25歳で、ハピキラ社長とソニー社員を兼業する「パラレルキャリア女子」正能茉優さん「両方やりたいから、両方楽しくやってます!」

2017年03年13日

憧れのお仕事のリアルに迫る!輝く女子のワークスタイル
Vol.12 (株)ハピキラFACTORY代表取締役 正能 茉優さん

(株)ハピキラFACTORY代表取締役 正能 茉優さん

大学時代に、女子大生2人で「ハピキラFACTORY」を起業し、一躍脚光を浴びた正能茉優さん。卒業後も同社で社長業を続けながら、一般企業に就職するという道を選んだ正能さんに、独特のセンスで展開するハピキラのスタンスと、パラレルキャリアという働き方について、お話をうかがいました。

 

地方商材をかわいくアレンジし「いつの間にかヒーロー」に

ハピキラFACTORYとは、どんな会社ですか?

中身はすっごく魅力的なのに、パッケージがかわいくなくて、もったいないな、という地方の商材を、女の子が好きな「かわいい」を切り口にプロデュースしています。パッケージだけならデザイン会社になっちゃうんですが、ハピキラは「作る」「広める」「売る」までをやっているのが特徴。リニューアルした商材をPRプロモーションして広め、販路まで獲得することで、本当の意味で地方が元気になるためのお手伝いをしています。

(株)ハピキラFACTORY代表取締役 正能 茉優さん

もともと地方創生に興味があったのですか?

いえ、全く興味はありませんでした! 正直、自分が楽しいと思うことをただただやっていたら、地方も元気になっていたという感じなんです(笑)。

起業の大きなきっかけになったのは、大学時代に長野県小布施町の「まちづくりインターン」に参加したこと。そのとき「小布施若者会議」というのを企画したのですが、女性の参加者が全体の23.8%しかいなかったんですね。「どうやったら女性も地方に興味を持つのかな?」と考えた結果、地方の魅力的な商材を、女の子が好きな「かわいい」ものに変身させてみよう、と思いついたんです。

まずは小布施ならではの商品をかわいくしてみようと思い、個人的に好きだった小布施の特産品「栗鹿の子」を、バレンタイン仕様にプロデュースしました。私が描いたハート型をそのままパッケージにして、「かのこっくり」という商品を開発。出版社などに売り込み、雑誌をはじめ各種メディアにPRプロモーションをかけ、パルコ渋谷店にオリジナルショップをつくって、販売しました。

とお話すると、とてもスムーズに聞こえますが、実を言うとこの頃は手探りの状態でした。雑誌の制作時期とか、商品のロット(製品生産時の最小単位)とかも分かってなかったので、日々試行錯誤(笑)。それでも何とか間に合って、結果として1週間で2000個売ることができました。

売り切ったときに思ったのは、自分が好きなものをかわいくしたいという思いだけでやったのに、こんなにみんな喜んでくれて、小布施の町も元気になって、さらにはお金までもらえるなんてすごい仕事だ、ということ。私はこの働き方を「いつの間にかヒーロー」と呼んでいます。そして、こういう形の地方創生をほかの地域でもやったらおもしろいんじゃないか? と思って、事業化したんです。

「1番かわいいと思うハートの形を自分で書いて、デザイン化してもらいました」と正能さんが語る、「かのこっくり」

 

「誇り高き小ささ」が多くの人に幸せを届ける

ハピキラの仕事は、どのように進んで行くのですか?

「かわいくできるか」「自分が楽しいか」「ある程度の規模が見込めるか」をポイントに、プロデュースするものを選んでいます。100年の歴史をもつとか、親子代々受け継がれているなど、商品自体に何か特別なストーリーがあると、やりがいがありますね。それから、ある程度大きな案件と関わりたいとも思っています。やるからには、できるだけたくさんの人に幸せを感じてほしいので。

感覚的に進めているように見えますが、判断基準は、その都度フォーマット化しています。
例えば、2013年からプロデュースを始めた「JAPANおもてなしコレクション」。日本を代表するお菓子を発掘し発信していこうと、都道府県ごとに「地元の人しか知らないおいしいお菓子」を詰めたギフトボックスです。始めた当初は、1軒1軒お店に電話して交渉していたんですね。でも始めてみるとなかなか大変で。

どういう会社で、どういうコンセプトで、という説明をしてから、お店の同意を得て、商品のサンプルを送ってもらって、箱を考えてって進めるのではなく、まず、3種類のお菓子が入るように区切られたボックスを、先に作ることにしちゃったんです。そうすると、「大きさ」「重さ」「材質」などが自ずと決まってくる。それに当てはまる商品しか選ばないことにしたら、スムーズに事が運ぶようになりました。

「JAPANおもてなしコレクション」

「JAPANおもてなしコレクション」は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて開発。ボックスのデザインは、外国人観光客も意識している

ハピキラの仕事に対する情熱は、どこからきているのでしょうか?

よくそう聞かれるんですけど、そんなに情熱があるわけではないんです。私はパンケーキが大好きなんですが、おいしいから食べているだけで、食べるのに情熱なんていらない。パピキラの仕事も、それと同じ感覚なんですね(笑)。

常々考えているのは、自分が生きたい「サイズ感」ってどれぐらいだろう? ということ。世界的に有名な企業の社長とか、日本で一番有名なチェーン店の社長とか、私はそこまで大きくなりたいとは思っていません。だから、経営者として従業員をたくさん雇って、会社の規模をただただ大きくしていこうとも思わない。

でも、小さな会社だからといって、ただのちっぽけな存在にはなりたくない。そんなことを考えていたら、2014年の夏頃、スイスで「Proudly Small(誇り高き小ささ)」をテーマにしたサミットが開催されたんです。

このサミットは、小さな国の大統領と世界的大企業の役員によるものなんですけど、そこで出された結論は、「Small is beautiful, when it is not isolated(小さいことは美しい、ただし孤立していない限りは)」というもの。それを知って、「誇り高き小ささ」を保つためには、どんな崇高な思いがあろうとも、孤立してはいけない。大きな企業や社会とも繋がり、できるだけ多くの人に幸せを届けることが重要だと思ったんです。

今後、ハピキラとしてやっていきたいことは?

最近、日本郵便のふるさと小包の商品をいくつか手掛けることになりました。まずはお菓子をプロデュースしたのですが、今後は果物などの一次産品(加工されていない農林水産業による産物)もプロデュース予定です。実は以前から一次産品をプロデュースしてほしい、という依頼はたくさんあったのですが、どう「かわいく」すればいいのか分からず、断っていたんですね。でも、一次産品は地方を元気にするためには必要不可欠。今回のふるさと小包の件をきっかけに、今後はチャレンジしていきたいと思っています。

 

「パラレルキャリア」という働き方

ハピキラを続けながら、大学卒業後に就職したのはなぜですか?

私たちはミレニアル世代と呼ばれる世代ですが、例えば仕事で120点取れば人生も120点、という考え方の人はあまりいない。“仕事”“家族”“友達”“恋人”それぞれが60~70点ぐらいで、バランスよく頑張って人生全体で120点にしたい……という考え方の人が多いし、私自身もそう思っています。

私、日常の中でちょこっと自由にお金を使うことに躊躇したくないんです。ハンバーガーにはアボカドとかチーズとかをトッピングしたいし、ホテルでの朝ごはん女子会にも行きたい(笑)。

でも、ミレニアル世代的生き方をするべく、どれもそこそこ充実させようとすると、いろいろなことに時間が必要になって、仕事に費やす時間を多く確保するということは難しいですよね。それでも、自由に楽しめるくらいのお金もきちんと得る必要があって。

結局は、「自分の1時間あたりの価値」を最大化することが重要だと思いました。そのためには、ナンバーワンか、ファーストワンか、オンリーワンになるしかないかな、と。ナンバーワンはそんなに努力が得意な方じゃないから難しいし、ファーストワンもこれだけ人類の歴史が長いから難しい。だから、オンリーワンの存在になろうと思いました。

だけど、私たちの世代にとって学生起業家は、あまり珍しくはない。希少性を上げて価値を高めるためには、「〇〇だけど、ハピキラ社長」という文脈に自分を置いてみようと思ったんです。

(株)ハピキラFACTORY代表取締役 正能 茉優さん

現在も、大学時代に一緒に起業した山本峰華さんと2人でハピキラFACTORYを経営。「最近は、女子中高生や女子大生プロデューサーを発掘して、一緒に商品を開発することもあります」と、正能さん

日々、どのようにハピキラとソニーの仕事を両立させていますか?

週5日出勤、フレックス制の正社員なので、平日の日中はだいたいソニーにいます。例えば、今日は、朝8時~9時ぐらいまでカフェでハピキラ、その後、ソニーに勤務。退社後はハピキラの仕事をして、その後はお友達と飲みに行く……という感じです。

「大変そう……」とよく言われますが、全然そんなことないですよ! 夜は、友達と会う時間を設けているし、ネイルも美容院も行くし、睡眠も7時間ぐらいしっかりとっているし……。

ソニーでは、「こんな体験を実現してみたい」という妄想と、社内に眠っている技術をかけ合わせて、新商品開発に取り組んでいます。みんなが魅力に気付いてない技術や研究をベースに「こうしたら売れるのに!」と考えて商品を生み出す、という考え方もするので、ハピキラの仕事とちょっと似ているんじゃないかな、と思っています。

どちらの仕事もとても楽しいので、「頑張って両立させている」という感覚はあまりありません。ホテルのビュッフェで、カレーもパスタも食べたかったときに両方食べちゃう感じに近いので、個人的には「ビュッフェキャリア」と呼んでいます(笑)。

 

「パラレルキャリア」は女性をハッピーにする!

将来は、どのように働いていきたいですか?

私の座右の銘は、「ローコストでハイパーハッピー」。個人的に、努力をするのがあんまり得意ではないというのもあるんですけど、女性は家事や子育てなど、仕事以外にやらなきゃいけないことがいろいろありますよね。どんなに制度や環境が整っても。そう考えると、仕事にかけられる時間は、男性よりも圧倒的に少ない。

そんな女性が短い時間の中で一定の成果を出すには、自分が得意なことや好きなことをやったほうがいいと思うんです。苦手なことや嫌いなことに時間を費やしても、コストがかかるばかりで、いい結果を出すのにも時間がかかります。

そういった意味で、私のような「パラレルキャリア」という働き方は、男性よりも女性に向いていると思います。

いまだに男性が一家の大黒柱として家計を支えるという家族構造は一般的なので、男性は仕事に対してリスクを避けざるをえない傾向がありますよね。そして女性は、ライフステージに応じて、働き方を変えざるをえない。でも、これを前向きに捉えると、女性はリスクを恐れず、いろいろなことにチャレンジしやすいってことではないでしょうか。

入れ替え可能な人生のパーツをたくさん持っていることは、安心感もあります。例えば、出産して子育てをするにはかなりの時間が必要ですが、仕事が複数あれば、全てを辞める必要はない。どちらかの仕事は残した状態で、社会と繋がったまま、母親業をすることもできる。そんな風な考え方で、パラレルキャリアという働き方をしていれば、一見大変そうにも思えますが、実はローコストでハッピーでいられるんじゃないかな、と思います。

 

(株)ハピキラFACTORY代表取締役 正能 茉優さん

正能 茉優
1991年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学中の2012年、地方の商材をかわいくプロデュースし発信する(株)ハピキラFACTORYを起業。大学卒業後は広告代理店に就職。現在は、ソニーで新規事業・新商品を開発しながら、自社の経営も行う「パラレルキャリア女子」。その働き方の経験を活かし、経済産業省「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会」の委員も務める。
自社の活動としては、2017年3月より、日本郵便とコラボした商品群が全国約2万4000局の郵便局で発売開始。北海道天塩町「政策アドバイザー」も務める。

(インタビュー/高山和佳 構成/風来堂 撮影/清水信吾)