になるんですが、時間をかけてコミュニケーションを取っていくことで、仕事でもプライベートでもいろんな人と気軽に話せる間柄になれたし、趣味のテニスも続けられています」(大西さん)
そしてもうひとり、レキサスにIターン入社した女性にも話を伺いました。2011年1月に入社した山崎さんは沖縄で結婚し、現在は出産のために神奈川県に帰省中。レキサス入社時は独身でした。なぜひとりで沖縄に転職しようと思ったのでしょうか。
「東京の大手半導体メーカーで人事の仕事をしていましたが、合併して大企業になることがわかり、それを機に転職を考え始めました。社員ひとりひとりと向き合う人事がしたかったし、沖縄なら移住もありかなって。というのも私の趣味はスキューバダイビングで、旅行でしょっちゅう沖縄に来ていたんです。探し始めると、沖縄では人事や人材育成の募集がほとんどなくて、1年近く探して最後に見つけたのがレキサスでした」(山崎さん)
めでたく採用が決まり、いざ移住。しかし山崎さんには様々な課題が待っていました。
「まずは家族や友人たちの猛反対にあいました。両親は『海外に行くぐらい遠く感じる』と不安がっていましたね。私自身が不安だったのは、どうやって住む場所を探したらいいのか、通勤に使う車はどこで買えるのかなど、生活の準備について。何もわからなかったので、沖縄の友人にいろいろ教えてもらったり、インターネットで不動産屋のアポイントを取ったり。前の会社の有給休暇を使って沖縄に行き、1週間ですべてを決めました。情報収集は事前にしておいたほうがいいと思います」(山崎さん)
山崎さんは移住してから家族や友人のため、SNSやブログに自分の様子をこまめにアップするようになったそう。両親や友人の心配もなくなり、今ではみんな喜んで遊びに来てくれるそうです。
働き出したら驚いた、東京と沖縄の違い
それぞれ東京からIターン転職で移住してきた、大西さんと山崎さん。ふたりとも沖縄になじみがあったとはいえ、実際に働き始めて困ったことはなかったのでしょうか。話を伺うと、文化や、都会から地方へ移住したことによる環境の違いに最初は戸惑ったといいます。
「沖縄には、どんな人もみんなつながっている、みんな仲良くしようといった『ゆいまーる精神』というのがあります。そのため、例えば会議で人を傷つけてしまうような可能性がある否定的な発言を誰もしないんです。それではいろいろな意見が聞けないので困りましたね。
なので、社内はもちろん、社外でもコミュニケーションをたくさん取るようにして、「否定的な意見でも、言っていいんだ」ということを根気強く伝えるようにしました。今はみんなしっかり意見を言ってくれるようになりましたよ。
もう一つ驚いたのは、問題が発生すると、普通の会社だと『こっちが大変だから手伝って』と指示する必要がありますよね。だけど沖縄ではみんなで自然とフォローし合うんです。入社して一番印象的な出来事でした。これも『ゆいまーる精神』からくることだと思います」(大西さん)
「情報を得るのが大変だなと感じました。例えば、私の場合人事担当者向けの研修など、東京なら当たり前のようにあるセミナーが沖縄にはない。インターネットでしか情報収集ができないし、電車に乗らないので街の会話が耳に入ってこない。
これは良くないと、上司にプレゼンして必要だと認められれば年に2回、県外に出張に行ける県外渡航制度を作ってもらいました。私はこの制度を利用して、東京に行く時には前職の人たちとたくさん会ったり、会社のための情報収集をしたり、さまざまなことをしています」(山崎さん)
Iターン転職は子育て面でのメリットが多い?
都会での子育てが想像できず、沖縄への移住を決めた大西さん。実際に移住後、父親となり、沖縄での子育てはうまくいっているのでしょうか。
「沖縄は家族でサポートするのが当たり前の文化なので、子育てがしやすいと思います。最近は妻の実家でご飯を食べることが多いんですけど、周りに姪っ子や甥っ子が5人くらいいつもいて。大人を含めると常に10人ぐらい人がいる中でご飯を食べるんです。みんながみんな子どもを見ているので安心感がありますね。それは知り合いじゃない街の人たちも同じで、スーパーで買い物してるときに子供が泣いたりすると、近くにいるおばちゃんが来て抱っこしてあやしてくれるんです。都会じゃありえないですよね」(大西さん)
山崎さんは、沖縄で出会った自分と同じ県外からの移住者の男性と結婚。現在出産のために里帰り中です。沖縄での子育てにどんな印象を持っているのでしょうか?
「会社の先輩ママから子育ての話を聞くことがあって、子どもを連れて移住した人もいたんですが、沖縄は子育てがしやすいと言っていますね。
都会だと、ベビーカーで混んだ電車に乗って周りに気を遣いながら出勤したり、そういった場面で周りの人たちが冷たかったり、という経験をしたことがあったらしくて、地方だと出勤はマイカーで気を遣わなくていいし、自然も多くて自分がリラックスできているので、子どもも穏やかに過ごせる。子どもへの影響が全然違うと言っていました」(山崎さん)
お二人に「移住してからの生活や働き方の変化」について伺ったところ、大西さん、山崎さんが口を揃えたのが「圧倒的なストレスの軽減」でした。
「仕事をする上で、どうやってストレスを消化するのかっていうのは大切なポイントだと思うんです。その点で、自然が豊かで非日常をすぐ近くに感じられる環境があることは、いいメリットだと思います。人工的な建物の中よりも、圧倒的にリフレッシュできますよ」(大西さん)
「私は東京にいたときより今のほうが働いているぐらいだけど、ストレスはすごく減りました。以前はがむしゃらに働いて貯めたお金で、海外や沖縄に行ってストレス発散していたけれど、今は毎日の中でオンオフを切り替えられる。会社の外に一歩出たらもう、美しい自然がありますからね」(山崎さん)
山崎さんは、Iターン転職を経て仕事に対する考え方にも変化があったと言います。
「年齢もあると思いますが、20代後半ぐらいまでは『キャリアを積み上げていって、達成感や、やりがいのある仕事をしたい』と思っていました。沖縄に移住してからは『社会貢献や街のためになることって何だろう』ってことをより考えるようになりましたね」(山崎さん)
月32時間まで社外で働ける! 働き方にも多様性を
Iターン希望者を積極的に受け入れているレキサス。県外、海外出身者もいるため、働き方にも多様性を持たせています。「テレワーク制度」は、なんと月に32時間まで社外で仕事ができるシステム。働き方の可能性が広がりそうです。
「出身地はもちろん、既婚者や子どものいる人など、いろんな人がいる会社なので、みんなが働きやすい労働環境を提供したいという思いが根本にあります。『テレワーク制度』は子どものいる女性が使うことも多いですね。短い時間から始めて、32時間になりました」(安田さん)
「資料を作るために集中したいとき、僕はテレワーク制度を使ってカフェで仕事をします。家の近くのカフェで夕方まで資料を作ったら、そのまま速攻で帰宅して。子供をお風呂に入れて、一緒にごはんを食たり、仕事が残っていたら子どもが寝てからまた仕事をしたり。そういうことができるようになりました。おかげで子どもや家族との時間が明らかに増えましたよ。時間の分割もできるので、午前中は自宅で仕事をして午後から出勤することもあります」(大西さん)
まとめ
仕事はもちろんのこと、働き方や生活にも大きな影響があるIターン転職。Iターン転職された方にお話を聞くと、休日の過ごし方やお金の使い方といった生活面や、マイカー通勤・豊かな自然といったリフレッシュできる職場環境など、実際にさまざまな面で変化があるようです。特に、子育てのしやすさなど、今後結婚や出産を考えているU29女子にもメリットがありそう。自分の働き方や、この先自分らしく働くための職場環境を考えたとき、一つの選択肢として考えてみてもいいのかもしれませんね。