スペシャルインタビュー 女優 市川実日子さん

2012年05月10日

市川実日子さん人と猫の出会いを手伝う「レンタネコ」屋。そんな、不思議だけど魅力的な仕事をしている女性を演じた市川実日子さん。主人公同様、キュートに我が道を進む彼女が、意外な仕事観を話してくれました。

―――主人公のサヨコはマイペースに自分の好きな仕事だけをしている女性ですよね。市川さん自身もそんなタイプに見えるのですが…。
(市川さん)「自分から”これがやりたい!”と思って飛び込むことはないんですよ。とても慎重派で石橋を割れるぐらい叩くタイプなんです。でも、一旦、飛び込んでしまえば一生懸命やるしかない、という感じですね。ただ、そこにいくまでは本当に怖い」

―――女優という仕事を10年以上も続けているのに、いまだに新しい仕事は怖いですか?
(市川さん)「怖いです。でも、怖いで逃げていたら続いていませんから、立ち向かいはしますけど。逃げたいけど逃げずに向かうと、いつも何か発見や知ることがあるし、出会いも、喜びも見つかる。いつも怖くて、緊張して、でも何かを知って続けていく…そんな繰り返しです」

市川実日子さん―――10年間ずっと?
(市川さん)「でも、ここ数年で考え方は変わってきたかな。自分の物差しみたいなものができてきたというか。20代のころは周りの人に何か言われて、わからなかったり、おぼろげに違うと思っても”あぁ、わからないや”で終わっていたけれど、今は自分の思いを前よりも伝えられるようになった。わからなければ質問するし、やりたいことを伝えます。もちろん、私が思っていることが毎回正解ではないですけど、昔はおぼろげだった”こうしたい”という思いが、自分の中でだんだんはっきりしてきた。そうすると相手からも”どうしますか?”って聞かれるんですよね。その度に”私が意見を言っていいのかしら?”なんて思いますけど(笑)」

―――市川さんの仕事選びの基準って何でしょうか?
(市川さん)「勘(即答)。やっぱり勘って働きます(笑)。例えば2人の人が、同じような仕事をやりませんか?と言ってきたとしても、直感的に、この人と仕事をしたほうがいいんじゃないかと思う時があるんですよ。事務所の人に「○○さんから仕事のお話がきたよ」と言われて、○○さんのことをよく知らないのに、ピンときて”これはやったほうが良さそうだ”なんて思うこともありますね。もう、理屈じゃないんです。ただ、事務所の人に相談もしますよ。自分で自分のすべてを客観視することはできないですから、周りの声を聞くことも大切だと思っています。それに、幸いにも同業の姉もいるので話したり。お互い、今、何の仕事をしているかは知らないんですけど、ちょっと困ったときや考えたいときに自分の気持ちを言える人がいるのはありがたいですね」

市川実日子さん―――「レンタネコ」では心に寂しい穴ぼこが空いた人に、ネコを通してその穴を埋めてあげますよね。市川さんが心に穴ぼこが空いたときは、どうやって埋めますか?
(市川さん)「空いたままだと思います。20代は埋めるために何かしたこともありましたけど、今は空いたままでいいんじゃないかなって。穴が埋まっている日もあれば、空いてしまうこともある。人ってそういうものなんじゃないかと思うんですよ。それに、空いている人のほうが私は惹かれますね」

―――サヨコが男選びの格言で「焦りは禁物、顔で選ぶな」と言っていましたが、市川さんは何で選ぶか教えてください!
(市川さん)「その人が発しているものかなぁ。それは男性だけでなく、女性も動物も物もなんですけど、パッと見て惹かれるものを備えていること。男性だったら、そこにかわいらしさと誠実さがあれば無敵ですね(笑)」

●Profile
いちかわみかこ●1978年6月13日生まれ、東京都出身。モデルとして活躍し、2000年『タイムレスメロディ』で映画デビュー。2001年『とらばいゆ』でヨコハマ映画祭最優秀新人賞、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。『めがね』『マザーウォーター』、TVドラマ『すいか』『恋愛ニート』などに出演。

●映画告知
『レンタネコ』

©2012 レンタネコ製作委員会

『レンタネコ』
5月12日(土)より、銀座テアトルシネマ、テアトル新宿ほか全国ロードショー
・あらすじ
幼いころから猫に好かれるサヨコ(市川実日子)は、たくさんの猫たちと暮らしながら、心に寂しい穴ぼこを空けた人たちと猫の出会いを手伝う「レンタネコ」屋を営んでいる。サヨコと猫によって心の隙間を埋めていくいろいろな人たちの姿を優しく描いていくハートフルムービー。第62回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品。

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脚本・監督:荻上直子『かもめ食堂』『めがね』『トイレット』
出演:市川実日子、草村礼子、光石研、山田真歩、田中圭、小林克也
配給:スールキートス

インタビュー・文/中屋麻依子、撮影/八木虎造、デザイン/Studio PAWOZ