いよいよ「副業」「複業」が解禁に! ダブルワークを始める前に知っておきたいこと
もし、あなたの会社で副業が認められたら? ダブルワークの現状や注意したい点などを、特定社会保険労務士の髙山英哲さんにうかがいました。
副業のスタイルは、主にふたつ
2014年度の中小企業庁の調査(※)では、副業を認めている企業は14.7%でしたが、その後、徐々に増えてきています。今回のモデル就業規則の改定で、副業が事前の届出制で認められるようになり、多様な働き方の選択肢がさらに増えていくでしょう。
一般的にいう「副業」とは、メインの仕事の休みや合間にサブの仕事をすることです。目的は大きく分けてふたつあります。ひとつは、所得の補てん(収入アップ)のためです。仕事帰りや休みの日に短時間のアルバイトをするようなイメージです。
もうひとつは、主に夢を実現するためです。その場合「複業」とも書きます。たとえば、アーティストを目指して夜はライブ活動をしたり、カフェ開業の勉強のために飲食店でアルバイトをしたり、クリエーターとして作品を販売するなどが該当します。ある程度収入のベースがある30代は、夢を追って複業をするというケースも多いようです。この場合は、どちらがメインの仕事かはっきり区別できないところもあり、本業がふたつ以上あるともいえるでしょう。
リモートワークや派遣などの働き方によって、副業・複業はしやすくなりましたが、勤務先が2社以上となると、正社員として両立していくのは現実的にはなかなか難しいかもしれません。また、アクセサリーの制作、Webデザイナー、イラストレーターなど、個人事業主としての副業・複業が増加傾向にあるというのも、社労士の仕事を通じて実感しています。
※中小企業庁「平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書」
アラサー女性が副業・複業するとき、注意したいこと
厚生労働省のモデル就業規則改定では、副業・複業を「原則禁止」から「事前届出制」とするとしていますが、副業・複業申請に対する判断基準は会社によってまちまちです。副業・複業をするときは、自分の会社の就業規則がどうなっているか、きちんと確認しましょう。
仮に就業規則で「事前届出制」となっていても、実際に届け出た際、正社員からパート社員などへ雇用形態の変更を持ちかけられることがあるかもしれません。ここで注意したいのは、雇用形態や所定労働時間の変更によって、社会保険や雇用保険の被保険者の資格を喪失する可能性があることです。
とくにアラサー女性にとっては、ライフスタイルが大きく変わる時期です。副業・複業に伴い労働条件を変更することで、出産手当金、出産育児一時金、育児休業給付など、多い人では合算して数百万円を受給できないことになりかねません。
また、副業・複業先が同業他社の場合、会社競業避止義務や情報漏えい防止の観点から、禁止または制限されることもあります。さらに、会社のイメージや信用を損なうような仕事も「ノー」と判断されるかもしれません。会社に届け出る際は、副業・複業で具体的にどういったことを行うのか、なるべく詳しく説明しておくのがいいでしょう。
副業・複業に向いているのはこんな人
副業・複業に向いているのは、まず仕事とプライベートの両面で時間管理ができる人です。次に、健康管理がしっかりできる人。副業・複業をすると、労働時間も長くなることが考えられるので、食事や睡眠が二の次にならないよう、自己管理をしなければなりません。さらにいうと、一方の仕事が忙しくなると、もう一方の仕事が疎かになりがちなので、両立させるモチベーションを維持する必要があります。
また、所得の補てんが目的の副業は、給料という形で成果がわかりやすいのですが、個人事業主やフリーランスなどの複業になると、本人の努力や実力次第で、仕事に時間がかかったり、成果が見えないこともあるでしょう。そこであきらめずに続けられるかどうか、というのも大事ですね。
人脈を得られることが、副業・複業の大きなメリット
副業・複業には所得の補てんや、自分の夢の実現などさまざまなメリットがありますが、人脈を得られることもそのひとつ。実は、私も複業経験者で、社会保険労務士を開業した頃、複業として夜間コールセンターで働いていました。そこには、同じように独立を目指す仲間もいました。複業先で出会った人たちを通して、後の仕事に発展することもあります。パイプ、コネクション、友情などは、副業・複業で得られる大きなメリットではないでしょうか。
特定社会保険労務士。髙山社会保険労務士事務所所長。就業規則の作成や、給与計算、定額残業代の設計・運用、長時間労働や未払残業代への対応などのほか、雑誌や専門誌での執筆も手掛ける。
※この記事は2018年1月時点での情報です。