産婦人科医・きゅーさんに聞く!
第2回【出産を考えるU29女子が今できること】

2015年08月28日

20代後半になり、周囲に結婚・妊娠・出産を経験する友人も増えるなかで漠然と「私って妊娠できるの?」という不安を抱えている人もいるかも知れません。少し気になる不調はあるものの婦人科には、なかなか行く勇気が出ないことも…。そこで今回は、産婦人科医でありブロガーのきゅーさんに、将来、出産を考えているU29女子の気をつけたいことや婦人科系の体の悩みについてお話を伺いました。第2回は「妊娠に向けて今できること」についてです。

自分のリズムを知る「基礎体温表」

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前回のお話で子宮頸がん検診の重要性は分かりましたが、妊娠・出産を考えるU29女子が今できることや、気をつけておくべきことはあるのでしょうか?

「将来、出産を考えるU29女子は、ぜひ毎日基礎体温を測り、基礎体温表をつけることを習慣づけて欲しいですね。
生理周期を理解するのに一番手っ取り早い方法が基礎体温表です。体温計を買う以外はお金もかからず、体にも負担がなくて、簡単に多くの情報を得ることができます。自分の体のリズムを知るためにも、ぜひつけてみてください。

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基礎体温は、排卵後『プロゲステロン』というホルモンの働きで上昇します。その差は、わずか0.3度前後で、この温度差をキャッチするのが基礎体温表をつける目的です。排卵しているかどうかも、この表を見れば分かります。
ちなみに、不妊治療や生理不順で病院を訪れても、基礎体温表をつけていなければ、それから3ヶ月間、基礎体温表をつけるためだけに治療が先延ばしになってしまいます。あらかじめつけておくだけで診断もスピーディです。」

 

基礎体温を測るコツ3つ

基礎体温の正しい測り方や続けるためのコツはあるのでしょうか?

「基礎体温は何もしていない安静な時の体温。目が覚めた瞬間に、専用の婦人体温計を使って舌下で測りましょう」とのこと。
以下に、基礎体温を測るコツをまとめました。

(1)婦人体温計を使用する
基礎体温表では0.3度という、わずかな違いを測る必要があるので専用の温度計が必要です。最近はスマホアプリに自動転送、検温値を記録してグラフ化してくれるものや、数秒で測れるものなど豊富に揃います。ドラッグストアやネットでも手に入るので、好みで選んでください。

(2)寝る時に枕元に体温計を置き、目が覚めた瞬間に寝たまま測る
寝るときに枕元に体温計を置いておいてください。次の日、目が覚めた瞬間に口にくわえて測りましょう。「トイレに行った後で測ろう」と、少しでも動いてしまうとその日は測れません。

(3)なるべく同じ時間に測る
仕事が不規則で朝起きる時間もまちまちという人や、休みの日は遅くまで寝ていたいという人もいるでしょうが、なるべく同じ時間に測りましょう。

「ちゃんと毎日測らなければ!」と、意気込まなくても大丈夫。1日忘れたり、測れなくても、諦めず続けていくことが大切です。

 

妊娠したいならやめるべき「タバコ」

基礎体温をつけておけば、妊娠の準備はひとまずOK。ですが、他に気をつけておきたい生活習慣などはあるのでしょうか?

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「喫煙をしている人はやめることをおすすめします。喫煙の習慣が1日増えるごとにリスクも増加します。1日数本、ちょっとしか吸っていないからと言って、問題がない訳ではありません。タバコには4000種類以上の化学物質が含まれていて、その内200種類以上は人体に有害であると言われています。中でも有名な化学物質であるニコチンは血管を収縮させる作用を持っています。人間は血管の塊で、血管全てをつなげると地球を3周以上すると言われています。それらの血管が収縮して、血流が低下してしまうのですから、体にとって良い訳はありません。さらに赤ちゃんと母親をつなぐ唯一の臓器である胎盤も、実は血管の塊です。赤ちゃんは胎盤の血管を介して酸素や栄養を受け取るのですが、タバコを吸うことで血管が収縮すると、栄養と酸素が赤ちゃんに十分行き渡らなくなってしまいます。それが原因で、赤ちゃんの脳が酸欠状態になってしまい、様々な悪影響を受けてしまうのです。タバコを吸う妊婦さんと吸わない妊婦さんから産まれた新生児では平均体重が約1割も異なっていたというデータもありますし、妊娠率の低下や初期流産のリスクが上昇する事も良く知られています。さらに妊娠期間中、赤ちゃんの脳が低酸素状態に晒されていたため、産まれた後の成長過程でも脳の発達に影響を与えることも最近分かってきました。

『妊娠してからやめればいいや』と、考える人は多いのですが、それは間違い。妊娠が発覚する以前、赤ちゃんの体が出来上がる妊娠4〜6週くらいの一番大切な時期に喫煙していたら同じことです。妊娠を望むのなら、すぐにでも喫煙はやめることです。またご主人の喫煙で発生する副流煙を吸い込む、いわゆる受動喫煙も同様に妊娠には悪影響ですので、夫婦そろって禁煙することが妊娠には大切です。」

 

積極的に取りたい栄養素

また、食生活も大切とのこと。妊娠を希望する女性が意識して取りたい栄養素について教えてもらいました。

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●「葉酸」…葉物野菜(小松菜など)に多く含まれる。赤ちゃんの発育に必要で、血液をつくることに関わる働きをしている栄養素。不足すると胎児の先天異常や貧血を起こしてしまいます。

● 「鉄」…レバー、ほうれんそう、しじみ、プルーンなどに多く含まれる。赤血球をつくるのに必要な栄養素。不足すると赤血球値が下がって「貧血」になってしまいます。「貧血」のまま妊娠・出産すると、出産時に血液が不足して、最悪の場合、輸血になってしまいます。さらに妊娠中は胎児の体が大きくなる際、大量の鉄分を要するため、妊娠前から十分量の鉄を体内に貯めておくことが大切です。しかしながら鉄分は吸収率が低く、毎日十分な摂取が難しい栄養素の1つなので、サプリメントで補いつつ摂取してもOK。ビタミンCと一緒に摂取すると効果的なのでおすすめです。

「その他、ビタミンやミネラルなどをバランス良く摂ることが大切です。毎日は難しくても、週末だけは積極的に上記の野菜や果物を摂ったり、サプリで補ったりするなど心がけてみてください。」

 

体外受精も年齢には勝てない!?医学的には「妊娠は早いほうがいい」

「現在、日本の女性が初めて出産する年齢の全国平均は30.4歳です。ついに30歳を超え、統計を取り始めて以降、年々上がり続けています。しかし、35歳以上になると妊娠しにくく、流産リスクも高くなるという研究結果も。初産の年齢が高くなっていくにもかかわらず、体の出産リミットのタイミングは変わらないのです。

このように、とても短い妊娠適齢期。最近は、不妊治療のひとつとして『体外受精(精子と卵子をお皿の上で受精させて受精卵を子宮に戻す)』も珍しくはありませんが、体外受精でも35歳以上になると妊娠の可能性は下がります。40歳を超えると体外受精での妊娠の可能性が10%にも満たないのが事実です。意外に思われるかもしれませんが、年齢の枠を超えた不妊治療という訳ではないのです。」

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年齢が上がるにつれて妊娠しづらくなるのは、不妊治療をしても同じという衝撃の事実。妊娠適齢期の短さを認識すると、妊娠のタイミングはなおさら逃したくないもの。子宮頸がん検診と基礎体温表で、自分の体をチェックしておくことが本当に大切なのですね。

前後編を通して、妊娠・出産を考えるU29女子の不安や悩みを産婦人科医のきゅーさんに伺いました。妊娠を希望しているU29女子世代にも、「年に1回婦人科検診を受ける」、「基礎体温をつける」、「栄養たっぷりの食事をとるように心がける」、「喫煙をやめる」など、今からでもできることがたくさんあることが分かりましたね。
「妊娠なんてまだまだ先の事」と、後まわしにせず、できることから始めて自分の体としっかり向き合っていきましょう。

<プロフィール>
きゅーさん@産婦人科医


産婦人科兼研究者。沢山の外来診療をして感じた、「女性は生理の悩みを抱えている人がとても多い。しかし自分の身体について知っている事が少ない」という現実。日頃から正しい知識をもって自分の身体をケアする事が大事だと思い、ブログやメルマガ、アプリなどで分かりやすく解説している。

ブログ「産婦人科医きゅーさんが本当に伝えたい事」:http://ameblo.jp/kyusan0225/

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