働く女性を支えるのは“兼業主夫”!? 杉山さん夫婦がたどり着いた共働き夫婦のあり方

2016年01月08日

結婚や出産といったライフイベントは女性にとって大きな節目となります。仕事と家庭のバランスを保つには、夫の協力が欠かせません。
そこで、先輩夫婦のうらやましすぎて震える(?)ような、結婚と仕事を両立させる理想的な関係をご紹介します。みなさんがライフプランを考える際のヒントが見つかるかもしれません。

DSC_9669_Fotor_800

今回ご紹介するのは、アパレルデザイナーとして働いている杉山亜矢子さんと、フリーランスでテレビやラジオの放送作家として活躍し、最近では飲食店も経営している錠士(じょうじ)さんご夫婦です。

夫の錠士さんは自ら「兼業主夫」と名乗り、家事や育児に積極的に参加しています。12歳と4歳の娘を持つ杉山さんご夫婦に、女性が働くことの重要性や家事育児の分担、お互いの仕事との両立などについて伺います。

【杉山さんご夫婦から学ぶ成功の秘訣】

・夫も「主体的に家事をする」という意識を持つこと
・お互いの得意・不得意や、生活リズムの違いをカバーしあう形で分担すること
・いざというときに助け合えるよう、ご近所との関係性を築く努力をすること 

 

「諦めない姿を見せたい」仕事に打ち込む最大のモチベーションは娘の存在

夫の錠士さん(39歳)、次女のたまちゃん(4歳)、妻の亜矢子さん(35歳)

夫の錠士さん(39歳)、次女のたまちゃん(4歳)、妻の亜矢子さん(35歳)

-二度の産休・育休を取得してお仕事に復帰されていますが、「共働き」に対して迷いはありませんでしたか?

亜矢子さん:迷いはありませんでしたが、私が勤めているアパレルメーカーには、出産して子育てをしながらデザイナーに復帰した前例がなくて…。産休明け、一時的に別部署へ異動になりましたが、いまはデザイナー職に復帰しています。

前例がないからこそ、「家庭と仕事を両立できる」ということを証明したい気持ちがありました。それに、現在の職業は子どものころからの夢なので、結婚や出産をしたからといって仕事を辞めるという選択肢はなかったですね。

また、仕事のやりがいや自分の夢のため、というのはもちろんですが、「バレリーナになりたい」という長女の夢が一番のモチベーションになっています。金銭面からもサポートしてあげたいですし、なにより母親の困難な状況でも強い思いで道を切り開いていく姿を見せたい、という思いがあるので一層仕事に力が入るようになりました。

-そんな奥さんを錠士さんはどのように見ていますか?

錠士さん:妻が働いてくれていることの重要性はかなり感じています。やっぱり会社員として安定した収入があることや、厚生年金・有給休暇・産休・育休など、会社勤めならではのメリットを持っている人が側にいてくれるという安心感は大きいですよね。これは女性だから、というわけではなく立場が逆だとしても同じことだと思います。

小さいころからの夢を叶えていて、さらに絶対的な自信を持ってモノづくりに没頭できる妻を見ていると、同じクリエイティブの分野に関わる者としてすごく羨ましく思いますね。

長女の成長とともにあらわになった“保育園のお迎え問題”

DSC_9639_Fotor_800

-旦那さんがフリーランスとはいえ、フルタイムで働きながら子育てと両立するのは大変だったのではないですか?

亜矢子さん:そうですね。長女が生まれたときは二人ともバリバリ働いている時期だったので、保育園のお迎えが早くても20時半、遅いときは延長保育ギリギリの22時くらいにまでなってしまうこともよくありました。

お互いの家事のやり方が気になってぶつかり合うことも多かった気がしますね。たとえば、夫がセーターを乾燥機にかけてしまったり、私はダシを取らずにお味噌汁を作ってしまったり……(笑)。いまでは笑い話ですが、当時はお互いの両親もまだ働いていたので、自分たちでなんとかしなければいけないことが多く、一番キツかった時期かもしれません。

-そういった経緯もあって、旦那さんが「兼業主夫」になられたのでしょうか?

錠士さん:長女が年長のころに、「このままでは小学校にあがる長女の食事や睡眠時間をしっかりケアできない」と保育士さんに指摘されて気づいたんです。現状を改善しなければいけないことは明白でした。

亜矢子さん:会社には何度も希望を出して情熱を伝え、ようやくデザイナーに復帰させてもらった手前、わたしが時短勤務するのは厳しい状況でした。当時はまだワーキングマザーに対する社内の理解も浅かったので、熱があっても夜泣きで寝不足が続いていても、ひた隠しにしているくらいでしたから。

錠士さん:妻にはデザイナーの仕事を続けてほしかったですし、フリーランスで流動的に動ける僕が仕事量を調整することにしました。ただ、改めて「兼業主夫」と名乗り出しただけで、当時からお互いの得意不得意や生活リズムをカバーし合う形で分担していましたね。

-その後の生活にはどのような変化があったか教えてください。

亜矢子さん:夫がお迎えの時間帯には仕事がはいらないように調整してくれたおかげで、なんとか長女の生活リズムを正すことができました。いまは子どもも大きくなっているので、多少生活スタイルも変わりましたね。
基本的に夫は夜遅くまで仕事をしているので、娘たちに朝ごはんを食べさせたり次女を保育園まで送ったりという朝の家事は私が担当しています。
夫はわたしが夜に帰宅するころにはご飯を作ってくれていて、そのあとに経営しているBarに出かけていく感じです。

わたしが晩ご飯を済ませたら、21時半には長女がバレエから帰ってくるので、その前に次女をお風呂に入れて次の日の保育園の準備をしておきます。この時間帯は少しバタつきますが、以前より家事の棲み分けができるようになったので楽になりましたね。

「主体的に家事をやると決めたら、責める気持ちがなくなった」夫婦円満の秘訣とは

DSC_9632_Fotor_800

-フリーランスの夫と会社員の妻、働き方や立場が異なる相手への配慮や気遣いのポイントがあれば教えてください。

錠士さん:自分を「兼業主夫」と名乗るようになってからは家事や育児に対する意識が変わりましたね。「主体的に家事をやる」と決めてからは、相手ができないことを責めなくなりました。家が散らかっていたとしても、むしろ「気付かなくてごめん」と思う感じです。

あとは妻のスケジュールに合わせていかに無理なく家のことをやってもらうか、というのもずっと意識しています。たとえば、妻が出勤ついでに保育園への見送りをするときも、忙しい時期だけは僕が送って行くとか。夫婦二人三脚で協力している意識が共有できるので、一方が全てを抱え込むよりも、かえって良い関係が築ける気がします。

洗濯に関しても、彼女は洋服のプロなので素人の僕が変に手出しをするほうが、かえって手間を増やしてしまう場合もありますからね(笑)。そういうのはお任せしています。

亜矢子さん:そうした夫の気遣いが感じられるので、掃除や洗い物のツメが甘くても指摘しないようになりました(笑)。それから、休日にサッカーをしたり飲みに行ったりするのも、一切止めたことがないです。

夫の仕事柄、プライベートと仕事の境界線はあいまいですし、リフレッシュも必要ですからね。あと、基本的なことですが、「ありがとう」は必ず伝えるようにしています。夫が主体的に家事や育児を担ってくれるおかげで、いまの生活があると思っているので。

-どうしても二人とも動けない場合のトラブルやピンチにはどう対応していますか?

亜矢子さん:保育園のママ友やお隣の家など、同じように共働きで子育てをしている家庭と協力しあっています。特にお隣さんはもう一つの実家みたいな感じで。娘たちを遊びに行かせることもあれば、逆にうちで預かることもあります。

錠士さん:たとえば保育園のパパ友、ママ友とは積極的に飲み会を開くなどして交流をもつことで、いざというときに助け合えるような関係性を築くことは意識していましたね。

U29女子へのアドバイス「子どもにとっても、仕事で輝いているママのほうがうれしいはず」

DSC_9669_Fotor_800

-では、最後にU29女子にアドバイスをお願いします。

亜矢子さん:金銭面のメリットはもちろんですが、子どもからしてみてもママが輝いてイキイキしているほうがうれしいと思いますし、そうした姿を見せることで娘も夢を追いかける活力になればいいなと思っています。

「思った通りにいかない場合の対処法」や、「どうしたら理解してもらえるか」、「相手のやる気を引き出すにはどうすべきか」など子育てと仕事それぞれから学んで、互いに活かせる部分は多くあるんですよ。
どちらかで行き詰っても、別の顔をもつことで良いリフレッシュになりますしね。

錠士さん:夫婦生活や子育て、仕事…生きることは簡単に思い通りにはいかないものですよね。だけど、それもまた人生の面白さだと思って楽しんだらいいと思うんですよ。

ただ、思い通りにいかないからとすぐ諦めないで、家庭が仕事を支えてうまくいくためには、信念をもって努力と工夫を重ねることが大事だと思います。それをしていると、たとえ思った通りにいかなくても、いろいろな道や可能性が開けてくるものです。

僕らは、結婚当初に思い描いた形とは少し違うけれど、仕事の仕方や家での決めごとなどを工夫してお互いに努力して、結婚から14年経ったいま、楽しく暮らしているので。

 

(佐々木ののか+プレスラボ)