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アドラー心理学に学ぶ!仕事のストレスに負けない8つの習慣とは?【後篇】

アドラー心理学を生活に取り入れてみよう!

職場のイメージ

【前篇】でアドラー心理学の基本がチェックできたら、いよいよ実践です。
【後篇】では、同じく『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)から、8つのポイントをご紹介。
職場の人間関係や仕事での大失敗、果ては「もう疲れた。会社に行きたくない……」。そんな仕事上での心労を解消するコツをお伝えします。

 

 

今の停滞状況を変えてくれる?8つの習慣に挑戦してみよう

「もう疲れちゃった……」と憂鬱になっている人の中には、今の環境と自分の性格とのバランスがとれなくなってしまっている人もいるでしょう。環境を変えられれば良いのですが、なかなかそうもいかない場合には、思い切って性格を変えるのも一つの手として考えられます。

一般的に、性格は変わらないものと思われていますが、アドラー心理学では、性格は思考や感情だけでなく、癖や習慣などの行動の積み重ねによってできていると考えられています。つまり癖や習慣が変わると、それに伴う思考や感情も変わり、性格も変わるのです。

ここでは8つの習慣をご紹介します。一つで良いので習慣づけることに挑戦してみてはいかがでしょうか?あなたの今の心境、そして状況を変える手助けとなるはずです。

 

習慣1:「ありのままの自分」を受け入れる

アドラー心理学では、自分のダメな部分もひっくるめて受け入れる「自己受容」の精神を大事にしています。ダメな部分というのは、必ずしも今の自分だけでなく、過去の自分も含まれます。アドラーは言います。

「いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。われわれは自分の経験によるショック――いわゆるトラウマ――に苦しむのではなく、経験のなかから目的に適うものを見つけ出す。自分の経験によって決定されるのでなく、経験の与える意味によって、自らを決定するのである」(『人生の意味の心理学』)

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

【前篇】で述べた「自己決定性」と同じ考え方なのですが、つまり、ある経験だけでは、成功の原因にも失敗の原因にもなりえない、ということです。

誰もが、「あのとき、ああすればよかった」「なんであんな日々を送ったのだろう」と思うことはあるでしょう。取り消せない失敗をすることだってあったでしょう。
けれども、そのとき感じた痛みをなしにしてしまうことはできません。ただ、それぞれの出来事がもつ意味は変えることができます。
過去の経験を「良い」とか「悪い」で判断しなくていいのです。
過去の経験をこれからの自分にとって「良い」ものにすることが大事なのです。

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

ただ、やはりダメな自分を受け入れがたいと思ってしまう人もいるかもしれません。
そんな人は、「自分の品位」を守ることを意識してみましょう。

自分を尊ぶ心は、尊ぶ自分があってこそ高まるともいえます。
「自分の品位を下げない行動をする」ことは、尊ぶ自分でいるための行動でもあるのです。

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

ポイ捨てをしないなど、簡単なことでも十分に効果があります。ほんの少しの「品位を下げない行動」が自尊心を生み、「ありのままの自分」を受け入れやすくしてくれます。

 

習慣2:自分を知る

確かに自分の弱点は目につきやすいです。一方、それにばかり目を向けていると、強みまで消えてしまいかねません。強みを生かし続けるためには、自分と向き合い、自分を知ることが大切です。

では、自分の強みとはどのように探せばいいのでしょうか?岩井さんは提案します。

今までの自分を振り返り、よく考えてみれば必ずいくつもあります。
他人よりできたこと、他人にはない経験、他人から「すごいね」と言われたこと、振り返ってみればいろいろあるのではないでしょうか。

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

それでも思いつかないという人。もちろん強みがないわけではありません。落ちこんだり疲れたりしているときは、悪い面に目を向けてしまいがちだからです。そういう場合は、弱点を強みに言い換える、という方法をとりましょう。
例えば「すぐに緊張して上がってしまう」であれば「真面目で慎重である」、「計画を立てるのが下手」であれば「思い立ってすぐに行動する力がある」など、どんな弱みでも強みに言い換えられます。欠点だと思っていた性格が実は長所だった!と発想を切り替えること自体が大切なのです。

 

習慣3:失敗や欠点を糧にする

自身は少年時代、病気がちであったにもかかわらず、兄は健康な肉体をもっていたことから、劣等感に悩まされていた経験もあり、アドラーはしばしば、「劣等感のアドラー」という言われ方をします。

「他者と比べて劣っている自分」や「思ったとおりにできない自分」に対してもつマイナスの感情が“劣等感”です。
アドラーはこの劣等感を否定しません。
それどころか「人は目標をもつかぎり、劣等感をもつ」と言っています。
しかし、大事なのは、「その劣等感をどう生かすか」です。

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

習慣1でも述べましたが、これも「自己決定性」による考え方です。劣等感や欠点があることで全てが決まるわけではなく、あくまで自分の人生は自分の選択によって決まるのです。

一方、“失敗”も、劣等感と同じようにその経験を生かせば、必ず自分の糧になるはずです。糧にできるかどうかは、失敗した出来事を「客観的」に振り返ることが鍵となります。

失敗をしてショックを受けても、そこで失敗に蓋をしない。
気持ちを落ち着けてから「客観的に」振り返る。
そして、「糧にするにはどうしたらいいか」を考える。
この行動が失敗を糧に変えてくれるのだと思います。

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

 

習慣4:負の感情とうまく付き合う

アドラー心理学では、負(マイナス)であれ正(プラス)であれ、「感情」を次の3つのように説明しています。
1.感情は「あるきっかけ」があってつくり出され、特定の「相手」に対して、なんらかの「目的」をもって使われる
2.感情はコントロールできる
3.(負の感情も含め)感情は、自分のパートナーである

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

例えば「怒り」という感情の場合、怒っている人は、誰かに何かをさせたいがために怒るという感情を選択している、という考え方になります。自ら選択するということは、選択しないこともできるということで、よって感情のコントロールは可能ということです。

では、どのようにすればコントロールできるのでしょうか。
日常の中で、ついつい負の感情を抱いてしまうとき、この感情の目的は一体なんだろう?と考える。このことが自分自身を冷静にし、負の感情のコントロールに繋がります。

また、職場の人間関係において、ギクシャクしてしまうきっかけとなるのが、「挨拶したのに返事がなかった」などの些細な問題。こういった場合、事実に対して“歪んだ”主観的な捉え方をしていることも多くあります。返事がなかったのなら、挨拶がそもそも聞こえていなかったという可能性があるでしょう。

アドラー心理学では、ものの見方・考え方のうち、思い込みによって誤った判断をしていることを「ベーシック・ミステイクス(基本的な誤り)」と呼びます。「あの人に嫌われているに違いない」とか、「誰も私の気持ちを分かってくれない」とか、そういった考え方をしてしまうことです。

このように、不満や不快な感情を抱くときは、
「【事実】を自分で勝手に曲げてとらえすぎてないか?」
と胸に問いかけてみるのも一案です。

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

ベーシック・ミステイクスはいくつかの種類に分類されますが、いずれも、一度自分自身にこう問い直すことで、誤りに気付くことができます。

 

習慣5:建設的に考える

アドラー心理学では、「良い」「悪い」や「正しい」「間違っている」よりも「建設的」「非建設的」の判断軸を大事にしています。

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

時と場合によっては、正しい、間違っているといった観点では、根本的な問題の解決に繋がらないことがあるからです。

ただし、建設的に考えることの邪魔となるのが、ネガティブな妄想。「もし○○してしまったらどうしよう……」といった不安が膨らんで、建設的な考え方ができなくなってしまう人もいるでしょう。ですが「自己決定性」を鑑みると、

過去の失敗や他人の失敗を無理やり、今の自分の現実につなげて考えているのは自分でしかないのです。
実際、今まで「悲観的な妄想」をしたところで、本当にそのとおりの出来事に遭遇した人はどれだけいるでしょうか。
ここで大切なことは「最悪の事態は、まずない」と開き直ってしまうことです。

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

まずは困難も楽観的に捉えること、そして建設的な方向を目指して、今の自分にできる精一杯のことをやれば、物事は良い方向へと進んで行くはずです。

 

習慣6:大局から見る

「建設的に考える」場合に、大事な視点があります。
それは、「より広く」「より高く」「より大きな」視点から見ることです。
「大局から見る」ということです。

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

相反する主義・主張にとらわれていると、根源的な視点を忘れがちになります。また、例えば職場の人が人間関係であれ仕事上であれ、トラブルを起こした場合に自分だけに見えるその人の側面で全てを決めつけるのではなく、他の環境、他の人間関係ではどうなのか、広い視点を持つことが大切です。

 

習慣7:共感する

対人関係に大切なのは「共感」です。
人間関係がうまくいかないと悩む人の多くは、相手のことを見ていません。
(中略)
職場の人間関係で悩んだら、まずは、
「相手の目で見て、相手の耳で聞き、相手の心で感じる」

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

では、共感力を高めるためにはどうすれば良いのでしょうか。
もととなるのは、【前篇】でも紹介した「認知論」という考え方です。

「人間はそれぞれ自分独自のものの見方・考え方(心のメガネ)を通して現実にふれ、意味づけ、行動している」

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

この認知論を理解すること、つまり、自分と相手とはものの見方・考え方が違うことを理解したうえで、どこが違うのかを考え、相手のものを理解してからで、もう一度「同じ物事」について考えてみる。このことが共感力をつけ、他者と良い関係を築くのには不可欠です。

 

習慣8:勇気をもつ

習慣5では、建設的な考え方をするために、「最悪なことはまずない」と楽観的な考え方をする、ということを紹介しましたが、最悪なことはなかったとしても多少の困難はつきものです。つまり、建設的な考え方をするには、困難を克服しようとする「勇気」が欠かせません。

しかし、勇気をたくさんもっている人もいれば、勇気を失っている状態の人も多くいます。
こういった状態を抜け出させるのが、「勇気づけ」です。

勇気づけとは、相手がより強く「自分を信じること」ができるようになるのを目指しています。
相手を信頼し、相手の中によいものを見つけることができる人が「勇気づけのできる人」です。

『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)より

職場でこの勇気づけを行えば、次第にお互いの間に信頼関係が築かれ、勇気づけが自然と行われる関係になれます。勇気づけの輪が広がれば、職場の雰囲気も変わることでしょう。

 

 

アドラー心理学は「実践してこそ真価を発揮する」心理学だそうです。
時間はかかりますが、8つの習慣をすべて身に付けられれば、自分と徹底的に向き合うこと、他人を受け入れること、そして他者のためにも貢献できることができると岩井さんは言います。

8つ全てはもちろん難しいですが、ここを変えたい、もしくはこれなら取り入れられそう!というものがあれば、ぜひ習慣づけて、ハッピーに働くことを目指しましょう!

参考書籍:『働く人のためのアドラー心理学』

参考書籍:『働く人のためのアドラー心理学』(岩井俊憲/朝日新聞出版)

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