異業種への転職も、仕事と子育ての両立も自分次第でうまくいく
「自分を変えたい」と思ったとき、みなさんはどんな行動を起こしますか?
引っ越してみる、いつもとは違う友だちに会ってみる、職場を変えてみるのも一つの方法かもしれません。でも、転職にはなかなか勇気がいりますよね。
そこで、さまざまな理由で過去に転職をした先輩女性に、一体なにを変えたかったのか、そして転職により、なにが変わったのかを伺います。みなさんの迷いを解決するヒントが見つかるかもしれません。
今回ご紹介する戸来聡子(へらいさとこ)さんは、大学卒業後、資格試験予備校に事務職として就職。6年間勤務するなかでデザイナーという仕事に興味を持ち、異業種への転職を決意します。デザインスクールに通い、見事、未経験から正社員のデザイナー職として、転職を果たしました。
現在は3歳のお子さんを育てながら時短勤務を続け、家庭との両立をはかっている戸来さん。異業種への転職や、働きながらも家庭の時間を確保する秘訣を聞いてみました。
【戸来さんから学ぶ成功の秘訣】
・常に先々のスケジュールを読んで行動すること
・パートナーにも「家事は一緒にやるものだ」と、理解してもらうこと
・仕事を家庭に、家庭の事情を職場に持ち込まないこと
「これが最後のチャンスかも」と思ったら迷いはなかった
–事務職からデザイナー職と、全くの異業種に転職しようと思ったきっかけを教えてください。
事務の仕事でパンフレットを外注したときに、デザイナーという仕事があることを知りました。そのデザイナーさんが手がけた仕事に感銘を受け、「私もデザイナーになりたい」と思ったのがきっかけです。
大学卒業時に、目的に向かって頑張る人たちを応援したいと思い、資格試験予備校の事務職として働き始めました(グラフa)。仕事は楽しかったのですが、26歳くらいのときに「会社の方針的に、これ以上のキャリアアップは望めない」と気づいてしまい、悶々としながら仕事をしていたんです(グラフb)。
元々モノづくりは好きでしたが、仕事にするイメージはなかったですね。デザイナーという職種に出会ったのが将来性に疑問を感じ始めたタイミングでもあり、今後のライフイベントの計画を考えるとこれが最後のチャンスだと思ったので、そこまで迷いはありませんでした。
–異業種転職するにあたって、どんな準備をされたのでしょうか。
転職を決意してから、デザインのスクールに通い始めました(グラフc)。仕事を続けながらでも通えるスクールだったのですが、忙しくて両立ができなかったので仕事を辞め、3カ月通いました。
当時は一人暮らしだったのである程度のお給料をもらわないと生活できないこともあり、正社員として雇ってくれるところを探していたんです。ところが、未経験ということもあり、募集条件をクリアしているところはなかなか見つかりませんでした。転職先探しには正直、苦戦しましたね。
ただ、転職条件が厳しいのは最初から覚悟していたし、スクールの卒業後はアルバイトをしながらでも就職先を探すつもりでいたので、大きな不安を感じていたわけではありません。結局1カ月半の間に3社受けて、今の会社に正社員として採用してもらいました。スクールを卒業後すぐに働き始められたのはすごくラッキーだったと思います。
仕事で全力に取り組むことが職場での理解を生む
–結婚と出産を経て、仕事に復帰されたそうですね。なにか心境の変化はありましたか?
結婚は現職に就いて3年後にしました。夫の転職がうまくいって落ち着いたタイミングで、と決めていたので(グラフd)。それから数年は仕事もプライベートも落ち着いてきた時期だったので、ゆったりしていましたね(グラフe)。結婚から3年ほど経って出産して、子どもが1歳2カ月になるまでは育休をとっていました(グラフf)。
私の母が専業主婦だったこともあり、私も家庭に入ろうかな、と漠然と思っていたんです。ただ、育休中に子どもと一緒に家にいる生活を続けていたら、「やっぱり働きたいな」って思ったんですよね。
その人その人に合った方法があるとは思うのですが、私は仕事と子育てを両立させることで気持ちのバランスをとっていくタイプなのだと育休期間中に気づかされました。
–お仕事に復帰されてから、仕事面ではどのような変化がありましたか?
出産後は時短勤務で復帰したので(グラフg)、スケジュール調整の意識がものすごく強くなりました。保育園に迎えに行く時間までに仕事を終わらせなければ、同僚たちに迷惑をかけることになってしまいます。仕事を打診されたときに、予定の時間内に終わらせられるかどうかを即座に判断する力は磨かれたと思いますね。
一方で、イレギュラーなスケジュールに対応するのが難しい分、スケジュールが決まっていたりある程度の業務量があったりするものを担当できるように、上司が調整してくれていました。
–職場の上司や同僚の理解を得るために意識していることがあれば教えてください。
当たり前のことではありますが、一生懸命やることは意識していますね。みんな同じようにお給料をもらって働いているので、「時間に制約こそあっても、勤務時間内は全力でやります」という姿勢や結果を見せないと、一緒に働く人にも失礼だと思うので。
もちろんどうしても仕事を託して帰らなければならないこともあるので、そのときは人として当然ではありますが、「本当に申し訳ない」という気持ちで心から謝ります。私が所属する制作部でも育休制度を使う人が増えてくるなど、働きながら子育てしやすい環境が整ってきてはいますが、「子どもがいるのだから早く帰って当たり前」という風にはしないよう心がけていますね。
家庭でも常に「先読み」のスケジュールで動く
–仕事をしながらも、家庭の時間を作れるよう意識していることはありますか?
家庭でも仕事と同じようにスケジュールの先を読んで行動するようにしています。平日は保育園に迎えに行く18時から子どもを寝かせる21時まで、3時間程度しか一緒にいられません。そのため、仕事は絶対に持ち帰らないですし、ご飯は子どもが寝ている間に作り置きしておくなど、子どもと一緒にいる時間はめいっぱい遊んだり話を聞いてあげたりするようにしています。
家事は夫と一緒に片付けることで、時間を確保するようにしていますね。
–旦那さんとは家事育児の役割分担を決めているのでしょうか。
最近では分業制にしたので、朝のゴミ出しは夫の担当。掃除や洗濯物干しは一緒にやりますし、平日の夜でも私が疲れているときは料理も作ってくれます。
最初は担当を決めていなかったので、ケンカも多かったです。「家事や子育ては女の人だけのものではなくて、2人でやるものなんだよ」と何度も話し合っていくうちに、かなり意識して自分から動いてくれるようになりました。
夫のほうが長い時間働いている分、どうしても家事や育児をする割合は私のほうが大きくなりますが、夫も私も「どちらかが家事や育児をして当然」と思うことはなくなりました。お互いへの感謝の気持ちを持つようになってからはケンカも少なく、家のことがうまく回るようになった気がしますね。
U29女子へのアドバイス「結婚や出産前の今こそ、やりたいことに正直になって」
–最後にU29女子にアドバイスをお願いします。
転職に関していえば、何かを「やりたい」と思っている時点で気持ちはほぼ固まっていると思うんです。「何となく今の仕事が嫌だな」と思っているなら別ですが、明確にやりたいことがあるなら、結婚や出産で選択肢が狭まる前に飛び込んでみたらいいと思います。
それでも迷うようなら親やパートナーなど身近な人のアドバイスを参考にすれば、冷静な判断ができるのではないかと思います。
働きながら家庭の時間を確保するという意味では、仕事を家庭に、家庭のことを職場に持ち込まないことが大事ですね。それは物理的にだけでなく、頭にも置いておかない。きれいさっぱり忘れて、子どもなり仕事なり、目の前のことに全力で集中することが両方にとって良い循環をもたらすと思います。
(佐々木ののか+プレスラボ)